↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/247

31話  貴族の世界は面倒くさい ~成功の駄賃~



 あれから数日経ち、今日は闇の月、後節三十日。


 新年が明日に迫ったその日は、街のあちらこちらで雪が降っているにもかかわらず、祝いの品が売られている。


 雪の中でも露店の周りだけは賑やかで、焼き菓子や香木の匂いが混ざっていた。


 ノックスたちも、今日は大忙しだ。

 どうやら、作戦はうまくいったらしい。


 先日、追加注文のためにフレデリカの使いが再び来たらしく、朝早くから商会の倉庫へ出かけて行った。

 商品を卸した翌日、講義中のフレデリカはご満悦の様子だったし、あちらも順調なようだった。


 わたしたちはというと、役所へ向かう途中でチラチラと店先を覗いては、祝いの雰囲気を、お父さんとエステラの三人で味わっていた。


「街はこんな感じなんだね」

「そっか、初めてよね」

「よしっ! 欲しいのがあったら買ってやるぞ?」


 お父さんが、興奮気味なわたしにプレゼントをしてくれるという。


 ……何にしよう?


 飾りを付けた露天商の品を、あっちこっち覗いて、ふと店先に並んだキラリと光る石に目を奪われる。


 その淡い紫色の光が、記憶の中の少女を思い出させた。


「なかなか良い目してるね。お嬢ちゃん」

「これ、なんですか?」

「これはな、元リックナー領で取れた鉱石を削った物だ」

「希少なんですか?」

「価値は正直、未知数だ。魔素が濃くてな、鉱石が変異しちまったんだよ。危険な物じゃない」

「未知数なのに、この値段?」


 ……銀貨三枚。それなりの値段だけど。


「使い道が無くてね。装飾ぐらいにしか使えねぇんだ」


 装飾に使うなら、もっと綺麗な発色の物を使うはず。

 だから他の石よりも安値なのだろう。


「お父さん、これがいい」

「わたしはこれかなぁ」


 エステラも、ちゃっかりおねだりしている。


「可愛い娘に免じて、もうちょい安くならないか?」


 ……娘の前で値切るとは。


 商人は指を四本立てて、笑顔で応じた。


「いいぜ、毎度ありっ」


 手に取って光に当てると、キラキラと淡い紫色に光る石。

 なかなか綺麗だ。

 エステラも、淡い赤色が特徴的な石を選んで手に取った。


「お父さん、ありがとう」

「父さん、ありがとう」

「おう」


 役所前に到着すると、お父さんと別れ講義室に向かう。

 役所も新年を前に忙しいのか、受付には普段よりも人が多く、どこの部署も役人が走り回っていた。


 本日の講義も終了して、わたしは気になっていた石をゴソゴソと鞄から取り出して、所長に見せた。


「所長、この石って何かわかりますか?」


 わたしは露天で買ってもらった石を見せる。


「変異しているな。これはどうした?」


 石を光にかざしている所長に、わたしは露天で聞いた内容をそのまま伝える。


「エステラも、買ったのか?」

「はい。これです」


 所長は、二つの石を見比べて考え込むと、やや間があって「私に一日預けてみないか?」と、提案してきた。


 わたしたちはお互いの顔を見合わせて、首を傾げた。

 大丈夫だとは思うが「壊さないで下さいね」と、念を押して所長に石を預けた。


「君じゃあるまいし……」


 ……そこで嫌そうな顔しないで下さい。



 翌日、光の月、前節一日。

 新しい年が始まった。


 毎年のことなのでわかってはいたが、正月なんてものは前世のみの風習で、こちらの世界では特に大きなお祭りはない。


 新年よりも、春を迎える祭りの方が豪華だったりする。


 今日も頑張って講義を終えると、所長が預かっていた石を取り出した。


「これを、できるだけ肌身放さず持っていなさい」


 渡されたのは、一回り小さくなった石を金の装飾が施された金属の縁で覆い、ペンダントのような形に様変わりした物だった。


「おわぁ~」

「へぇ~、綺麗」


 角度を変える度に宝石のように輝く石に、わたしたちは感嘆して見惚れた。


「いいんですか? これ」

「こら、ルル、言葉!」

「かまわん。分析した駄賃のようなものだ」

「「ありがとうございます」」


 二人で、互いの首に首飾りをかける。

 気になる言葉を聞いた気がするが、気にしたら負けな気がする。

 今は深く考えてもしょうがないので、素直に喜んでおこう。


 所長も、新年を迎えて新たな気持ちで頑張れと、応援しているに違いない。


 いや、違いないと思いたい!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。