60話 間違い探し ~本当の鳥籠の中で~
胸の奥に、ぽっかりと大きな穴が空いたみたいだった。
アゼレアの背中が、兵に囲まれて遠ざかっていった光景が、瞼の裏に焼き付いている。
目を開けても閉じても、その姿が消えてくれない。
「……」
声にならない声が喉の奥にひっかかり、息が苦しくなる。
寝台の上で膝を抱え、しわくちゃになったシーツをぎゅっと掴んだ。
冷たい布の感触だけが、現実を引き戻してくる。
……どうして、あんなふうになっちゃったの。
涙はもう出尽くしたはずなのに、頬はまだ濡れていた。
泣き疲れて頭が重い。
けれど心の奥だけが落ち着かず、ざわざわと騒ぎ続けている。
アゼレアのことを思い返す。
皆が恐れる鮮血の令嬢――気に入らない役人や貴族を容赦なく裁く、冷酷で残忍な女。
そう呼ばれていたけれど、本当は違った。
実験に巻き込まれそうになった子供たちを密かに逃がし、犠牲になりかけた孤児たちすらも助けようとしていた。
誰にも理解されないまま、ただ一人で戦っていた……。
枕に顔を埋めると、喉がひりついた。
頭の奥で、「法は曲げられん」という所長の冷たい声が響く。
でも、わたしの心はそれを拒んでいた。
……違う。アゼレアは、罪を重ねた人なんかじゃない。
わたしはこの目で見た。
あの人は、誰よりも人を守ろうとしていた。
わたしを、メネズの怒気や視線から守ったときもそうだった。
きっと地下倉の使用人たちも、本人たちの意思とは別に、アゼレアに守られていたんだと今ならそう思う。
目の奥が熱くなり、肩が震える。
わたしは自分の胸を拳で軽く叩いた。
……納得できない。絶対に。
アゼレアがやってきたことに間違いはない。
そのやり方は、人から憎まれるものだったかもしれない。
でも……。
――「見極めよ」
所長が言ったんですからね。
わたし、ちゃんと見たんですよ。
だから……アゼレアは死ぬ必要なんて、ないっ!
◇ ◆ ◇
夕食の時間。
今日は食堂の席に座ってはいたけれど、何を食べたのか、正直ほとんど覚えていない。
口に入れたパンは味がしなかったし、スープの温かさもただ喉を通り過ぎていっただけだった。
周りの人たちは、何もなかったように食事を続けていた。でも、ときどき向けられる視線が、全部わたしの胸に突き刺さる。
きっと、泣きはらした目のままだからだろう。
視線を感じるたびに、わたしは俯いてパンを小さくちぎった。
ここの人々はどう思っているのだろう。
やはり、アゼレアの処刑は当然と、考えているのだろうか。
本当は救いたいと、言葉には出さずとも、願っていたりはするのだろうか。
もし、そうではなかったとしても、わたしは到底納得できない。
食事を終え部屋に戻ると、ロウソクの光が頼りなく揺れていた。
寝台に腰を下ろして膝を抱えると、再び胸の奥がざわめく。
……このまま何も言わなければ、アゼレアは……。
間違いなく、処刑だ。
誰かに伝えたい。何かしなくちゃいけない。
でも――誰に? どうやって?
所長に言っても、きっと「法は曲げられん」と返される。
あの冷めきった声が頭の奥に響いてくる。
それを思い出すだけで、背筋がぞくりとした。
けれど、わたしの胸の奥には、別の所長の姿も残っている。
――いつも役所の机に書類を積み上げ、筆を走らせる普段の所長。
――たまに、難しい言葉を選びながらも、わたしの質問に答えてくれる所長。
――そして、ほんの一瞬だけ見せる、静かな笑み。
あの人は、ただ冷たいだけの人じゃない。
……あの一瞬だけ見せた、悲しい顔。
頬を両手で押さえた。
あの姿を知っているのに、良い考えが浮かばない。
所長だって、きっとわかっているはずなのに。
……どうしたらいいんだろう。
心の中で問いを繰り返しながら、ロウソクの炎をじっと見つめていた。
炎の揺らめきを見つめていると、浮かんでくるのは所長の姿だった。
……そうだ! 所長に相談すればいいんじゃない。
はっと顔を上げた。
まだこの邸にいるはず。なら、念話を使えば届くかもしれない。
両手を胸の前で重ね、お腹に力を入れ、意識を集中する。
(所長……聞こえますか? ルルーナです。少しだけ、お話を)
けれど、返ってくるのは沈黙だけだった。
どれほど呼びかけても、耳の奥はしんとしたまま。
……どうして繋がらないの?
不安が胸を締めつける。
耳の奥が、自分の鼓動でいっぱいになる。
諦めきれず、もう一度呼びかけた。
(所長……!)
それでも、やっぱり返事はなかった。
膝の上で手を握りしめる。
念話をできる状況じゃないのかもしれない。
だったら、余計に迷惑をかけるべきじゃない。
わたしにできることは……。
今だからこそ、アゼレアの真意を確かめないと。
所長が認めてくれた、この唯一無二の目で。
……見極める。
彼女の本音。
わたしはまだ、アゼレアの心の声を、本当の彼女を知らない。
残った迷いを押し殺し、わたしは立ち上がった。
◇ ◆ ◇
ロウソクを吹き消すと、部屋の中は闇に沈む。
トクン、トクンと心音が余計に大きく聞こえる。
ゆっくりと扉を開けると、廊下は夜の静けさに包まれていた。
窓から差し込む月の光が床石を冷たく照らし、影が長く伸びている。
わたしは足音を殺すように歩を進めた。
……あの部屋にアゼレアが。
角を曲がると、奥に客室の扉が見えた。
前には二人の見張りが立っている。
槍を手に、無言で門番のように扉を守っていた。
思わず足を止める。
胸がどきりと跳ね、息を呑む。
いざ目の前にすると、緊張で膝が震えてくる。
……どうしよう。このままじゃ、声だって届かない。
胸の奥で小さく呟くと、一筋の風が髪に触れた。
驚いて視線を向けると、窓から忍び込んだ月明かりに合わせるように、淡い光がちらちらと舞っている。
「……妖精さん?」
呟くように問いかけると、光はこくりと頷いたように揺れた。
わたしは周囲に人の気配がないことを確認すると、思いついた内容を声に出さず尋ねた。
……音って消せる? わたしとアゼレアが話しても、外に聞こえないようにできる?
しばらく沈黙があったけれど、次の瞬間、ふっと頬を撫でる風が吹いた。
まるで、「任せて」と言ってくれているみたいに。
……ありがと!
気配がして振り返れば、わたしの後をつけてきたのか、ぞろぞろと精霊たちが列をなしていた。
邸の中ではあまり見なかったのに、どうしたことだろう。
……嫌な気配が無くなったから?
精霊たちが一斉に手を振り上げたり、飛び跳ねたりしている。
それを見たわたしの気持ちが、少しだけ軽くなった。
わたしは勇気をもらうと、拳を握りしめ見張りの前へと歩み出た。
二人の兵士が扉の前に直立していた。
槍を握りしめ、無表情のままこちらを見下ろしてくる。
ドクンッ!
心臓の鼓動が跳ねあがり、喉が乾いて声が出なくなりそうだ。
それでも足を止めずに頭を下げた。
「お願いします。どうしても、アゼレア様にお伝えしたいことがあるんです」
兵士の一人が顔をしかめた。
「引き返しなさい」
再度、頭を下げて食い下がる。
「どうかお願いします」
気づけば声が大きくなっていた。
「お願いです。少しだけでいいんです……わたし、どうしても伝えなくちゃいけないんです!」
短い沈黙。
兵たちは互いに目を合わせ、困ったように息をついた。
「アゼレア殿には腕輪があるし、大丈夫じゃないか?」
兵士の一人が扉を見ながらそう言った。
「はぁ……少しだけだぞ」
そう言って、渋々、片方が扉を開けた。
わずかに部屋の温かい空気が、足元を流れる。
わたしは胸を押さえて深く頭を下げ、アゼレアのいる部屋へ足を踏み入れた。
◇ ◆ ◇
部屋の中は簡素で、けれど決して粗末ではない客室。
椅子に腰かけたアゼレアが、ふわりと髪を揺らしこちらを向いた。
琥珀色の瞳が一瞬だけ大きく見開かれ――やがて、かすかな笑みが浮かぶ。
「あなた……どうしてここに?」
その問いかけに、わたしの胸はまた、ぎゅうっと熱くなった。
「お別れは済んだはずよ?」
アゼレアの淡々と放つ言葉に、数時間しか離れていないのに懐かしさすら感じる。
今ならわかる。
ほんのちょっぴりと緩んだ声色が。
「ですが……わたし、まだ聞きたいことがあるんです」
琥珀色の瞳が細まり、冷たく光った。
「なにかしら」
まずは、アゼレアの考えを確かめる。
……ちゃんと聞かせて、あなたが何を考えていたのか。
ずっと引っかかっていた疑問がある。
わたしにはまだわからない。
アゼレアの行動と、その裏にあった気持ちが。
アゼレアが人々を助けていたのなら、言葉と行動が矛盾する箇所。
「どうして、あの時……お姉ちゃんを吹き飛ばしたんですか?」
思い出すのも苦しい。
奴隷売買の現場、助けに飛び出そうとしたエステラが宙を舞って壁に叩きつけられた。わたしは叫びそうになったあの瞬間が、頭から離れない。
アゼレアは少しだけ目を伏せ、すぐに抑揚のない声で答えた。
「そう……あなたの姉だったのね。不用意に飛び込めば、全員がその場で殺されていたわ。だから排除した」
「……!」
乾いた声。けれど、そこに嘘はなかった。
「誤解しないで」
わたしの震えを見透かすように、アゼレアは続けた。
「命を奪うつもりはなかったし、あの子、足運びが戦士だったわ。まぁ、あの程度で死ぬなら、それまでの人間だけど」
冷たいはずなのに、わたしにはそれが真実に聞こえた。
「じゃあ、なぜあの場にアゼレア様がいたんですか? あそこは、ただの奴隷売買の現場だったはずです」
問いを重ねると、アゼレアがわずかに眉を寄せる。
「サンドレアムの間諜……諜報員に接触するためよ。奴隷商人たちの裏を探り、動きを伝える必要があった。ついでに、農業改革の話を通すための口実も、必要だった」
「農業……改革?」
どうも役所がバタバタしていたのは、組合制度関係の他にも、色々と同時に進行していたからのようだ。
「千歯扱き。農家の負担を減らすための新しい道具よ。それを導入する話をメネズにちらつかせたの。収入を増やす無視できない話題を投げれば、私はただの残酷な令嬢ではなく、交渉の駒になる。そう思わせられるから。でも、あなたたちの乱入で、全て無駄になったわ」
……それって、わたしが所長に話した……もう、作ってあったの!?
言葉が出ない。
ひっそりと千歯扱きが開発されていたこともそうだが、そんな狙いがあったなんて。だが、その計画をわたしたちの登場が台無しにしてしまった。
「……ダズマのことは?」
なんとか言葉を絞り出す。
「連絡が途絶えていたから、直接確かめに行ったの。トバルから出るための都合の良い言い訳よ。農業改革の口実も含めれば、メネズも疑わないでしょう?」
邸から離れるだけでも、これだけの理由が必要なのだとわかると、どれほど過酷な状況だったのか、わたしには想像すら出来ない。
「結局、ダズマ以外は捕まっていたようだけれど」
アゼレアは当時を振り返ったのか、呆れたように言った。
……だからこそ、アゼレアの行動には理由があるはずよね。
「なぜ、わたしを選んだのですか?」
自然と疑問を口にした。
ここまでの話で、そこにも何かあるのではと思ったからだ。
あの奴隷売買の現場で、三人の子供がいたのに、アゼレアはわたしを指名した。
……ねぇ、どうして、わたしだったの?
アゼレアはしばらく黙ったまま、じっとわたしを見つめていた。
その琥珀の瞳に映る自分が、逃げられなくて息苦しい。
やがて、アゼレアはゆっくりと口を開いた。
「生き残れると判断したから」
「……えっ?」
「もし、トバルに連れて行ったとき、私のおもちゃなら……他の子よりも生存率は高い」
その理屈なら、アイナでもよかったはずだ。
「それ以上の理由が必要かしら?」
本当にそれだけだろうか。
アゼレアの声の奥に、わずかな揺らぎがあったような気がした。
わたしの胸の奥に、新しい問いが芽生えていた。
「じゃあ、アイナに渡したあの金貨は――」
わたしの声に力が入る。
「本当はただの黒曜石だったんですよね? どうして、あんなことを?」
頭に浮かぶのは、あの場面。
絶望の中で、アイナが必死に立ち向かおうとした時――アゼレアは微笑みながら、金貨に見える黒曜石をアイナの足元に放った。
あの時の言葉も忘れられない。
――「勇気があるのね、嫌いじゃないわ」
「あれを黒曜石って見抜いていたのね……」
……マズイ。黒曜石は、わたしが知るはずがない情報だった。
「地面に触れた時、金貨の音じゃありませんでした。それと、一瞬ですが黒い石に見えました……その後、似た石を地下倉で見つけたので」
「そう……耳がいいのね。幻惑は違うと認知したら解けてしまう……まぁ、いいわ」
……幻惑? ふぅ、でもこれはセーフかな。
アゼレアは一瞬だけ目を伏せた。
そして、かすかに肩をすくめるようにして答えた。
「あの子には勇気があった。だから、賭けた」
「賭けた?」
「あなたの姉は、吹き飛ばされた時、私の予想に反して抗った。ただの平民が……信じられなかった」
……お姉ちゃんが、抗った?
「胸元が一瞬、光ったように見えたわ……おそらく、何か身に着けていたんだと思う。それなら、一緒にいれば、あの子もダズマの魔道具に抗えると考えたのよ」
……胸元? もしかして、所長の首飾り……なのかな。
「もし、記憶を正確に憶えていれば、役所へ駆け込むと判断したわ。石は幻惑で金貨に見せただけ。石の意図を見抜ける者がいれば、廃坑の子供たちは助かる可能性が高い。それと、あの場にいたダズマを欺くためでもあった。駄賃を与えただけの戯れに見せれば、気づかれないから」
わたしは息を呑んだ。
すべて考えた上での行動だったことに。
あの短時間でどこまで先を見ていたのか、アゼレアの聡明さに言葉が出ない。
彼女の名を聞いて、あの時、所長が焦った理由。
領主派にとっての要警戒対象。
今ならそれが、痛いほどよくわかる。
「……でもね」
アゼレアの声が少しだけ柔らかくなった。
「青い髪の娘が勇気を見せたからこそ、賭けてみたくなった。連れて行くのはあなたか、どちらにしようか正直……迷ったわ」
目の奥が熱くなる。
アイナがあの時、必死に立ち上がった意味が、今ようやく繋がった気がした。
……やっぱり、残酷に見えても本心は違う。
だったら、あの時も意味はあるはず。
整理して、線で繋げて、体系を成す。
わたしが今やっているのは、在庫整理と一緒だ。
アゼレアの行動を整理して、隠れた意図を見つけて線で結べば、彼女の本音に辿りつくはずだ。
「じゃぁ、農地の奥での……廃屋で処分って言ってましたよね。あれって、どういう意味だったんですか?」
わたしは、今でもあの瞬間を憶えている。
冷たい響きで告げられた「処分」という言葉。
それ聞いた途端、全身が凍りついたのを。
……人を殺すことだと思ったから。
アゼレアはゆっくりと瞳を細めた。
「証拠を消すための処分……」
少しの沈黙。
あの行動に理由があって欲しいと、わたしは祈る。
「だけど――救える者は逃した」
続く言葉に安堵した。
静かな声なのに、その奥に確かな意志を感じたから。
「見逃せる命は必ず隠した。冷酷に見せかけながら、裏で人を逃す。それが、あの処分の本当の意味」
アゼレアは、揺れるロウソクの炎を見ながら続ける。
「黒衣の男たちを見たでしょう? あれは、メネズに職から遠ざけられた、父の元部下の生き残りよ。廃坑での生活に耐えられそうもない者は、あそこで選別して保護した。ただ、廃坑にも連れて行かなければ怪しまれる。比較的健康な者は、廃坑に行ってもらったのよ」
全てを救えないのは……わかっている。
わたしだって理解している。
でも、アゼレアは子供たちを救う努力をしていた。
「もう分かるでしょう? 私がただ鮮血の令嬢を演じてきた理由が」
琥珀色の瞳が、真っ直ぐわたしに向けられた。
「敵味方から恐れられていれば、誰も裏を探ろうとはしない。だから、その隙に零れ落ちそうな命を拾い上げた」
「そんな……」
声が震えた。
政敵に囲まれた中で、信じられる相手はロエナと地下倉庫の使用人たち。そして、少数の追放された生き残りたちのみ。
メネズの支配。本当の鳥籠の中にいたのは、わたしではなく彼女自身。
それでも、アゼレアはひとり戦っていた。
……家族に秘密を抱えてるわたしと一緒。ううん……もっと辛くて酷い。
命のやり取りがある以上、わたしなんかよりもずっと厳しい状況。
だからこそ、聞きたいと思った……。
「……最後に、もうひとつ」
心の奥に残っていた棘を、わたしはようやく口にする。
「この邸で、わたしに課題を出したのはどうしてなんですか?」
言葉にした瞬間、またあの帳簿の山が目に浮かんだ。
積み上がる紙、数字の齟齬、眠れない夜。
あの課題はただの嫌がらせだったのか。
それとも……。
アゼレアは椅子の背に軽く体を預け、わずかに首を傾ける。
「……嫌だった?」
嫌だったに決まってる。
けど、そうじゃない。
「わたし、ずっと考えてました。どうしてそんなことをって……」
「理由は簡単よ」
アゼレアは冷ややかに言い放ったけれど、わたしには前ほど冷たく響かなかった。
「簡単?」
わたしは小首を傾げた。
「馬車の中でのことを憶えてる? あなたは東門で叫ばず様子を見た。誘拐同然だったのに、泣きもせず、微笑んだわ。そして、ただひたすら観察していた。面白いわよね、こんなにも小さいのに」
――「本当に面白い子ね。ますます気に入ったわ」
……あれだけは、本心だったってことね。
「だから、見抜けるかを試したの」
「見抜く……?」
「帳簿の矛盾や倉庫に潜む不審な流れ……あなたが、どこまで真実に迫れるか。それを確かめたかった」
わたしは思い返した。
眠れぬ夜に必死で数字を追った時間。
精霊たちに助けられながら、矛盾を一つずつ掘り出した日々。
無駄じゃなかったんだと。
「あなたが気づかなければ、それまでの話。けれど、もし辿り着けるなら、あなたには見る目がある」
アゼレアは薄く微笑んだ。
「だから課題を課した。それが全て」
視界が滲んだ。
突き放していたわけじゃない。そこには確かな理由があったんだと。
線は、はっきり繋がった。
アゼレアの言動、行動、意味のないものは一つとしてなかった。
鮮血の仮面を被り、敵も味方も欺き続けて孤独に戦ってきた令嬢。
冷徹に振る舞いながら、実際は人々を救っていた人が、どうして命を散らさなくちゃいけないのか。
……そんなの間違ってる。
そんなの認めちゃいけない。
「納得なんて、できるわけがないっ!」
アゼレアは間違っていない。
これが間違いなわけがない。
……法は曲げられない? そんなの、曲げてみなきゃわからないっ!
わたしは心の中ではっきりと叫んでいた。
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面白かったら星5つ。つまらなかったら星1つ。正直な気持ちでかまいません。
参考にし、作品に生かそうと思っております。
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