第1話 「 冒険者、はじめました! 」
「 私はね、大きくなったら冒険者になるんだ! 」
それは、私の口癖だった。そして、同時にこれは私の長年
追い続けた夢でもある。そして、それが今日叶うのだ。
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「 リア、大きくなったわね。18歳でしょ? 」
「 うん。そうだよ!身長もお母さんを越しちゃった! 」
お母さんはこの時、一瞬俯いて私に言った。
「 リア、あなたの夢は....冒険者なの? 」
「 もぉー!何回も言ってるでしょ。そうだよ 」
お母さんは近くの引き出しから、とある封筒を取り出す。
そして、それを私に渡した。珍しい沈黙が流れたが、私は
何か良い予感がして勢いよくそれを開ける。
「 .....え?....えっ!?お母さん! 」
語彙力を消失した私にはただ無我夢中で喜びを露にする。
封筒には記載がなかったが、開けると真っ先に目に入った。
「 ギルドより、冒険者勧誘のお知らせ 」。長年待ちわびた
冒険者のスタートラインがようやく見えたのだ。
「 ...実はリアが16歳の時にこれを貰って、18歳以上からだった
から、隠してたの。ごめんなさいね 」
「 そんなこと気にしてないよ!私を女手1つで育ててくれた
お母さんには寧ろ感謝しかないって! 」
お母さんは涙を流す。我ながら、第1話の内容ではない。
私は十分に支度をして、国一番の大きさを誇るギルド。
『 ユリウス・ギルド 』に向かう。
「 ねぇリア。....気を付けてね 」
「 ....うん、じゃあ....。行ってきます! 」
私は扉を勢いよく開けて駆け出す。追い風が気持ちいい。
そんなことを思いながら、私は心の中で呟いた。
ーー私、リア・ブライト。18歳。
ずっと夢見てきた冒険者になるため、今、走ってるんだ。
....なんて、カッコつけてみたけど。いやー、
作者目線で考えると、そろそろ何か起きそうな気がするよね。
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....何も起きずに平和に来れちゃった。いや、良いんだけど
私からすれば全然良いんだけど.....、ネタ的にマズくない?
まぁいいか、ということで....
「 着いた...!ユリウス・ギルド 」
まさか私がこんな場所に来れるなんて、本当に嬉しい。
あれもこれも、お母さんのお陰だよね。感謝永遠に....。
でも、やっぱり大きいよね。国内最大規模は伊達じゃない。
まずは冒険者登録を済ませないと。風の噂で聞いたけど、
体力試験があるらしい。少し鍛えて来れば良かった。
そんなこと考えながら歩いてたら、いつの間にか着いてた。
いやー、緊張する。ここにいる他の人たちも仲間であり、
ライバルでもあるって考えると凄い....。なんか...こう...。
とにかく凄い!
「 えっと、リア・ブライト様でよろしいでしょうか? 」
「 あっ、はい!私がリア・ブライトです! 」
部屋中に響き渡る私の声で、周囲の人たちの視線が集まる。
流石に少しは恥ずかしい。
「 ...ゴホン。では、ここから先を個人情報保護の為に別室で 」
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ぁあー、疲れた。絶対に要らないでしょって事まで聞かれた
書類あるあるなのかな。それにしても、間髪入れずに次は
冒険者カードまで発行しないといけないのか。....面倒。
「 ん?アンタも新米か? 」
「 ....ナンパ? 」
私はただ呑気に道を歩いてただけなのに、いきなりナンパ。
いやー、モテる女は辛いわね....。
「 ごめんなさい、私好きな人がいるの 」
「 いや誰がナンパじゃ 」
「 じゃあどうしたの? 」
「 ただ単に次の会場聞きたかっただけだが.... 」
...そういえば次の会場ってどこだっけ....これってマズい?
いや、まだ助かる。私以外にも人がいるはず。その人に聞けば
良いだけだ!流石ッ!私ってやっぱり天才か....。自分が怖いわ。
「 ....丈夫か?おーい。大丈夫か? 」
「 ...ふっふっふ。大丈夫、任せて 」
まずは人探しね。私は昔から人探しは得意だから大丈夫。
沢山いる新米冒険者を探すなんて私からすれば朝飯前よ!
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「 えっと、見つけた?かれこれ1時間くらいは歩いたけど 」
「 ま、まぁまぁ。そう焦るでない...! 」
「 ...それより、ここじゃね? 」
「 え?何言ってるの?ここなわけ.... 」
....何か書いてある。『冒険者登録施設』?...ここじゃん。
私たちがあんなに歩いて探したところがこの子と会った所から
片道3分くらいのところにあったんだけど.....。
「 .....私もう生きていける自信がない... 」
「 いや、そこまで落ち込むことじゃないだろ 」
..ん?いや、この世には『結果良ければ全て良し』という
言葉があったよね。じゃあこの状況も全然良くなるのか。
....流石私!ここまで計算済みでした。
「 よーし少年よ!私に続けー! 」
「 何コイツ怖...。というか、同い年だろ 」
こんばんわ!今日から冒険者になったリア・ブライトです!
いやぁ、今日は散々だったよ....。ナンパには遭うし、人探しで
大失敗するし。それにけ、気が付いたら人よりも先に建物を
見つけちゃった。でもでも!結局は私の天才的な頭脳の前には
全て無意味!!なんだかんだで、ちゃんと辿り着けたし。
じゃあまたね!