リスプとアセンブラでデレを強要される有島さん
艶やかな黒髪のイケメンたちが3人おのおの恥ずかしそうに2mほどの丸太のベンチに座る。
向かいの丸太に座るのは銀髪を美しく結い上げた妙齢の美女3人。
で、それを見守るわたくし有島。
一言も発しないままお互い視線がぶつかっては顔をそむけたりうつむいたり非常に忙しない。
アセンブラの村とLISPの村の真ん中あたり。木々の合間にぽっかりあらわれる湖はどこまでも遠くまで広がっていた。水面を吹き抜ける風がやわらかい波をつくり、日の光を反射して銀色に輝いている。
5分経ったアラームの音
「×」「×」
「×」「×」
「×」「×」
それぞれがつぶやき、男性陣営も女性陣営も被った人たちで悲喜交々の話し合いだったり慰め合いだったり、あるいは殴り合いだったり…を経て
「×」「×」
本家は知らないけど、モノマネ芸人のモノマネをしてLISP!アセンブラ!と心の中で叫びながら厳かに言う。
『ふぁいなるあんさぁ??』
『本日は二組誕生しましたぁ!ふふ
おめでとうございますぅ』
なるべくハイテンションで会を締める。
気も引き締める。
これからが地獄のラブラブタイムだからだ。
◇◇◇
『本日のカップル、アセンブラのディさんとLISPのサンさんです!それではフリートーク!いってみようっ』
往年の名司会を思い出しながらヤケクソでMCをつとめる。ここまではいいんだ。だって自分の言葉だもん。
ディさんとサンさんかぁ、二人合わせてサンデーだな…あの連載どうなったんだろう。
ついつい現実逃避をしてしまう。
目の前にはイケメンと美女。ちらりちらりとこっちを見るので、どうぞどうぞのジェスチャーをする。
ディさんがストレートの長めの前髪をかきあげながらチラリとサンさんをみやる。
「××××××」
「(LISP!)初めて会った気がしないんだ」
胸に組んだ手をぎゅっとしながらサンさんが上目遣いでディさんを見つめている。
「×××××××××」
「(アセンブラ!)ほんとうに?わたしもそう思っていたの」
言い放つと真っ赤になってうつむいてしまう。そのサンさんの頬に手をのばすディさん。
手のひらじゃなくて手の甲側でそっと触れるって!ディさん上級者!!
「××××××」
「(LISP!)そのかわいい顔をもっとよく見せて、愛しい人」
「××」
「(アセンブラ!)やっ、そんな」
「×××××××」
「(LISP!)ほら、こっちを見て、君のキレイな緑色の瞳にボクがうつってる」
あぁ、もう見てられない!
うつむきながらピンクピンクしたセリフを一生懸命聞き取る。
やってられっか!!
わかります??
男性しかいないアセンブラと女性しかいないLISPの婚活ですよ。
そして通訳はわたくし有島。
辛い・・・精神攻撃がすぎる
一日一回の婚活スリーonスリー
参加希望者は殺到しているんですけどね、一日一回で勘弁してください。
直接の会話は婚活のスリーonスリーとプロポーズのとき、もめたときに限定している。キリないからね!わたしはひとりしかいないし。
それ以外どうしてるって?
手紙ですよ。手紙。
平安チックにみやびをなむしけるってなもんですよ。
全部翻訳するのわたしだがな!
朝から晩までLispをアセンブラに、アセンブラをLispに…
やってることもとの世界と変わらんやんけ。忙しいったらありゃしない。
この世界の人類存続のために立ち上がったものの、自己犠牲がすぎるぞ、すばらしい!勇者・有島…わたしエライ。
魔王を倒すわけでも魔法ぶっ放すわけでもなくてだいぶ地味だけど!
プログラム言語でデレを強要される日がくるなんてな。ふっ。
やっと題名にたどりついた!!
そして目標の1万字超えました!!
終わりがおぼろげながら見えてきました。