持続可能な支援活動をしたい有島さんはうつむかない
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いつものように目覚めて、大きくため息をつく。とうとう来てしまった…遅かれ早かれ来ると思っていたが…
「あ“ー仕事したくないでござるよ…」
仕事したくない病発症。
ドスの効いた日本語のつぶやきをまともに食らってしまったスーザンが見るも哀れな恐怖に慄いた顔で座り込んでしまった。
どうやら日本語、というか元の世界の言葉をきくと、こちらの人々は人権が奪われ指示待ちの人形のようになってしまうらしい。
プログラムする側とされる側だから?
「(リスプ…)ご、ごめんね、おはよう、いつもありがとう」
「あ、あ…あ、お、おはようございます。申し訳ありません、びっくりしてしまって…」
スーザンはLisp族の次期族長だが、なんでか毎日家政婦のようなことをしてくれている。神に仕えるのが代々の族長の仕事だからーとかなんとか。
アセンブラの次期族長のゼットくんは職場で秘書のようなことをしている。これまた神に仕えるのが代々の族長の仕事だからーとかなんとか、だそうだ。
こちらの人々にとっては、アリシマサンは神の代理人ですからね。
最初は両方の神殿に通ってましたけどね、テレワークにしたいな、とLispとアセンブラの神殿からサヴァ神と呼ばれるでっかいパソコンを運んできました。
まぁ、この神、人類を呪ってやるーって呪詛を撒き散らしているだけみたいだけど。
それより、アセンブラ族とLisp族の恋愛やら婚活やら訴訟の翻訳、通訳に追われてノイローゼになりそう…
…で、じわじわきてたんだけど、めちゃくちゃ仕事したくないのよ。いま。
いい方法だと思ったんだけどな・・・二つの民の架け橋になるって。なんか間違えてるのかなぁ。
ってスーザンがゼットくんからの報告書読んで幸せそうに笑ってる。
なんかほとんど雑談になってるよね、君たちの業務内容報告書。
「アリシマサン、いつもありがとうございます」
「いえいえ、仕事ですからね」
スーザンはついと視線をそらして寂しそうにいう。
「あの…質問してもいいでしょうか?」
「どうぞどうぞーどうしました?」
「えっと…」
スーザンが顔をあげていうことにゃ。
「ゼットさんはどんな声なんですか?」
え??まさかの?
「え?通訳する時に聞いてるじゃない?」
「え?」
「え?」
よく聞くと音声として認識できないんだそうで…
あのイケボを聞けていないとな!?
逆にゼットくんはスーザンのこのやわらかな空気にとける美声を堪能できてないとな!?
えらいこっちゃ。
◇
支援とかボランティアっていうのは、あれよね、一瞬よくても続かなかったり、自滅するんじゃだめだと思うのよ。
魚を釣ってあげるのは一瞬、魚釣りの方法を教えるのがほんとうの支援ってやつ!
わたしは間違っていた。
「というわけで、君たちにC言語を学んでもらいます」
「「しー?」」
スーザンとゼットくんがそろって口真似するけど、かなしいかな、君たちそれぞれには音声として繋がれていないのだね。
勇者・有島、共通言語を浸透させてこの世界を救ってみせる!
以下彼らの涙なみだの修行の様子を一部紹介します。わけわからんって人は▪️までとばして構いません。まったく物語に支障ないです。
<修行の様子>
「あの、アリシマサン?」
「どうしました?スーザン?」
「こ、これ?う、上から上から順にやるの?」
「いい質問です。Cは上からやるんです!!!」
「えぇぇぇぇ」
「あーすいません!」
「どうしました?ゼットくん」
「レジスタどれっすかね?」
「ふふふ、そうですよね、そうなりますよね、これ、これですよー」
「は、は?え?レジスタ何個使ってんの?どういうこと?」
「ゼットくん、レジスタにわりあてるのは後です。」「あと?」
「後でいいんです。これは仮の入れ物なんですよ」
「先生、こ、怖いです」
「こわくないよー」
地に足がつかない気がするのか怯えるゼットくんを、心配気に見つめるスーザン。
がんばれゼットくん、その恐怖を克服した先にCは微笑むのだ!
▪️
「printf("%s",HELLO); printf("%s¥n",name);」
「「「printf("こんにちは"); printf("¥n");」」」
「cout << "おつかれさまです" << endl;」
「C++の時間ではないですよー」
あははははは
青く煌めく湖のほとり、男女の笑い声がこだまする。
Lisp族もアセンブラ族も老若男女明るい表情でこちらを見ている。
それぞれ近くの人と人種を乗り越え雑談している!!
共通言語Cが浸透したな、とみんなの顔を見渡す。
本日、わたくし有島は、神のミツカイやら神の代理人やら重々しい二つ名を捨て、ウィザードに就任します!
なんだよ、ウィザードに就任って?
もう、異世界ですから。いいでしょ。
悪夢だと思って過ごしてきたけど、どうやらここで生きていかなきゃいけないみたいだし。
秘書のゼットくんがにっこり笑ってうながしてくる。昨日寝ないで考えたからね、就任挨拶!
うつむいてる暇はないのよ、この世界の平和と愛を守るために!
司会のスーザンの美声が響き渡る。
「それでは、ウィザードに就任されましたアリシマサンのありがたいお言葉です」
わたしは大きく息を吸って青空に向かって言い放つ!
「インデントはちゃんとしないとヘビにかまれるよ!!」
終
「連載を完結したい」という夢が叶いました。
題名の勢いだけの稚拙な作品に、ここまでお付き合いいただきありがとうございます!
知識のない分野を精一杯背伸びして書いてみました。その道の人々からするとだいぶ違うところだらけなんだろうな、と自覚はありますので、もし、もしもちょっと笑えたよーなど前向きな感想ございましたらお聞かせください!!