【短編版】おばさん聖女、隣国で継母となる〜偽の聖女と追放された、私の方が本物だと今更気づいて土下座されても遅い。可愛い義理の息子と、イケメン皇帝から溺愛されてるので〜
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「セイコ・犀川! おまえを国外追放とする!」
……はぁ? 国外追放、だと……?
私の名前は犀川 聖子。
2■歳。
ひょんなことから、異世界へと、聖女として召喚された。
んで、異世界召喚から数年後。
聖女として働いていた私に突きつけられたのは、【国外追放】。
「は? 何言ってるんすか……【バカデンス】殿下?」
私に国外追放を言い渡した男……バカデンス殿下に向かって、にらみつけながら言う。
「いったいこの私が何をしたと?」
「本物の聖女である、【ブリコ・聖高原】に、嫌がらせをしていたのだろ!?」
聖高原 ブリコ。
私と一緒に、聖女召喚された女だ。
たしか10代だったと思う。
ぶりっこ……もとい、ブリコはこのバカデンス王子の婚約者でもあった。
つまり……。
「婚約者であり聖女でもある、ブリコを、私がいじめていた。だから、私を追い出すと? バカデンス王子?」
「そのとおりだ! ブリコは貴様と違って、本物の聖女! 祈るだけで結界を張り、怪我人をなおし、病魔を祓う……! 我が国にとって最重要人物だ! その彼女をいじめた罪は重い!」
はぁ。
何言ってんだこの節穴は……?
ブリコがいつ、結界を張った?
怪我人を治した?
病魔を祓った?
……そもそも、いつ私がブリコをいじめたんだ?
あ? ったく……。
「バカデンス王子、現場を実際に見たのかい? ブリコが聖女らしいことしてるとこ。そんで、私がブリコをいじめてるとこ」
「いや、見てない! 全てブリコから聞いた。セイコが自分をいじめるのだと!」
はぁ、でしょうな。
ほんっとバカな男。
「セイコ。貴様は聖女召喚に巻き込まれただけの一般人。聖なる力を持たぬ貴様を、この国に数年置いておいた恩義も忘れて、聖女をいじめた罪は重い! よって国外追放とする!」
……はぁ。
なんだこいつ。
一方的に私を異世界から呼び出しておいて、今度は追放?
ふざけるなよ。
「悪いが拒否権はない。今日中に出て行かねば、貴様を罪人として扱う!」
どうやら、お気に入りの女をいじめたことで、私に対して、そうとうキレてるようだ。
が、まあ……。
キレてるのは、こっちもだ。
勝手に呼び出して置いて? そのうえ『本物の聖女じゃない』からと放置し、最終的に出て行け、だぁ?
「何か言い残すことはあるか?」
「…………」
あ゛ー……キレそう。
だが、このバカにキレたところで、どうにもならないことは、この数年で良~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~く、知っている。
こっちがどんだけ提案しても、その提案全て却下してきた。
この国ヤバいよって言っても、聞く耳持たなかった。
あげく、追放だ。
……もー、知らん!
「わかりましたよ、出て行くわ」
私はきびすを返し、バカデンス王子の前から立ち去ろうとする。
「あ、そうそう、バカデンス殿下」
くるっ、と私は振り返り、王子に言ってやる。
「私を追放するのって、【ユーノ】大臣には相談した?」
「? するわけないだろ。これはこのバカデンスが独断と偏見で決めたことだ」
あーはいはい。
そうですか、そうでしょうね。
ユーノが知ったら、全力で止めてただろうし。
うん。
「あともう一個。あのぶりっこ聖女のおつとめ、全部、私がやっていったって言ったんだけど。私がいなくなったら、おつとめできる人いなくなっちゃうけど、大丈夫かい?」
聖女のおつとめ。
聖女に課せられた仕事のことだ。
結界。
治癒。
そして……浄化。これらを行えるのは、聖女の力を持つものだけ。
「はぁ? 何言ってるのだ、セイコ。おつとめはブリコがやっていたのだろう?」
あー、だめだこりゃ。
うん。
「わかった。んじゃ、忠告したからね。ばーい」
私はバカデンス王子の元を去る。
この国……終わったな……。
☆
このファンタジー世界に、異世界召喚されたのが、3年前のことだ。
地球でOLやっていた私は、突如として、見知らぬ場所へと連れてこられた。
その際、私、犀川聖子と一緒に、若い子が呼び出されていた。
呼び出した魔法使いたちは、聖女が二人居ることに驚いていた。
そこへ、バカデンス王子が堂々とやってきて、私ともう一人、ブリコを見て、うなずいた。
そして、バカデンスはブリコのほうへ歩みより、手を取ってこういった。
「あなたが聖女だな?」
と。
何を持って聖女だと思ったんだろうか。
根拠を言えよ根拠をって思ったんだが……。
「はいっ、あたしが聖女ですわ! 王子様!」
って、ブリコがハッキリと答えやがった。
自分が聖女である根拠を(以下略)。
こうしてバカデンス王子はブリコを連れて出て行った。
残された私は、召喚魔法使いを問い詰めて、事情を把握した。
曰く。
・この世界は瘴気と呼ばれる毒ガスに悩まされてる。
・瘴気は魔物をうみ、人々を傷つける悪しき存在。
・瘴気を浄化できるのは、聖女だけ。
・聖女は瘴気発生が起こると、自動的に選ばれる仕組みになっている。
だが、今年は瘴気が発生したのに、聖女が出てこなかった。
そこで、いにしえの魔法使いが残した【聖女召喚魔法陣】を使い、異世界より聖女を呼び出した、らしい。
聖女がブリコなら、じゃあ私はなに?
【恐らく召喚に巻き込まれたのだと思われます】
【そう、そうか。じゃあ元の世界に帰せよな?】
【そ、それは……】
どうやら、呼び出すことはできるらしいが、元の世界に帰す術はないらしい。
……ぶち切れた私は城から出て行こうとした。
しかし外は魔物がうろついていることもあって、危険だという。
だからこの王都に留まって欲しい、と言われた。
私は仕方なく、この国に留まってやることにしたのだった。
で、3年後。
いろいろやって、私は追い出されたってわけ。
勝手に呼び出しておいて、最後はポイかよ。
けっ。まあ、3年前と違って、今の私には【力】がある。
この3年で身に付けた力があれば、ま、大丈夫でしょう。
まずは働き口を見つけないとなぁ。
★
「で、どうしてこうなった……」
私は現在、馬車に乗って、とある場所へと向かっていた。
私の目の前には、銀髪のキレイな顔をした、お兄ちゃんが座っている。
「どうなされました、【薬の聖女】殿?」
私のことを薬の聖女とかいう兄ちゃんの正体は、【アスベル=フォン=マデューカス】。
私の居たゲータ・ニィガ王国の隣、マデューカス帝国にて、若くして皇帝の座に上り詰めた男。
背は180センチ。
細身、そしてイケメン皇帝。年齢は24だったかな。
先代皇帝、つまりこの人の父親は早くして死んでしまい、現在アスベル様が帝位をついだ。
で、頑張って今皇帝として働いてるらしい。
「ああ、いや、なんでもないですわ、アスベル皇帝陛下」
「聖女様、この若輩の身に敬語など不要でございます。どうか、アスベルとお呼びください」
はいそうですかー、なーんて言えるかっての。
相手は皇帝だもの。
「ところで、アスベルさ……」
「アスベルと、どうか」
ずいっ、と顔を近づけるイケメン。
ほんと顔整ってるな。
アスベルと呼べと、無言の圧をかけてくる。
これは従わないとヤバいな。
「あ、はい。えと……アスベル……さんは、私にどのようなご用で?」
ここまでの経緯を説明しておこう。
国外追放の憂き目にあった私は、さてこれからどうしようかと、自分ちにて荷物をまとめながら考えていた。
そしたら、この皇帝陛下が私の家に来て、【着いてきて欲しい!】って急に言ってきた。
断ろうとしたんだけど、何やら深刻な顔をしてたもので、私は着いていくことに了承した次第だ。
「我が息子の病を、治していただきたいのです」
「息子……」
「はい。私の息子、【アンチ】を、どうか薬の聖女様のお力で、治療していただきたいのです」
話は、こうだ。
アスベル様は数年前に結婚し、子供をひとりもうけた。
しかし前妻はアンチ様を産んだあと、浮気して国外に逃げたらしい。
で、残されたアンチ様は乳母に育ててもらっていた。
が、アンチ様は生まれつきからだが弱かったらしい。
国内の医者が治そうとしたけども、全員さじを投げた。
医者がだめなら、もう聖女に頼るしかない。
けれど聖女は現在、ゲータ・ニィガ王国にいる。
「バカデンス王子に、聖女を派遣していただきたいと頼んだのですが、断られてしまい……」
「なるほど、で、私にお鉢が回ってきたわけね」
「はい。薬の聖女様の、お噂はかねがねうかがっております。特に、ヒドラ事件でのあなた様のご活躍は、ここ帝国にも届いております」
ヒドラ事件。
去年、ヒドラって言う、毒のドラゴンが国内に出現したことがあった。
そんとき、毒で瀕死状態の騎士達を、私の作った薬で治療した、という出来事があった。
それがこのイケメン皇帝の耳に届いていたのだろう。
「薬の聖女様。どうか、我が息子を助けてください……大事な、ひとり息子なのです……どうか……」
ここで申し出を断ることは、可能だ。
でもね、できない。
だって、小さな子が病気で苦しんでるんだろ?
ほっとけるかって。
「頭を上げておくれよ、アスベル」
「それじゃあ!」
「ああ。この薬の聖女さんにお任せあれ」
☆
さて、やってきたのは、ゲータ・ニィガ王国の隣、マデューカス帝国。
この国は比較的新しい国だ。
貴族制度をとっていない、完全実力主義な国なんだと。
私は帝都カーターにある、帝城へとやってきた。
で、だ。
私は皇帝の息子の部屋へと訪れた。
「この子が、アンチ様……かい?」
ベッドの上には小さな子が寝かされていた。
父親似の銀髪。体は、ぽっきりおれてしまいそうなほど、細い。
額には脂汗が浮かび、はぁはぁ……と荒い呼吸を繰り返してる。
「ちゃんと食べてるのかい? この子」
「……面目ないです、聖女様。この子は、母に捨てられて以降、心を閉ざしてしまい……私も含めて、誰にも心を開いてくれないのです」
……なんだいそりゃ。
浮気で出て行ったクソ女に、捨てられたって思ってるのかい、この子。
可哀想に……。
あんたが気にすることじゃ、全くないのに……。
うん。
ほっとけないね。
「アンチ様。大丈夫、私が助けてやっから」
私はステータスを開き、アイテムボックスを展開。
「それは……召喚者に与えられし、三種の神器が一つ、アイテムボックス!」
この国に召喚されたものは、天より特別な才能を与えられる。
その一つが、アイテムボックスだ。
そう……召喚者特典ってやつ。
で……。
これは、あのブリコにはないものだ。
つまり、まあ、そういうことなのだ。
が、今はどうでも良い。
「私の作ったポーションを取り出して……っと」
翡翠色の液体が入ってる、ポーション瓶。
私が持つと、ぱぁ……! と輝き出す。
「ポーションが光り出した! 聖女様……これは一体……?」
「私の能力さ」
「能力?」
「ああ。私は【薬の聖女】。能力は、私が作った薬の効果を、超向上させる」
つまり私が作り、飲ませると、通常のポーション以上の薬効を示すことができる。
それは、アンチ様の口に、瓶を持っていく。
「ほれ、飲むんだ」
「………………やぁ」
……アンチ様は嫌がっている。
薬が嫌なのか、生きるのが嫌だからか。
それはわからない。
でも……!
「飲みなさい!」
びくっ、とアンチ様がびっくりして目を丸くする。
「元気になって、父ちゃんを安心させるんだよ!」
この子がどうして薬を拒んだのか、それは私にはわからない。
でも、この子の父親の気持ちはわかる。
わざわざ隣国まで出向いて、お尋ね者である私にすがってきた。
それくらい、この子を大事に思ってるってことだ。
そんなに強く、生きて欲しいと望まれてるんだ。
「あんたは生きなきゃだめなんだ! 飲め!」
「…………」
アンチ様は小さくうなずいて、瓶に口をつける。
ぱぁ……! と彼の体が光り出す。
「アンチ!」
「大丈夫、薬が効いた証拠だよ」
光が収まると……。
「…………体、いたく……ない」
「アンチ!」
アスベル様はアンチ様を抱き上げて、ぎゅっと抱きしめる。
「治ったのだな! 良かった……」
「おとー……さま……ごめん、なしゃい……」
その謝罪の意味については、わからない。
でも……その子の目からは、さっきまであった、生きることへの諦めはなかった。
「いいんだ。アンチ。おまえが元気になったのなら……」
「うん……とーたま、ごめんねぇ……」
ぎゅっ、とアスベル様が息子を強く抱きしめる。
うん、一件落着だね。
「ありが、とぉ~……かーたま」
うんうん……うん?
今、なんつった?
かーたま?
かあ……。
母?
「申し訳ない、聖女殿。この子の母は、あなた様と同様、黒い髪をしていたのです」
へー……じゃあそいつも、日本人だったかもしれないわけか。
「かあたまぁ……」
いや、私母親じゃないんだが……。
するとアスベル皇帝陛下が、私の前で跪く。
「薬の聖女様。お願いがございます。どうか……この子の母親になってほしいのです」
「…………………………は? 母親……って、ええ!? 皇帝の奥さんってことかい!?」
「はい。できれば……」
「いやいやいや。こんなオバさん、いやでしょ!?」
「そんなことはありません。あなたは美しい」
「う、美しいぃ!?」
そんなこと誰からも言われたことなかったよ!
「聖女様。どうか……」
「かーたまぁ……」
……結局、私はこの子の継母となり、皇帝陛下の妻となって、この国をよりよい方向へ導いていくことになるのだが……。
それはまた、別の話。
【★大切なお知らせ】
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