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チェンジしてもいいですか!?

咲良がコンビニで、買い物が終わるのを外で待っている間、体調が悪そうな人を発見して、つい声をかけてしまった。


「大丈夫ですか?」


声をかけた人は、顔立ちが整った綺麗な女の人だった。


「………っ…すみません、だだの貧血なので大丈夫です……」


女の人は、ふらふらと立ち上がった。


女の人は、軽くお辞儀をして歩き出したものの、よろけてしまった。


「あ、あの…よかったら、付き添います」


心配そうに女の人に声をかけた時、


「璃々、お待たせ〜!……どうしたの?」


咲良が買い物を終えて、戻ってきた。


事情を話すと、咲良も一緒に付き添うことに。



「付き合わせちゃって、ごめんなさいね…」


女の人が、申し訳なさそうに言う。


「大丈夫です!あ、荷物持ちますね」


あたしは、女の人が持っていた荷物を受け取る。


コンビニで買い物した帰りなのか、コンビニの袋に沢山の種類の商品が入ってるのがみえた。


「うち、すぐ近くだから」


と、言って歩いていくこと5分、茶色っぽいマンションがみえてきた。


「ここよここ。送ってくれて、ありがとう」


女の人はマンションの前で立ち止まった。


マンションを見上げると、タワマンとはいかないけど、高層ビル近い高さがある。


「あたし達はこれで」


あたしは、荷物を女の人に返す。


「あなた達、後で何かお礼するわね」


「別に、お礼なんていいです……」


あたしと咲良は、戸惑いながら顔を見合わせる。


「それじゃ、あたしの気が済まないの。だから、良かったら、連絡先教えてくれる?」


女の人の押しに負けて、あたしと咲良は、女の人とメールアドレスの交換をした。


名前は西崎渚(にしざきなぎさ)さん。


美人で、とても優しそうな人。



連絡先を交換して、5日を過ぎようとした頃、渚さんからメールが届いた。


この前、渚さんを送っていったマンションに招待された。


少し遠慮したものの、今は渚さんは家族と離れて暮らしているから、遠慮なく遊びに来てという事だったので、学校の帰り道、咲良にメールのことを話してみることに。


「あたしにも、メール届いたよ。そういう事なら、明日は、学校休みだし遊びに行っちゃおうー」


咲良がそう言ったので、


「うん、そうだね」


頷きながら、相槌を打った。





そして、次の日ーーー。


あたしと咲良は、お菓子のお土産を持って渚さんのマンションへ行くと、


「いらっしゃい、上がって上がって!」


明るく渚さんが、出迎えてくれた。


リビングに案内されると、あたし達は手土産を渚さんに渡す。


「これ、あたし達からです。クッキー……」


「ありがとう〜、早速、紅茶でも淹れるわね。座って」


リビングにあるソファーに座ると、渚さんは紅茶を淹れにキッチンへ。


改めて周りを見てみると、シンプルなインテリアが多い。


あまり見るのも失礼かなとは思ったけど、あたしも咲良も好奇心に勝てずにいられなった。



「お待たせ」


何分か経って渚さんが、キッチンから戻ってきた。


マグカップに淹れた紅茶をテーブルの上へ置くと、クッキーを囲んでティータイムすることに。



と、言っても…何を話したらいいのかわからず


「えっと…あれから、体調どうですか?」


とりあえず、渚さんの体調を聞くことにした。


「あなた達のお陰で、もうすっかり良くなったわ。それで、あたしの料理で良かったらご馳走させて」


「そんな…大した事はしてないので」


あたしと咲良は、躊躇してしまう。


「もう、用意はしてあるから遠慮しないで。ね?」


「…………」


いくらお礼と言っても、ご馳走してくれるなんて渚さんって随分律儀な人なんだなーーー。


しばらく考えたあと、あたしと咲良は、渚さんの手料理をご馳走になることにした。


「決まりね!早速、準備するわね」


渚さんは、万遍な笑みでキッチンへ向かった。


「璃々、何か手伝う?」


咲良が、内緒話をするように小声でヒソヒソと言った。


「うん、そうだね……」


あたしは、頷くと咲良と一緒に渚さんの所へ行こうとした時だった。


ギーー、バタン!!


玄関のドアが開いて閉まる音が音がして、あたしと咲良は驚いた顔で閉まっているリビングのドアの方へ視線を向けた。


「今……玄関の方から音がしたよね?」


あたしは、確認するように咲良にも訊いた。


「うん……でも、渚さん…家族とは離れて暮らしてるんだよね?」


「そうみたい…一緒に暮らしてる人がいるなんて聞いてないし……」


あたしと咲良が、呆然と立ち尽くしていると、リビングのドアが開いて誰か入ってきた。


「ただいまーーー」


「ーーーー!!!!」


買い物袋を持って入って来たのは、一番逢いたかった人……水沢睦月先生だった!!


「なっ……なんで、高梨と夏木がいるんだ!?」


先生は驚いた顔で、あたし達を見ているけど、あたしも何が何だか分からず、戸惑ってしまう。


「あはは〜〜、驚いた?」


そこへ、イタズラして成功した子供のように、渚さんが笑いながらあたし達の所へやってきた。


「なんだよ……今日、客が来るって言ってたの高梨達だったのか!?」


先生は、驚きを隠せない。


「そうよ!この間、貧血でうずくまってた時、助けてくれた子がいたって言ったでしょ?それが、この子達なの」


「そうだったのか………」


「あの時は、制服着てたから、睦月が通ってる学校の子達だって、すぐに分かったの。でも、睦月には知らせずに、今日招待したってわけ〜〜〜。でも、予想外に驚いてくれて、ドッキリ成功ね!!」


渚さんは、満足した顔で笑みを浮かべる。


どうして、家にあたし達を招待してくれたのか、ようやくわかった。


あたし達が、先生が通っている学校の生徒だからだったんだ……。


「ねえ、璃々…この2人ってどういう関係なんだろうね?」


ヒソヒソ内緒話するように、咲良が耳元で言う。


「……………」


それは、さっきから気になっていた。先生のこと、名前で呼んでるし……。

まさか、先生の恋人?瑛捺がいるのに…。

でも、瑛捺の猛アタックで先生と付き合えるようになったものだし、先生にしては本当は渚さんみたいな人が好きってことだってあるかも知れない。

渚さんが相手だったら、あたしも敵わないよ……。


そう思ったら、あれこれ考えてしまって、ズキンと急に胸が締め付けられる。


「どうしたの?2人とも」


あたし達の様子が気になったのか、渚さんに声をかけられた。


「えっ…と、2人とも随分、親しげそうだったから、同棲してるのかなと思って」


「咲良っ」


ズバリ、聞いてしまう咲良に、あたしは聞きたくない気持ちが先走っていた。


「ふふふ、そうなの同棲してるの、あたし達」


「ーーーー!!!」



渚さんの言葉を聞いて、胸の鼓動が激しく波打つ。


渚さんは、先生の恋人なんだ……。だったら、どうして瑛捺とも付き合えるの?


先生のことが好きだった自分に、虚しさが込み上げてきた。


そんな時、先生が口を開いた。


「あのなぁ〜、同棲って……高梨も森本も本気にするだろ」


「…………」


どういう事?


あたしも咲良も、呆然と立ち尽くす。


「何よ、その方が面白かったのに〜」


渚さんが、つまらなさそうに唇を尖らせた。


「ごめんな、2人とも。渚は俺の姉貴なんだ。こう見えても、結婚してるんだけど。旦那とケンカして今、家出中で俺の所に転がり込んできてるんだ」


「なぁ…んだ……」


あたしは、ホッと胸を撫で下ろした。


「でも、そろそろ家に帰ってほしいよなーーー」


「イヤよ!あっちから謝ってくるまでは、帰らないから」


渚さんの様子からして、余程のことがあったらしい。


「何が、原因で家出したんですか?」


なんだか気になって、渚さんに聞いてみると、


「ゆで卵の茹で方で、半熟か固茹でかで別れたわけ。あたしは、半熟がいいのにうちの旦那は固茹でって言い張ってケンカになって家出してきたのよ」


不機嫌そうな顔で、渚さんは言った。


「そんなつまらない事で、家出するなんて、義兄さんだって心配してるんじゃないのか?」


先生は、呆れた顔をする。


「心配させとけばいいのよ…もう、この話はお終い!料理もできてるし、そろそろ、テーブルの上へ運ぶわね」


渚さんは、少し不機嫌そうに、キッチンへ戻って行った。


「ごめんな、2人とも。つまらないとこ見せちゃって」


渚さんが離れた後、先生は苦笑いしながら謝った。


「ううん、普段の先生のことが知れて嬉しいかも」


ありのままのことを、先生に伝えた。


「高梨に、そう言ってもらえると助かる。でも、姉貴が家出してうちにいるってことは、学校では誰にも言うなよー」


「えー、どうして?」


咲良が、不満そうに口を開く。


「生徒に、色々聞かれるのも面倒だからなーー」


確かに、それは面倒か…。

でも、一つだけ気になることがある。


「瑛捺は…渚さんと先生が一緒に暮らしてるって知ってるんですか?」


先生が家に呼んでくれないと、ボヤいていたことを思い出して、先生に聞いてみることに。


「森本は、知らない。もし、姉貴と一緒に住んでるなんて言ったら、会ってみたいとか言い出しかねないし、毎日のように家に押しかけてきそうだしな」


「…………」


まあ、確かに…瑛捺ならやりかねない。



「璃々ちゃんと咲良ちゃん、運ぶの手伝ってくれる?」


渚さんが、キッチンから顔を出しながら、あたしと咲良に声をかけた。


「今、行きます」


あたしと咲良が、慌てて渚さんの手伝いにキッチンへ行くと、トレーの上には美味しそうなご馳走が載っていた。


「それとそれ、運んでくれる?」


渚さんに言われて、あたしと咲良は、各自トレーに載せられたお料理を運んだ。


次々と運び終わると、あたし達は渚さんの手料理をご馳走になった。


ハンバーグやグラタン、他にも何品かテーブルの上に並べてあるご馳走に驚きを隠せない。


渚さん独りでこんなに作ったなんて、凄い。

それに、味も本格的で、お店で食べるような感じで、美味しくて箸が止まらなくなりそうだ。


咲良も同じらしく、美味しい!と言いながら、食べていた。


「ふふふ、そんなに喜んでくれると、作りがいがあるわ」


嬉しそうに、渚さんは微笑んだ。


「高梨、あまり煽るなよ〜。姉貴、調子に乗るから」


先生が苦笑いをすると、渚さんが先生の頭を軽く指先で小突いた。


「いてて…なんだよ、本当のことだろ」


先生が小さい子供のように、むくれてるのをみて、学校にいる時と違って私生活の先生が見られて、嬉しくなってしまう。


そして、楽しい時間はあっとゆう間に過ぎ、あたし達は帰る時間になってしまっていた。


「あ、そろそろ帰らないと」


あたしと咲良はバックを持つと帰る準備を始める。


「もう少しゆっくりしていってって言いたいところだけど…睦月、彼女達を送ってあげて」


渚さんの心遣いもあり、先生の車で送ってもらうことになった。


車で送ってもらう途中、咲良が口を開いた。


「先生、あたしは寄る所があるからあそこで、降ろしてね」


「寄る所があるなら、待ってるぞ」


後部座席に座るあたし達に、ルームミラー越しに視線を向ける。


「大丈夫、あとは独りで帰れるから、璃々を家まで送ってあげて」


そう言うと、咲良は先生にわからないように、あたしに向かって小さくガッツポーズをすると車から降りていった。


多分、ガッツポーズは、頑張れって言ってくれてるんだよね。


「ーーーーー」


咲良に感謝しながら、先生と2人っきりになったものの、緊張してしまって言葉が出てこない。


「高梨…最近、森本とは仲良くやってるか?」


ドキドキと鼓動が高鳴る中、先生が口を開いた。


「それが………」


未だに、瑛捺には無視されている状態が続いている。


「その様子だと、あまり良くないみたいだな」


「……………」


「ごめんな、森本によく言っとくから」


先生は、すまなさそうに謝った。


「どうして…先生が謝るの?悪くないのに」


先生が原因だってことくらいわかってる。でも、先生に謝って欲しいわけではない。


「俺が原因で、森本と不仲になったことくらいわかってる」


「やだな…先生のせいじゃないです!!」


とっさに、先生のことを庇ってしまう。


「高梨は、優しいなーー」


「そ、そんなことないです。あたしは、本当に……」


「いいのいいの、高梨に庇ってもらえて嬉しいよ」


先生が嬉しいと思ってくれるだけで、あたしは、顔がほころんでしまっていた。



それから、何週間が過ぎた頃ーーー。


体育の時間、今日はバレボールの授業で、瑛捺と同じチームになった。


「瑛捺、頑張ろうね」


相手チームと試合をする間際に、あたしは瑛捺に声をかけた。


「ーーーーー」


でも、相変わらず瑛捺からは何もいってもらえず、試合開始になってしまった。


「瑛捺、お願い!」


「OKーー!!」


同じチームの子から掛け声をかけられて、瑛捺は相手から打ち返してきたボールを打ち返していく。


「 璃々、次にボールきたらあたしに繋いでくれる?」


珍しく瑛捺から声をかけられて、すぐに相手チームが打ち返してきた。


同じチームの子がパスをしたボールをトスして瑛捺に繋ごうとした瞬間、ズキンと右手の人差し指に激しい痛みが走った。


痛みを堪えながら、ボールを瑛捺に回し、あれよあれよというまに試合終了した。


はぁーーー、やっと終わった……。


相手チームと1点差で、何とか勝ったものの、ミスした分、みんなに申し訳なくて謝ったら、みんなは、「勝ったんだから気にしないで」とは言ってくれたけど、瑛捺は相変わらずそっぽを向いているだけだった。



体育の授業が終わると、右手の人差し指の痛みがさっきより痛みが増してきたので、保健室へ直行することにした。


「失礼しまーす」


保健室には来たけど、保健室の先生はいなかったので、仕方なく湿布を探すことにした。


多分、突き指だろうから、湿布でも貼っとけば治るかな?


湿布を見つけると、丁度いい大きさにハサミで切ろうとしたけど、人差し指が痛くて、なかなか上手に切れない。


「痛っ……」


痛みを堪えながら、苦戦していると、ノックの音がして誰かが入ってきた。


「あれ、保健室の先生いないのか?」


声をかけられて、振り向くと水沢先生が立っていた。


「あ、はい……」


「高梨は、どうした?何処か怪我したのか?」


あたしが持っている湿布に気がついたのか、先生はあたしの方へ近づいてきた。


「体育で突き指しちゃったみたいで……イタっ……」


湿布を切ろうとして、また右手の人差し指にズキっと痛みが走る。


「ハサミ貸して、切ってあげるから」


そう言われて、素直に先生にハサミを渡した。


先生は、湿布を丁度いい大きさに切った後、


「怪我した方の指を出して」


「えっ、大丈夫です!あとは、自分でできるから」


あたしは、切ってもらった湿布を貼ろうとしたけど、先生に見られてるせいか、緊張して、なかなか思うようにいかない。


それに、触ると痛みもある為、もたもたしていると、サッと腕を掴まれた。


「高梨、遠慮するな」


先生に優しく指を触られて、ドキドキと胸の鼓動が高鳴る。


先生に怪我の治療してもらえるなんて、思ってもみなかった。


こんな時に、凄く嬉しいなんて、思ったら不謹慎かな……。




一方、睦月の方はーーー。


高梨が、ケガしたかと思うと、心配でたまらないなんて……森本にだってこんな気持ちにはなったことがない。


「それにしても、高梨は、よくケガするなー。前回は足の捻挫だったし……」


「あたし、おっちょこちょいだから……」


高梨は、苦笑いをしたけど、守ってあげたいと思っている自分に気づく。


「大丈夫か、痛かったら言えよ?」


オレは、湿布を高梨の指に貼ってあげるにも、ドキドキと心臓の音がうるさくなっていた。


オレ、どうしたんだ……。


「あ、そうだ。姉貴が、また遊びに来てって言ってたぞ」


オレは、このドキドキを隠すように、高梨に声をかけた。


「渚さんにそう言ってもらえて嬉しいけど…先生が迷惑じゃなければ、また遊びに行きたい!」


そうやって、俺の事を気にかけてくれる高梨にジワっと胸が熱くなる。


「俺が断ったら、姉貴に怒られるからなーー、ああ見えて、怒ると怖いんだよ」


「ふふふ、先生にも怖いものあるんだ〜」


高梨が笑うのを見て、オレは愛しいと思ってしまっていた。


……………!!!


オレ…高梨のこと、好きになってしまったのか……


でも、俺は森本とつきあっている。

そもそも、森本は俺が教師になる前から付き合っているけど、森本の押しの強さに負けて、付き合うようになったようなもので、森本に特別な感情はない。


でも、高梨は違う……。俺の事を気にかけてくれていて、森本みたいに、強引な所もないし、相手の思いやりがわかる。


そうか…オレは、そんな高梨だから……!?


自分の気持ちに気づいたものの、高梨は生徒であることや森本とのことにも戸惑う自分がいた。










































































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