特撮ヒーロー系ソフトビニール人形の化粧箱に向けた憧憬と追憶
古人曰く、「いつまでも有ると思うな親と金」。
物の値打ちや有り難みという物は、それが当たり前に存在している時にはなかなか気付きにくいようです。
そうして失われてから初めて痛感させられる物なのですね。
きっと皆様方にも、色々と思い当たる節はお有りでしょう。
私も御多分に漏れず、当たり前に存在している時には有り難みを理解出来ず、それが失われた時に真価を理解出来た物が御座います。
それは何を隠そう、特撮ヒーローのソフトビニール人形を梱包している化粧箱なのですね。
ソフトビニールで出来たヒーローや敵キャラクターのフィギュアは、昔から「ウルトラマン」や「仮面ライダー」を始めとする特撮ヒーロー番組の主力商品の一つでした。
今でも玩具専門店や家電量販店の玩具売場へ行けば、背中からCの字型のフックを生やしたヒーローや 怪獣のソフトビニール人形がズラッと陳列販売されている光景を目にする事が出来ますね。
このソフビ人形の販売風景、実は15年程前までは今とは少しだけ装いが異なっていたのですよ。
ウルトラマンシリーズの怪獣や仮面ライダーシリーズの怪人達といった敵キャラクター達のソフビは今も昔も大差ないのですが、ウルトラマンや仮面ライダーといった人間的なシルエットをしたヒーロー達のソフビに関しては、化粧箱に入れられて販売されていたのです。
この化粧箱は正面に大きく設けられた透明フィルム製の窓から中のソフビ人形の姿を確認出来るようになっているのですね。
そして尚且つ箱の上部に丸い穴が空いていて、ぶら下げて陳列販売出来るようになっていたのですよ。
このように子供が店頭で遊んでソフビ人形が傷むのを防ぎつつ、尚且つ陳列販売するのに便利なデザインの施された化粧箱なのですが、子供の頃の私はその真価を理解していなかったのですね。
幼少時の私は、ソフビ人形で遊ぶのにいちいち化粧箱から出すのがまどろっこしく、オマケに厚紙で出来ていて何度も開閉していると傷んでくる化粧箱を何ともやりきれなく感じていたのです。
新1号やシャドームーン、そしてウルトラマングレートやウルトラセブンといったソフビ人形は何体か持っていましたが、いつの間にか化粧箱は紛失してしまいました。
幼少時の私のような子供達の反応を見越したのか、或いはコスト削減という大人の事情もあったのか。
その辺の真意は定かではありませんが、いつの間にやらウルトラマンも仮面ライダーも、ソフビ人形は化粧箱抜きの剥き出し状態で販売されるようになりました。
ところが成人年齢を迎えて久しい今になって考えますと、ソフビ人形の化粧箱が持っていたメリットに改めて気付かされたのですよ。
確かにソフビ人形でガシガシ遊びたい子供にとっては、いちいち開閉させなければ遊べない化粧箱は煩わしい物に感じられたかも知れません。
しかしながら集めて飾って楽しみたいコレクターや年長のファンにとっては、ソフビ人形の化粧箱は非常に有益な代物だったのですね。
何しろ箱のサイズやデザインのフォーマットが統一されているので揃えた時の美しさは素晴らしいですし、店頭陳列販売用の丸い穴を使えば押しピンで壁面に貼って飾る事も出来ますからね。
そしてソフビ人形の化粧箱が持つ利点の最たる物は、サイン会の色紙代わりになるという点なのですよ。
変身前の俳優さんや変身後のスーツアクターさん達のサイン会等でソフビの化粧箱にサインを入れて頂けたなら、並べて飾った時の存在感や感動も一気に跳ね上がりますね。
とはいえ私がソフビの化粧箱の価値を再認識した時には既に遅く、化粧箱入りのソフビ人形は店頭から姿を消しちゃったんですね。
ホビーショップ等で買おうにも、前述の理由から化粧箱入りのソフビは現存数が少ないんですよ。
コレクターの放出品やデッドストックといった美品が入荷するのを待とうにも、いつ入るかは分かりませんからね。
そうしてホビーショップを彷徨っていると、「あの時なら箱付き新品で700円+消費税で幾らでも買えたのに…」とつくづく悔やまれますよ。
もしも過去の自分にメッセージを送れるなら、サイン会でゲストに化粧箱へ署名を入れて貰う用のソフビ人形の購入リストを送りつけたい所ですね。