表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

ギルメンに義兄がいるとか聞いてないが?????

『うーっす』


昨日は久しぶりに外に出て疲れたせいで、結局部屋に入ってそのまま寝込んでしまい、ネトゲをすることができなかった。意図せずして昨日は珍しく一切パソコンを使わない日となったのだ。


『ヒキ兄さん! こんにちは!』


『ヒキニー昨日どしたん? ログインしないなんて珍しいじゃん』


『ヒキニさんこんにちはー。昨日は何かイベント事でもあったの?』


『なんだ死んだんじゃないのか』


『あー』


こんな具合に、おれがネトゲをしないというのはかなり珍しいことなのだ。

ちなみにギルメンはおれ含め合計で8人おり、今日ログインしているのはおれ含めて6人、といったところか。

今日いないのは、『あーる』ちゃんと『芋猿』さんか。


ログインしているのは、『ミンク』さん、『かれー1号』さん、『ララ』さん、『さばきんぐ』さん、『こっぺー』さん、そしておれ、といった具合だな。

『ミンク』は、前にも説明した通り、最近おれと仲良くしてくれている高校生くらいの男の子で、『かれー1号』さんは気さくなギルマス。『ララ』さんは大学生の女性で、『さばきんぐ』さんはやたらとおれに強く当たってくる人だ。『こっぺー』さんはあんま話したことないからよくわからない部分が多い。


『んーまあ友人とおでかけ? 的な?』


そんな彼らに、おれは少し見栄を張ってそう告げる。友人、なんて言っているが、昨日一緒に出かけたのは、実際は(双子の妹)と、(双子の妹)の友人の2人なので、おれの友人というわけではない。

だが、こんなおれにもプライドというものは存在する。前世で長年生きていた記憶と経験というものがあるせいか、おれは他人よりも長く生きているという認識でいるし、転生を経験しているという点で、他の人間よりも特別なものを持っているんじゃないかという感覚も持ち合わせている。


実際には前世と今世のおれの年齢を足したとしても、おれよりも長く生きている人はいるし、転生しようが中身が変わるわけじゃない。そりゃ、性別が変わったり、年齢が変わったりするのはかなり大きい変化をもたらすものだが、周囲の環境や状況の変化が起こったところで、結局自分が行動しなければ何も起こりはしないのだ。だから、実際にはおれの持っているプライドは下らないものでしかないのかもしれない。


『ヒキニー友達いたん?』


『イマジナリーフレンド?』


おれの発言に、ギルマスの『かれー1号』さんとおれに対する当たりが強めな『さばきんぐ』さんが反応する。やっぱり、ギルメンにはおれには友人がいないという認識をされていたようだ。いや、まあ事実なんだけども。実際友人と呼べる程の存在はいないんですけども!


『失礼な! ちゃんと実在してるわ!』


所詮、ネット上での話。オフ会をする予定なんてあるわけないし、元々生物学上の性別を偽っている時点でギルメンを騙しているわけだし、今更多少の嘘をついても問題ないだろう。おれは、おれのプライドの保護のためだけに、しょうもない嘘をつく。こんな性格もまた直した方がいいんだろうなと今ちょっとだけ思ったが、仕方ない。おれが本当に女子中学生ならまだしも、おれには成人男性だった前世がある。その頃のお硬いお硬い頭が、おれの中のプライドを放棄させようとしてくれないのだ。


『どんな友達なんですか?』


しかし、そんなおれに追い討ちをかけるかのように、『ララ』さんが追加の質問(こうげき)を加えてくる。具体的な話をするとなると、自然と()美雨(舞の友人)のことを話すしかなくなるわけだが……。

おれのネット上での性別は男。しかも、成人までしている。そんなおれが、女子中学生の友人の話題を出したらどうなるだろうか? 


………普通に事案である。パパ活してるのかとか、変な風に勘繰りされる可能性を大いにはらんでしまっている。

それに、友人でもない人間を、まるで友人であるかのように他者に紹介するというのは中々やりにくい。故に……。


『あー……ど、どんな? えーと、まあ、や、優しい人たち、かなぁ……』


おれは上手く答えることができなかった。そんなおれの様子を見て、ギルメンは何かを察したようで……。


『優しい人かぁ……いいご友人をお持ちなんですね』


『まあ、ヒキニーだしねぇ』


『ヒキニーさん、安心してください。私達はヒキニーさんのこと、友達だと思ってますから』


『ヒキニーに友達なんているわけないだろ』


まあ、1名(ミンク)はおれに本当に友達がいるのだと信じているようだが……。

それにしても、『さばきんぐ』め……。失礼だぞ、一応おれは成人男性って設定なんだからな? お前確か学生だろ。敬意を払え、敬意を。


『無職に友達は難しいよな』


『所詮ヒキニートはヒキニート以外とつるめない…』


『大丈夫ですよ。ヒキニーさんにも仲間はいます。私は違いますけど』


三者三様、辛辣な言葉をおれに投げかけてくる。泣いた。


『あ、そういえば皆に相談したいことがあって』


『どったの?』


『聞きますよ』


今からヒキニー(おれ)disりtimeにでも入るのかと思いきや、それは『ミンク』の話題によって阻止される。よくやった『ミンク』。流石はおれのmy best friend.これでおれへヘイトが向くことはないだろう。


『実は俺、最近親が再婚したんですけど』


『お〜』


『へー、めでたいじゃん』


おっ、『ミンク』もおれと同じように親が再婚したのか。どうやら似たもの同士が惹かれ合うというのは本当らしい。


『再婚した結果、双子の義妹と過ごすことになったんですけど』


『は? うらやま』


『妹かぁ……いいなぁ……私も妹欲しかった』


双子の妹? は? おまえ…………。










何でそんな美味しい状況になってんだよ!?

裏切り者が………。『ミンク』、お前はおれと同じ仲間だと思ってたのに……。


『ミンク、お前とは絶交だ』


双子の妹? しかも血が繋がっていない!? 何だその美味しい展開は!? どんなラブコメだよ!!



『それで、その義妹のことで相談があるんだけど………』


おれの発言をスルーして、『ミンク』は話を進めていく。

ははーん、さてはお前、可愛い妹ができて勝ち組になったからって、ヒキニートで人生オワコンなおれとの縁を切ろうとでも思ってんだな?

おれとお前は住む世界が違うんだよと、そう言いたいんだな? っしゃやってやらぁ! 今に見てろ! おれには可愛い可愛い舞、っていう名前の妹がいるんだからな! 舞1人で、お前の双子の妹2人分の可愛さ発揮できんだからな? 舐めんな。


『双子の義妹のうち、片方が引き篭っちゃってるんだよね』


おや?


『あらら、いじめとか?』


『まあ、詳細はよく知らないんだけど、男性恐怖症らしくて』


ん? どこかで聞いたことあるような…………。


『昨日たまたま初めて家で顔合わせしたんだけど、やっぱり俺が男だからか、すぐに自室に篭りにいっちゃってて……』


おれも昨日、舞と美雨の2人とお出かけに行って帰ってきた時、確か義兄とエンカウントしたような記憶がある。偶然? いや、それにしては……。


『昨日は双子のもう片方の子が、外に連れ出してくれたみたいで。でも、やっぱり長時間出るのは難しいらしくて』


あんまり、考えたくないんだけど、もしかして『ミンク』って……。


『無理はさせたくないけど、でも、ずっと篭ってばかりじゃ、この先上手くいかないと思うし、何より、俺は家族として、妹と仲良くやっていきたいなって考えてるんです。だから、力を貸してください』


流石に、共通項が多すぎる。

いや、世界は広い。探せばおれと同じような状況のやつが何人か出てくるだろう。だから、早とちりするべきじゃない。でも、言わせて欲しい。



ギルメンに義兄がいるとか聞いてないんだが??????

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ