婚約者の王太子殿下から別れを告げられました。〜ご心配には及びませんわ、私は新たに立太子なさる殿下の弟君と婚約致しますので〜
ちょっと性的な事を書いてますので、ご注意下さい。
私はワームアス王国・メヌノーロ公爵家の令嬢、ウォーターと申します。本日、婚約者たる王太子シクライア殿下のお招きでこの茶会に参りました。ある程度離れた場所に世話役の女官や護衛の騎士達がおります。2人きりではございませんが、会話は聞こえないでしょう。
「君との婚約を無かった事にしたい。」
世間話すらなく、殿下はそう仰いました。
「好きな人が出来たんだ。」
驚きの余り、返事も出来ない私に殿下は続けられました。
「先日、天泣の塔を視察したのは君も知っているだろう。私はそこで………、」
1度言葉を切った殿下は、けれどやはり続きを口にされました。
「……自分の気持ちを誤魔化せない。申し訳無いとは思うが……、別れて欲しい。」
「……本気なのですわね………。」
テーブルの下、膝で組む手に力が入ります。
「ああ、私の、偽り無き本音だ。」
「……この事は私以外にはまだ?」
「ああ。父上には今夜告げるつもりだ。公爵にも、明日の正午までには……、と。」
高位貴族は余程の緊急性が無い限り、思い立てば、等と言う事はありません。必ず事前に申し入れをしております。今日の茶会にしても、私は3日程前にお誘いを頂いておりました。
(事前の奏上はお済み、と言う事ですわね。)
そう言えば、少し前からお父様が難しい顔をしていました……。ある程度はご存知だったのでしょう。
「懸命に私の妻となる為に研鑽していた、いや、研鑽している事は知っている。それを台無しに」
「殿下。」
本来ならば、マナー違反です。自身よりも高い身分の人間が話している最中に口を挟む等……。ですが、これ以上は私も淑女としての仮面を被り続ける事が難しいと思ったのです。ですから穏やかに微笑む事が出来る間にと、私は言葉を綴りました。
「ご心配には及びませんわ、私はーー、」
私は王妃教育を終えておりますから。
王家は私を離さないでしょう。
新たな婚約も直ぐに結び直されますとも。
帰宅した私は自室へ籠もりました。幸い学院は休みの期間に入っております。休みの間に心を整理しなければ…………。
「う、う、う………、殿下、シクライア殿下……、申し訳有りません……。」
私はベッドに頭を伏せて、嘆いておりました。
「何の為に私は……、」
シクライア殿下を支える為に、通常よりも厳しい王妃教育を受けておりました私でしたが、結局、殿下の御心に寄り添う事も出来ませんでした。自身の無力さが情けない………。
「あの様な嘘まで吐かせて……、」
天泣の塔。そこで想い人と出会った。
嘘です。誰が聞いても嘘だと分かります。何故ならばーー、天泣の塔に居るのは……、哀れな、醜悪な容姿が為に、社会では生きていけない女性なのですから。
……天泣断罪。
今より数百年前の国王陛下が作り上げた断罪専用の魔法。それは不貞を犯した女性を裁く事に特化した魔法です。当時の国王は王妃殿下を溺愛されていたそうです。しかし王妃は不貞を犯し、托卵を……。当然、王妃は罰せられましたが、この時の裏切りを許せなかった国王陛下は憎しみを込めて、この魔法を創り上げ、国土を覆う形で発動させたのです。
それから我が国の女性全ては貴賤を問わず、不貞を犯せば即座に裁かれる事になったのです。国が滅びるまで自動的に効果を及ぼす断罪魔法で。
……この天泣魔法の対象となるのは不貞を犯した女性のみ。
余りに不条理過ぎる(と言っても一夫多妻制度を取っている我が国ですから、男性が対象にならないのは当然の事で、不条理と言われたのは別件の理由からです)と当時の臣下から魔法の撤廃を求められたそうですが、国王陛下は拒み続け、やがて死を迎えました。新王陛下以降、歴代陛下は天泣断罪を撤廃、若しくは改竄しようとしましたが、魔法分野では天才と持て囃された先代陛下の魔法をどうする事も出来ず、今日も天泣断罪は存在するのです。
天泣断罪の効果は、生命を奪うものではありません。しかし結果、命を断つ女性も居ます。裁判を行う訳でなく、関係者達で話し合う訳でなく、突然に、無慈悲に奮われる断罪の魔法。当時は沢山の女性が断罪された様です。
その大半の女性は娼婦です。
経緯は人それぞれですが、彼女達は不特定多数の男性と……………、魔法はそれを不貞と判断したのです。その為、我が国では娼婦が消え……、男娼が増えました。何と言いますか、ですわね……。
天泣断罪はその…………………………を判断基準にしておりまして、心理や社会的規範は無視し、パートナーの有無やお相手が複数か否かの事実だけを判断するのです。従って詐欺行為によって、だとか、男性に無理矢理、だとか、そう言った事情を考慮しないのです。只、無常の槌が振り下ろされるのです。
そして天泣断罪の効果なのですが……、醜くなるのです。断罪されれば、最早その容姿は人間ではなく、怪物、化物、悪魔……、この様な呼び名が似合う程に、悍ましい、呪われた姿となるのです。
その醜さは分かっていても、断罪されない人からは見たくない姿であり、湧き上がる生理的嫌悪感に気が狂いそうになる程で、中には身体にまで影響を及ぼしたり、本当に精神を病むケースもあったそうです。
また、天泣断罪が施行されたばかりの頃は、本当に不貞を犯していた自業自得の女性も多く、そうでない女性との区別も付かず、天泣断罪の犠牲者達は酷い扱いを受けたそうです。
国としても何とか犠牲者を救おうとしたのですが、先に挙げた様に魔法をどうにも出来ません。しかし手を拱いている訳には行きません。彼女達が社会に適応出来なくなったのは明らかですし、社会が混乱しているのも明らかです。そのまま放置する訳には行きません。そこで犠牲者を隔離する事になったのです。
当初は断罪を受けた女性を全員を隔離しましたが、やがて自業自得だと分かった方は、王妃殿下と同罪として、然るべき処理をする事になりました。天泣断罪の魔法を生み出してしまった罪そのものとして、見せしめにされた様です。
それから時代は流れ、我が国の女性は好んで不貞を犯す事はなくなりましたが、天泣断罪自体は続いていました。つまり酷い男性の犠牲者は今も生まれているのです。そして彼女達は……、隔離されるのです。
天泣の塔に。
天泣の塔には天泣断罪の犠牲者と管理人しかいません。犠牲者以外の者は管理人だけです。どうしても犠牲者ではない人間は、彼女達の悍ましさに近付けません。それが叶うなら隔離の必要等無かったでしょう。
しかし塔を管理する人間は必要です。彼女達は国からの補助で暮らしていますから、必要な生活用具を手配し、建築物として塔の把握や手入れに務める人間が、隔離外と繋がる人間が必要です。
また、女性だけの住まいとなれば、それも圧倒的な社会的弱者だけの住まいとなれば、危険な事もあるかもしれません。ーー故に管理人は男性がなります。
しかし管理人になりたがる奇特な方はおりません。犠牲者の方々の中には男性に恐怖を覚える方もおりますから、管理人は誠意の証として、子を作れぬ処理を致しますので、余計にです。結局、何らかの失敗をやらかした誰かがその座に着かされる事になるのです……。
そして現在、その管理人がご高齢である為、次代を求めているそうです。そこで視察に殿下が行かれたのです。そして天泣の塔にて運命の出会いをーー、
する訳が有りません。
ですから嘘なのです。殿下は嘘を吐き、婚約を解消しようとされているのです。その理由は……、予想が付きます。殿下の御身体にあるのでしょう。
殿下は……、生まれつき、病弱なのです。
直ぐに具合いを悪くし、食事をしても嘔吐してしまう殿下は、必要な栄養も足りていないのか、お身体付きは不健康に細く、お顔の色も常に悪く、肌も髪もボロボロで、一国の王子としては余りにーー、不敬を恐れずに申し上げますなら、余りに見窄らしい……、そんな容姿なのです。豪華な服飾でもそれは誤魔化せず、それ処か不自然過ぎて、貧相さが浮き彫りになってしまわれています。
……初対面では幽霊の様に思えて、非常に恐ろしかったですわ。
そんな認識から入ったからか、殿下のお人柄を知り、恐怖を失くした後からも、王家に選ばれた公爵家に連なる者としての、婚約者としての、次期王妃としての責任感や義務感、そしてプライドは育ちましたが、殿下自身への愛情が溢れるだなんて事は有りませんでした。
勿論、政略で恋情を以て、等珍しいケースでしょう。しかし信頼と情を結ぶ事は互いの努力で可能なのです。けれども殿下の御身体が王の執務に耐えれるかが不安で、何れ王妃となる身の私には通常の王妃よりも負担が大きくなるだろうと予測され、それが通常よりも厳しい王妃教育に繋がっており、私自身、そちらに掛りきりで、殿下の御心に寄り添う事が出来ませんでした。
殿下は自身を顧みて、王太子の座を降りようとお考えになっている事は存じておりましたが、私はそれを否定する事しかしておりませんでした。殿下と話し合い、御心の声を聞く事を怠ったのです。
結果、殿下にあの様な嘘を……。
此度の件、形としては殿下からの不実な申し出であり、私には非が有りません。従って王家有責となるのでしょう。私がそうさせてしまったのです。
「何と不甲斐ない事……。」
基本的に1度決まった婚約を解消する事は、女性側に不利を及ぼす傾向が有ります。しかし殿下はその様な事にならない様にお考え下さったのです。私に非が無いとハッキリと示して下さるおつもりなのでしょう。
ーー私は王妃教育を終えておりますから。王家は私を離さないでしょう。新たな婚約も直ぐに結び直されますとも。
滞りなく、次に進める様に。
王家の為も有るのでしょうが、私の為でもあります。そして王家は私以外を王妃にする道が無い訳ではありません。しかし私は王妃以外の道が無いのです。もし王家が「私を王妃に出来ない」とご判断されれば、私は毒杯を賜る事になったでしょう。機密を知る身を放逐する訳には行かないのですから。
……………数日後。王宮の一室。関係者が集い、必要なサインを記します。私とシクライア殿下との婚約が、殿下有責で解消された瞬間でした。同時にシクライア殿下は王太子を降り、その座を異母弟ヤンガブラザ殿下へ譲る事になると内定を下されます。そして………、
シクライア殿下は正妃様の御子ですが、ヤンガブラザ殿下は側妃様の御子です。本来ならば正妃様の御子が王位を継ぐものです。しかしシクライア殿下の御身体から継承問題が生じていたのも事実でした。
側妃様が正妃様を、ヤンガブラザ殿下がシクライア殿下を立てておりましたが、それでもシクライア殿下を立太子させるには不十分で、私との婚約はその不足した部分への重しでした。
その重しが無くなるのですから、これは当然の事だったのです。
……高位貴族は感情を表に出しません。大勢を守り、率い、導く立場に在る者は、ついてくる者達を不安にさせる訳にはいかないからです。ですから……、王妃になるものとして、私も公の場で感情を出す事は致しません。悠然と微笑みます。
シクライア殿下、貴方が私を「王妃にするべきだ」と、思って下さった事故の、此度の形なのですから。
私は新たな婚約の話にしっかりと頷きます。想いを込めて。
ーーご心配には及びませんわ、私は新たに立太子なさる殿下の弟君と婚約致しますので。
ワームアス王国の魔法史にて。ヤンガブラザ王の治世に、かの難解レベル∞とも称された天泣断罪を解く、最初の一歩が踏み出されたと、掲載されている。
その歩みを行った者の名は、シクライア。
元王太子であったが、病弱故に廃太子となり、子を作れぬ身体となり、天泣の塔の管理人に収まった者。王族籍はそのままであったが、実質の権威を何1つ持たざる王族であった。
彼は長生き出来ないと思われていたが、天泣の塔のあった地域の風土か、食事かは不明だが、身体にあったらしく、壮健な身体へと変化していったとされている。彼は断罪された女性の為に天泣断罪を解除しようと試めたのも、その感謝の念があったからではないかと言われている。
残念ながら彼の研究は天泣断罪を解除する事は叶わなかったが、天泣の塔内に於いて、断罪された女性達が、自身等の醜悪さを映す事を出来なくする事に成功した。天泣の塔内の限りでは、彼女達は現在の姿ではなく、断罪前の自身の姿を視認する事になる。そして彼女達は現在の姿ではなく、断罪前の互いを視認する事になる。それは幻影でしかなかったが、以前はそれすらも出来なかったのだ。
限られた空間内だけとは言え、以前の姿に戻れたかの様に錯覚は、確かに彼女達に救いと笑顔を齎した。以前の様にお洒落を楽しめる様になったーー化物染みた容姿では何をしても無駄だったーー。皆での食事を和やかに迎えられる様になったーー自身以外の化物の容姿にも生理的嫌悪感を強く感じて一緒に過ごせなかったーー。鏡を恐れる事も無くなったーー天泣の塔には鏡が一切無かったーー。
人数分、それぞれに与えられた部屋に閉じ籠もり、インフラが整った部屋で一生を過ごす。皮肉な贅沢を伴った鬱々とした生活が変わった。そこに問題が何1つとして、起こらなかった訳ではないが、それでも彼女達は確かに救われていた……………。
しかし、その一方で彼女達が救われたのは、その幻影魔法だけではない、と言われている。彼女達にはシクライア殿下その人が救いになっていたのではないかと。その理由としては、シクライア殿下の婚姻歴にある。
彼は立場上、複数の妻を娶る事が出来るのだが(血を残す事は出来ないが、婚姻自体は禁じられておらず、王家に損害を齎さない限りは【そもそも旨味がある婚姻なぞ出来る訳もない】相手も自由)、彼は天泣の塔に住まう複数人を相手に婚姻を結んでいたのだ(一気に複数、と言う訳ではなかったが)。
勿論、中にはパートナーへの貞淑を誓う者も居たが、断罪されたが為にパートナーと別れた者も多く、再婚自体は可能であった(但し天泣断罪は性行為を主体に、事情を考慮しないので離婚→再婚でも断罪される。しかし1度断罪されれば、一生効力が続くので、2度以上断罪される事が無い)。
彼女達が残した手記によると、小道具は必要であったそうだが、手順は最後まで踏めていた様だ。確かに喪失した自信を取り戻す、手っ取り早い切っ掛けにはなっただろう。
しかし、疑惑が有る。
幻影魔法は天泣の塔に住む、断罪された者にしか効果がない。シクライア殿下は天泣の塔の管理人室に住んでいるが、断罪されてはいない。では彼はどうやって生理的嫌悪を乗り越えたのか。残念ながら、そこまでは分かっていない。
彼の死後、発見された彼の膨大な手記は、彼が創作したと思われる謎の言葉で綴られており、誰にも解読出来ていない為である。
以下、シクライア殿下の手記の一部より記された文字の幾つかをそのまま抜粋。
〈 今日から日記を日本語で書く事にした。誰に見られた処で読まれないなら、安心して色々本音も書けるからな。処でこう言う日記にはまず自己紹介からがセオリーか? 日記に話し掛ける様に書くのが良かったんだっけ? まあ、良く知らんが誰にも分かって貰えない悩みを話してぶつけられるって考えたら中々良いかもしれんな。よし、そうしよう。
俺はシクライア・ナンタラカンタラナンタラカンタラナンタラカンタラナンタラカンタラ(長いので略)・ワームアス。この国の王子として生まれた、元・日本人の転生者だ。
俺がハッキリと前世の記憶を知覚したのは、しっかりと意識を把握したのはまだ乳母から乳を吸っていた頃だ。つまり赤ん坊だ。
俺が自分を認識した時点から一瞬遅れで、俺は全部リバースした。
何故かって? 仕方なかったんだ。だって………、俺に乳を吸わせていた乳母は………、ミミズの塊だったんだからっ!!!
何を言ってるか分からないって? いや、だから想像してみ? 最早数え切れないだろう、夥しい数のミミズがウニョウニョ動いて、人間の形に集まってんだよ。それが服着て歩いているんだよ。そんなのに乳を呑まされてんだぜ? ……つまり乳首の形したミミズを口に含まされて、ミミズから出る体液(?)を飲んでるんだぜ? 吐くだろ!!〉
〈 昨日は疲れてしまって中途半端に終わった。続きから書いて行こう。
俺は異世界転生を経験したと気付いた時には、この世界の女の異様さが身に染みていた。この世界の男はカラフルな髪や目をしているだけで、普通の人類の姿なのに、女はミミズの塊だった。貴族も王族もどーでもいい。それよりも…………、コレ人種超えて、生物種が違いませんかねぇ!? どうやって子供作ってんの!? 俺の親父とか言う王様、アンタ隣の塊ミミズ(王妃)と何をしたの!? いや、ナニに決まってるだろうがって? こんな異種姦ネタはゴメンだぜ!!〉
〈 今日、俺の婚約が決まった。1週間後に会う。〉
〈 俺の婚約者は幼いながら美しいらしい。…………分かんねぇよ!!! ドレスで隠れてる全身塊ミミズでウニョウニョヌルヌルノロノロ蠢いてるんだぜ!? 期待なんか最初からしてねーけど、コレ、顔の造形どうやって判別すんのよっ!! 老若さえも分かんねーよ!! 着ているドレスが、着ている制服が、とかでしか母親と乳母の差も分からねーんだぞ、俺は!!!〉
〈 熱出した。〉
〈 熱が漸く下がった。俺は病弱だ。何故かって? 飯を食わねーからだよ。食ってもリバースすっからだよ。仕方ねーだろ? ここは王宮で俺は王族、俺は王子だぜ? 身の周りを世話する人間が居て、その殆どが女なんだぜ? 顔ミミズがあっちにもこっちにもウロウロしてんのが、何時だって目に入る。そんでそいつ等が持ってきた飯を食わなきゃならねーんだ………。分かるだろ? これでも精一杯口にはしてんだよ。でも十分じゃないだよ、分かってる。だから俺は栄養失調に近くて、免疫弱くて、体力もない。そりゃ病気がちになるわ。〉
〈 立太子した。式の為に飾り付けられたけど、全然似合わねぇ。痩せすぎだし、髪艶も肌艶も良くねーし……、見るからにボロボロだ。王子には見えねーな。そう言えば最近分かってきたんだ、ミミズの色艶。アレが美しさの基準らしい。うっぷ、式後、祝辞をくれた可愛らしい声を台無しするミミズ塊婚約者verを間エスコートして、クッキーを一緒に食べたりしたのを思い出してしまった………。〉
〈 天泣断罪の話を聞いた。塔内に住む醜悪な女性って……、ミミズ塊以上の醜さって有るのか? そう思って聞いたら、「挿絵はあるが、今日持ってきていない」と教師が顔色を悪くして言った。男だから分かったけど、女だったら分からなかっただろうな。
あ、絵はその内持って来てくれると言った。その絵は絵師が国の罪を描くと気絶やリバースを繰り返しながら描き上げたらしい。王族が知るべき罪として、教材の1つとする為に。必ず絵は見なければならないから、今日は心の準備をする為の授業だったそうだ。〉
〈 天泣断罪の絵を見た! 救いだっ!!! 神は俺を見捨てて居なかった!!! 断罪された女性は塊ミミズなんかじゃなく、ふっっつーに人間の女性だーっ!!!! 塊ミミズが美しくて、この絵の彼女が悍ましい化物!? お前等の目が変なんじゃねーのっ!!?〉
〈俺が病弱だから、ヤンガブラザを王に据えた方が良いって意見がまた出たらしい。まあ、当然だよな。つーか俺、よく立太子出来たな。ウォーターとの婚約のお陰なんだろうけど。……つーか、このまま行けばウォーターと結婚して子作り………、絶対に無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!! だから病弱理由に白い結婚……、って思ってたけど、ヤンガブラザを王様にするんなら婚約を解消出来るんじゃ?〉
〈 マジかよっ!! 天泣の塔の管理人交代!!! 使えるぞ、使えるぞ、使えるぞ、使えるぞ!!!! 何としてでも視察団に同行せねば!!!〉
〈 来て良かった………。ここは天国だ。元々此処へは成人してから来る予定になってたんだっけ。それを早めて貰えてホントに良かった!! 泣きたくなる程に嬉しい!!〉
〈 祝!! 婚約解消!!〉
〈 管理人をしていて分かった。視察だったから、以前は数人とは顔を合わせる事が出来た。が、彼女達の普段は1人部屋に籠もる生活らしい。
毎日必要なものを書いたメモ(無ければ「なし」と書くらしい)をドアの隙間から廊下に出し、それを管理人が回収して、必要なものをドアの前に配布していく。ノックで配布した事を示し、管理人が配り終わる時間を考慮して、ドアをあけて品を受け取る様だ。
部屋内は水回りも完全配備だから、本当に外出する必要が無い訳だ。そしてメモが出てこなければ、何事かが起きていると判断して、初めて管理人は部屋へ入ると。
……彼女達と顔を合わせたいが、無理強いは良くない。何とかしなければ………。〉
〈 よっしゃ!! これで塔内ならば、彼女達は出て来る事が出来る筈だっ!!!〉
〈 健康体になったからイケメン度が上がったらしいな、俺。可愛い女の子達が俺に………♡ 一夫多妻制の国なんだよな〜、ワームアス。ハーレム、ハーレム!!!〉
〈 今日、魔法史ナンタラカンタラ(長いので略)が来た。天泣断罪を何とか出来ないだろうかと考えてるらしい。神妙な顔を作って、綺麗事を言っといたけど……。いや、そんな事されたら困るんだよ、俺は。全員ミミズに戻られて溜まるかよっ!! 俺の為の彼女達の笑顔の為に幻影魔法を頑張ったんだっつーの!!!〉
尚、天泣断罪を完全解除出来たのは、シクライアの没後からーー年経過している。
お読み頂きありがとうございます。大感謝です!
前作への評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。
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名称由来
ワームアス王国
英語。ミミズ。earthworm→アースワーム→ワームアース→ワームアス
シクライア
英語。病気(sick)+嘘(liar)→シック・ライアー→シック・ライア→シクライア
メヌノーロ公爵
ヌメヌメ、ニョロニョロ、ミミズの動作で使われそうなの→ヌメヌメニョロニョロ→ヌメニョロ→メヌノロ→メヌノーロ
ウォーター
英語。水。ミミズの色艶は水分が重要なのでは?
と。
ヤンガブラザ
英語。弟(younger brother)→ヤンガーブラザー→ヤンガブラザ




