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43 side エラ


 牢屋に捕らえられたエミリーの下を訪れる人物が二人。


 案内する保安官が門番に話すと、門番は牢屋へと続くドアを開けて言った。



「今は落ち着いていますが、暴れるかもしれないのでお気をつけください」 


「クリスはここで待っていて」



 付いてこようとするクリスに、待っているように言うと、クリスは不満を隠さずに言った。



「何かされたら悲鳴を上げろ。そうすればすぐに駆け付けるから」

 


 牢屋の中に捕らえられたエミリーが、どうやって私を襲うのか。襲われたとしても、ひ弱な令嬢に負けない腕の自信がある。


 私の身の安全を心配するクリスを安心させるために、クリスの剣だこがある手を取る。



「分かったわ。助けて欲しい時は、クリスの名前を呼ぶわね」



 黙り込むクリスの手を離して、牢屋へと続くドアの内側に足を踏み入れた。



 いくつかの牢屋を通り過ぎて、ある牢屋の前で足を止める。鉄格子越しに牢屋の中を覗く。


 犯罪者を捕らえる牢屋とはいえ、貴族専用の牢屋なだけあって、牢屋と言うより一つの小さな部屋と表現した方がいい作りになっている。



 牢屋の中のベッドに腰掛ける人物は、私が来たのに気付いていないのか、あるいは無視しているのか、こちらを見ようともしない。


 法廷で暴れる姿を見たのが最後だけれど、その時に比べると、暗く陰鬱な空気を漂わせているのを除くと、落ち着いて見える。


 ピクリとも動かない人物に、痺れを切らして口を開く。



「こんにちは。はじめましてと言った方がいいかしら?」



 こちらに視線を向けたエミリーは、いきなりの訪問者に目を見開いた。



「あなたは……」



 驚くその姿は、私が来たことに気付いていなかったらしい。



「マリベルの友人のエラよ。こうやって挨拶するのは、はじめてですね」



 学園でマリベルとよく一緒にいたから、エミリーとはよく顔を合わせいた。


 けれど、挨拶を交わす関係ではなかったから、こんな風に挨拶や自己紹介をきちんとするのは、はじめてのことだ。


 不安げにこちらを見る姿に、庇護欲を抱く男性は少なくないはずだ。


 エミリーの陰湿で暴力的な所を何度も見ているから騙されないけれど、エミリーをはじめて見た人なら、エミリーが犯罪者だとは信じれないだろう。



「どうしてあなたがここに……」


「何も知らない可哀想なあなたに、真実をお話ししようと思って来ました」


「真実……?」



 私の言っていることが理解出来ないのか、エミリーは不思議そうに首を傾げた。


 私はそんなエミリーを冷笑を浮かべて軽蔑の眼差しで見る。



 真実を話す。

 それは親切心ではなく、私のたった一人の友人であり親友、大切な人であるマリベルを傷付けた人物に絶望を与えたい。ただそれだけだ。


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