表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/43

41


 告げられた判決に、傍聴席から悲鳴が上がる。

 エミリー様の父の隣に座る、エミリー様の母が泣き崩れている。     


 判決にエミリー様の父は憔悴しきった顔をして、妻の肩を支えていた。


 エミリー様の母が泣き崩れるのも無理はない。



 シュルツ女子修道院。

 首都から遠く離れた地にある、どの国にも属さない、朝から夜まで厳しい規律で制限された修道院。その修道院に送られた者は、入ることは出来ても、罪人は死ぬまで出ることも出来ない。



 エミリー様が修道院送り?


 厳罰を望んだけれど、これ程の重い罪になるとは思っていなかった私は、驚いてミラ様を見ると、ミラ様は法廷の重い雰囲気には不釣り合いな笑顔で頷いた。


 ミラ様は全部知っていたんだわ。


 この時、私はミラ様の「私に全て任せてください」という言葉を思い出していた。

 


「被告は世俗との関わりを断ち、シュルツ女子修道院から出ることなく、神に仕え、祈り、自分の犯した罪と向き合いなさいーー」



 裁判長が判決を読み終えると、法廷は静まり返った。


 その静けさを破る声が法廷に響き渡る。



「………さないわ……あなたのせいよ!!!」



 エミリー様は立ち上がって、髪を荒げ、血走った目で私を見ている。


 視線がエミリー様に集中する中、前に柵がなかったら殴りかかって来そうな勢いで声を荒げた。



「あなたなんてあの時、死んでしまったらよかったのよ!!!そうすれば、私はこんなにも苦しい思いをしなかった。ステファンも私の隣にいてくれるのに!!!!あなたはいつも私の邪魔をする………!!」



 弁護士の制止を無視して、私への暴言を繰り返した。



「あなたのせいよ!あなたが罪を償うべきよ!!」


「エミリー!!もうやめてっ!!!」



 エミリー様の母の悲鳴に似た声が法廷に響き渡る。


 母の声が聞こえていないのか、私への暴言を止めようとしない。


 そんなエミリー様を私は冷たい目で見る。


 

 こんな時でも私のせいにするのね……。

 私に何の罪を償えというのか。

 私の罪といえば、エミリー・ジェイキンを今まで野放しにしていたことだ。



 母の言葉でさえ届かない怒り狂う姿は、エミリー様に下された判決が正しいと証明しているようだ。



 エミリー様は保安官達によって、暴れる身体を取り押さえられ、強制的に法廷から連れ出されて行った。



 これで本当に終わったんだわーー。



 エミリー様の逃亡によって中断された裁判は、ようやく終わりを告げた。



 階段から突き落とされて始まった裁判は、エミリー様の自分の首を絞める行為によって幕を下ろした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ