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告げられた判決に、傍聴席から悲鳴が上がる。
エミリー様の父の隣に座る、エミリー様の母が泣き崩れている。
判決にエミリー様の父は憔悴しきった顔をして、妻の肩を支えていた。
エミリー様の母が泣き崩れるのも無理はない。
シュルツ女子修道院。
首都から遠く離れた地にある、どの国にも属さない、朝から夜まで厳しい規律で制限された修道院。その修道院に送られた者は、入ることは出来ても、罪人は死ぬまで出ることも出来ない。
エミリー様が修道院送り?
厳罰を望んだけれど、これ程の重い罪になるとは思っていなかった私は、驚いてミラ様を見ると、ミラ様は法廷の重い雰囲気には不釣り合いな笑顔で頷いた。
ミラ様は全部知っていたんだわ。
この時、私はミラ様の「私に全て任せてください」という言葉を思い出していた。
「被告は世俗との関わりを断ち、シュルツ女子修道院から出ることなく、神に仕え、祈り、自分の犯した罪と向き合いなさいーー」
裁判長が判決を読み終えると、法廷は静まり返った。
その静けさを破る声が法廷に響き渡る。
「………さないわ……あなたのせいよ!!!」
エミリー様は立ち上がって、髪を荒げ、血走った目で私を見ている。
視線がエミリー様に集中する中、前に柵がなかったら殴りかかって来そうな勢いで声を荒げた。
「あなたなんてあの時、死んでしまったらよかったのよ!!!そうすれば、私はこんなにも苦しい思いをしなかった。ステファンも私の隣にいてくれるのに!!!!あなたはいつも私の邪魔をする………!!」
弁護士の制止を無視して、私への暴言を繰り返した。
「あなたのせいよ!あなたが罪を償うべきよ!!」
「エミリー!!もうやめてっ!!!」
エミリー様の母の悲鳴に似た声が法廷に響き渡る。
母の声が聞こえていないのか、私への暴言を止めようとしない。
そんなエミリー様を私は冷たい目で見る。
こんな時でも私のせいにするのね……。
私に何の罪を償えというのか。
私の罪といえば、エミリー・ジェイキンを今まで野放しにしていたことだ。
母の言葉でさえ届かない怒り狂う姿は、エミリー様に下された判決が正しいと証明しているようだ。
エミリー様は保安官達によって、暴れる身体を取り押さえられ、強制的に法廷から連れ出されて行った。
これで本当に終わったんだわーー。
エミリー様の逃亡によって中断された裁判は、ようやく終わりを告げた。
階段から突き落とされて始まった裁判は、エミリー様の自分の首を絞める行為によって幕を下ろした。