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「ありがとうございました。話は以上になります」



 保安官が部屋から出て行っても、この閉ざされた空間から出る気力が私にはなかった。


 ステファンとエミリー様が見つかったとの知らせを聞いて、安心したのは束の間。ステファンとエミリー様が一緒に発見されたが、ステファンは昏睡状態で発見され、今も意識不明。


 そして、その原因の一因が私の作った薬にあるなんて……。


 ステファンにどうしてエミリー様と一緒にいたのか聞きたいけれど、意識不明の者に聞く術はない。



 保安官は私の心情を知ることなく、淡々と話を進め、知らされた事実を飲み込むには、時間が必要だった。



「シフォンさん。まだここにおられたのですね」



 しばらくの間、椅子に座っていると誰かが部屋に入って来て、明るい声が部屋に響く。



「ごめんなさい。すぐに出て行きます」


「いえいえ、お座りください。私はシフォンさんにお願いがあって来たのです」


「お願い、ですか?」



 先程、部屋から出て行った保安官とは違う男性は私の前に座った。



 この窓もない閉ざされた部屋に、不釣り合いな明るい声と親しげな笑顔で、男性は言った。



「私はジェラルド・ミルです。以後お見知り置きを」



 そう言って差し出された手を、反射的に握って、聞き覚えのある名前に気付く。



 ちょっと待って!ミルって代々弁護士を務める家門で、貴族裁判専門のミルの名前じゃ……。


 公爵家の脱税で国との裁判において、公爵家から脱税金額の代わりにエメラルド鉱山と領地を没収した凄腕弁護士。


 味方ならこの上ない味方だけれど、敵にしたら最悪の弁護士だ。



 そんな人がどうして私に会いに来たの?

 何か訴えられることをしたかしら?



「早速、本題に入りますが。シフォンさんはエミリー・ギャレットを傷害で訴えられていますよね。その裁判、私にお任せくださいませんか?」



 思わぬ提案に目を見開く。

 

 ミル様みたいな強い弁護士に任せられるのは、私にとっては嬉しいことだ。だけど、ミル様にとって、この裁判を受け持つ利点が分からない。


 もしかして、エミリー様側からの罠だろうか?



「どうしていきなりそんなことを?」

 

「詳しくは言えないのですが。ある高貴な方から、この件を対処しろと言われまして。エミリー・ジェイキンをこれ以上、野放しにするには危険過ぎる」



 ある高貴な方。

 その人物が誰なのか気になったけれど、ミル様の有無を言わせない笑顔を見ると、それが誰なのか聞けなかった。

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