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「大丈夫よ、マリベル」



 そう言ってエラは、不安で強く握っている私の手にそっと触れた。


 そうね……、エラの言う通りだわ。裁判までまだ時間がある。馬車が遅れて遅刻してるいるだけ、不安になることじゃない。「遅れてごめん」と笑いながら、ステファンはやって来るに違いないわーー。


 エラの言葉で落ち着きを取り戻した私は、心配そうに私を見ているエラの手を握って微笑む。



「ありがとう……」

 


 私とエラ、弁護士の三人は裁判前の控え室にいた。


 両親はステファンの親と話すために、外でステファン達の到着を待っている。


 控え室に掛けられた時計がチクタクと鳴り、時間が進んでいるのを知らせてくる。



「遅いですね……」



 弁護士が時計を見て言った。


 エラは少し前に、証人として裁判官と話し合いのために、控え室から出て行った。


 証言をすると約束をしたステファンが、約束の時間を過ぎてもやって来ない。


 近づいてくる裁判の時間に、焦りと胸騒ぎがした。


 待っているだけではダメだ。何かしないと……。



「少し、外の空気を吸ってきます」



 いてもたってもいられず、弁護士に言って控え室から出る。


 お父様とお母様はどこに行ったのかしら……。


 両親と話そうと探していると。



「………はまだなのか……」



 どこからか話し声が聞こえて、周囲を見渡すとあることに気が付く。


 両親を探して歩いてると、知らず知らずのうちに、被告の控え室の近くに来てしまっていたらしい。


 被告と原告の控え室は会うことがないように分かれている。


 被告の控え室に続く廊下に、人が慌ただしく出入りしているのが見える。


 何かあったのかしら?


 不思議に思って目を凝らすと、エミリーの父が控え室の廊下を落ち着きなく、ウロウロと歩いているのが見える。


 エミリーの父は娘の裁判の様子を毎回見守っていた。今日もいつものように裁判を見に来ているらしい。



 執事らしき人がエミリーの父に近づいて、耳打ちをした。すると、エミリーの父はどこかに走り去って行った。


 あちら側も何か問題が起こったみたいね。まぁ、私には関係ないけれど。早くお父様達を見つけないと。


 エミリーの父の凄い慌てように驚きながら、両親を探すために足を動かす。



 結局、両親を見つけることが出来ず、控え室に戻ると両親が神妙な面持ちで座っていた。


 入れ違いになっていたのね。通りで見つからない訳だ。



「お父様、お母様。先に戻られていたのですね。探していたのですよ」



 私の言葉にお父様は「座りなさい」と言った。


 促されるように椅子に座ると。



「マリベル。落ち着いて聞いてね」


「??何がですか??」



 いつも優しい笑顔を浮かべて、我が家の太陽のようなお母様が、深刻な顔をして私を見ている。


 未だに姿を見せないステファンーー。


 色々なことが重なって不安な気持ちなる。

 

 お母様の言葉に首を傾げると、お父様が口を開いた。



「エミリー・ジェイキンが姿を消した」

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