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「エミリー泣かないでくれ」


「こんなことするつもりじゃなかったの。ただ、ステファンにそばにいて欲しかっただけなのに……」



 マリベルがジルベルトと共に、医務室でステファン達への復讐計画を立てているのを知らないステファンは、泣いている幼馴染のエミリーを慰めていた。



 マリベルを階段から突き落とした犯人。

 ステファンの幼馴染でもあるエミリーは、自分がマリベルを突き落としたにも関わらず涙を流していた。


 そんな彼女をステファンは肩を抱いて、優しい声で言う。



「僕はここにいるよ。大丈夫だ。マリベルに話せば許しくれるはずだ」


「そう、かしら……」


「僕からも許してくれるように言うよ」


「ステファン……ありがとう」



 エミリーはステファンの言葉に、さっきまでの涙が嘘のように笑顔を浮かべ、ステファンに抱きついた。



 公衆の面前でそんなことを言う二人は、周りから白い目で見られているのに気が付いていない。



 そんな二人がいる廊下に、喧騒と共に誰かが近づいて来る。



「マリベル様よ……」



 誰かの呟きに、ステファンが振り返るとジルベルトがマリベルを腕に抱え、廊下を歩いている。



 ジルベルトに抱えられたマリベルの顔は青白く、目は閉じられている。そして、頭だけではなく、首、腕、そして制服のスカートから覗く足に包帯が巻かれてた。



 マリベルの怪我の状況をみんなが息を呑んで見つめる。


 ジルベルトはステファンの側に来て足を止めた。


 

 驚いたようにマリベルを見るステファンに、ジルベルトは冷たい目で見て口を開いた。



「貴様は何をやっているんだ。婚約者が階段から落ちても看病もお見舞いもするでなく、その犯人と抱き合っているなんて……」



 ジルベルトの言葉にエミリーはビクッと身体を震わす。そんなエミリーを庇うようにステファンは前に出る。



「今から行くつもりだったんだ」


「どうかな?まぁ、あいにくマリベルは眠っているから話すことも出来ないがな」



 ジルベルトはステファンの言葉を鼻で笑うと、吐き捨てるように言った。




「マリベルはそんなに酷い状況なのか?」


「この怪我をみて酷くないと思うのか?」



 マリベルの怪我が酷いのは誰が見ても明らかだった。


 ジルベルトの言葉にステファンが何も言えないでいると。



「ステファンを責めないでください!!!」

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