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「起きたのかって……、いつからそこにいたんですか?」
ジルベルト様に気付かれないように、顔を触る。
よかった……。ヨダレは付いていないみたい。
人が近付いたのに気付かないなんて、無防備に寝るにも程がある。
ジルベルト様はクリス先輩が座っていた椅子に、分厚い本を片手に座っていた。
ジルベルト様の銀髪は人工の光で照らされ、髪と同じの銀色のまつ毛で縁取られたグレーの目に影を落としている。
その姿は男性らしいクリス先輩の骨格とは違って、線が細く美しいという言葉がよく似合う。
手元の本からチラリとこちらを見たジルベルト様は、本を閉じた。
「少し前からだ。カルニセルにマリベルがどこにいるのか聞かれて、会議が終わってからここに来た」
カルニセルはクリス先輩のことだ。
流石、クリス先輩。エラが私のところに行ったと予想して、ジルベルト様に聞いたらしい。
「音を立ててしまっても起きなかったが、あまり寝れていないのか?」
「たまたまですよ。暖かくて眠ってしまっただけです」
「嘘が下手だな。目の下を黒くして…….、寝れていないだろう?」
隠していたことを簡単に言い当てられて、驚いてしまう。
心配させないように隠していたから、エラも家族でさえ気付かなかったのに。
「そうですね……。最近は考えることが多くて」
笑って見せると、ジルベルト様の目に心配の色が見えて、空元気を見透かされている気がした。
「これを」
「??何ですか?」
ジルベルト様は胸元のポケットから小さなガラス瓶を取り出して、テーブルに置いた。
特別な保存容器に入っている液体は、ピンクがかったオレンジをしていて、光に反射してキラッと輝いて見える。
「薬だ」
「何の薬ですか?」
「まぁ……、飲むと身体が良くなる薬だ」
「ざっくりとした説明ですね」
手に取って、光にかざして見る。すると、液体の中に輝きが見えた。
色々な角度から見てみると、私は目を見開いて驚く。
光を反射して輝いて見えていると思った薬は、そうではないと気付く。
ちょっと、待って……。この薬は!!
「ジルベルト様!これはただの薬ではないですよ!!」
「効果は確認済みだから心配するな」
強い効果を持つポーションは、液体が輝いて見えると本で見た。
私の手元にある液体は強い効果を持つポーションで間違いないはずだ。
「そういう意味ではなくて……、どうやってこれを手に入れたんですか?」
「僕が作った」
驚いてはじめて見るポーションに興奮する私に反して、ジルベルト様は何でもないように言った。