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減刑嘆願書の内容は、エミリー様はまだ未成年で、未成年者は判断能力が不十分であり、ことの重大さを理解していない。
事件当時は精神錯乱状態にあった。何より、被害者の目の前で支離滅裂なことを言っていたのを何人もの生徒が目撃している。これはエミリー様が精神錯乱状態にあった十分な証拠である。
そのため、未成年者であるエミリー様の未来のためにも、保護者監視の下、領地での治療と謹慎を求める。というものだった。
エミリー様とステファンの醜態を知ってもらう行動が、裏目に出るなんて……。
相手側の弁護士はエミリー様が未成年者ということと、精神錯乱状態を理由に減刑を要求している。
「嘆願書??いったい誰が書いた嘆願書なの?」
「エミリー様の同級生と使用人よ」
「親しい人に減刑の嘆願書を書かせるのは、よくあることだが……」
「使用人??使用人なんて、この事件に何の関わりもないじゃない!」
冷静に話すクリス先輩とは違って、エラは呆れを露わにして言った。
エラの言う通りだ。エミリー様のお屋敷の使用人なんてこの事件には関係がない。
使用人の嘆願書の内容は、エミリー様がいかに優しく愛されて育てられてきたか書かれていた。
同級生とも仲良くやっていたらしく、エミリー様が攻撃的な一面を見せるのは私の前でだけだったらしい。
私はそれをどう証言すればいいか頭を悩ませていた。
「そうなんだけど。エミリー様が愛されて育ってきて、自分達に優しくしてくれるのか書かれていたわ。裁判員の同情を狙うものね……」
「私にも嘆願書を見せて」
「今は手元にないから今度見せるわね」
「絶対よ。それで、マリベルはどうするつもりなの?なにか手はあるの?」
「エミリー様が攻撃的な態度を取っていたのは私の前でだけ、私が証言するには不十分なの」
「他の誰かの証言が必要なのね……」
私が頷くと、エラは顎に手を当てしばらく考え込んだ後。パッと顔を上げて笑って言った。
「私が証言するわ」
エラの言葉に、私は忘れていたことに気付く。
そうだわ。エラは私とよく一緒にいて、エミリー様の攻撃的な一面を見ていた。