表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/43

14

パチンッ パチンッ


  

 ステファンと話してから数日が経ったある日。


 学園の温室で一人。いつものように月光蝶のサナギの世話をしていた。



 満月はもう少し先だから、羽化するにはまだ時間がかかりそうね。


 

 月光が当たりやすいように調節していると。



バンッ



 温室のドアが勢いよく開く音がした。




「マァ~リ~~ベルゥ~~~~!!!!!」



ドンッ



 ドアの音に驚きつつも名前を呼ばれて振り返ると、身体に衝撃が走った。


 ギューと抱きしめられているのに驚いて、目を白黒させていると。



「あっ!怪我をしてるんだった!!!!」



 私に抱きつくその人物は、パッと身体を離して「ごめんなさい。痛かったわよね??」と眉を下げて心配そうな顔で見つめてくる。



「もう治ったから大丈夫よ」



 私の言葉にホッと息つく彼女は、錬金術科の同級生で友人のエラだ。



 錬金術科の生徒の例に漏れず、研究中毒で研究室から中々出てこないエラを見るのは久しぶりだ。



「聞いたわ!!婚約者の幼馴染に階段から突き落とされたんですって!?!?」



 久しぶりに会ったエラは、不穏な物を手にして「大丈夫なの?」と言った。



「大丈夫よ。怪我は治ったし。それが原因でステファンと婚約破棄することになったの」


「まぁ!!」



 驚いた顔をしてエラは言葉を続けた。



「実はずっと婚約破棄しないのかな?って思っていたの。マリベルをないがしろにするし、婚約者の前で幼馴染と仲良くするわ。正直、彼のことは優柔不断な八方美人て感じで好かなかったの」

 


 エラは顔を歪めて、心底ステファンが嫌いだという顔をした。



 ステファンがエラにこれほど嫌われていたなんて知らなかった。エラには今まで、たくさん心配を掛けてしまったものね……。


 

 申し訳なく思っているとエラがギュッと胸に抱く、不穏な赤い何かが付着した物が気になってしまう。



「それはどうしたの?」


「これ?これは先輩に借りたの。婚約者と幼馴染にお仕置きをしようと思って」



 「この赤いのは苺の果汁だから安心して」そう言ってエラは、手の長さぐらいの木の棒をビュッと横に振ってみせた。



「で、奴らはどこにいるの??」


「奴ら……??」



 キラキラとした目で、今にも殴りに行きそうな勢いで聞いてくるエラに、ステファンとは婚約破棄をして、ステファンは領地に戻って親の仕事を継ぐことになったこと。そして、エミリーとは裁判中で停学処分中だということを話した。



「なんてこと……」



 これまでの経緯を聞くと、エラはショックな顔をした。



 何か悪いことを言ったかしら?



 どうして落ち込んでいるのか分からなくて、首を傾げていると。



 エラは泣きそうな顔をして言った。



「親友が辛い思いをしていた時に、私は研究に夢中になっていたなんて。親友失格だわ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ