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12(終)

カイザート領編ラストです。短いです。

 夕方になると、カリーナがお風呂の準備ができたと声をかけてくれる。いつものようにドレス自体は部屋の方で脱いでしまい、薄い下着姿で浴室へ向かう。


 浴室の真ん中には大きな浴槽が置かれており、扉との間には衝立がある。衝立を通り過ぎて、何となく覗くと、中には乳白色のお湯がはられていた。


「これがカイザートの温泉なのかしら?」


 疑問に思いながら浴槽に手を入れると、つるりとした肌触りにいつものお湯とは違うことを感じる。ちなみに、ニジエには温泉はなかった。少なくとも大陸の西側ではあまり温泉というのは聞いたことがない。


 さっそく入ってみたくなりフィネリアはカリーナが来ないことが気になったものの、着ていた下着を床に落としてしまうと、一人で入ることにした。

 浴槽の正面には前には小さな踏み台が置かれており、フィネリアはそこに足をついて浴槽に入る。


 ちゃぷんと水音を立てて浴槽の白いお湯に浸かると、温かさがじんわりと伝わり、気持ちよさに目を閉じた。この乳白色のお湯は肌に触れると滑らかになるような気がして、フィネリアは鼻歌でも歌いたい気分になった。


 そんな風に気分よく入っていたところで、扉が開く音がしてフィネリアは目を開きもせずに、カリーナだと判断した。いつもならフィネリアが入浴するときには必ずカリーナがつきそうからだ。


「ごめんなさい、カリーナ。待ちきれずに入ってしまったの」


 いつものカリーナなら少し困ったような顔をして「遅くなって申し訳ございません」と言われそうな気がしたのだが、いつまで経ってもそんな言葉が返ってこないため、フィネリアは目を開いた。

 

「カリーナ?」

 少し体を起こして視線を横にずらすと、そこにはカリーナはいなかった。予想外すぎる人物がそこにいて、フィネリアは目を見開いて固まった。


「カリーナじゃないよ」

 聞きなれた声でそう言ったのは、レキアスだった。しかも、レキアスは何故かバスローブを羽織っているだけの姿だ。


「へい、か?」


 声に出すと現実だという実感をようやく理解すると、フィネリアは大慌てで自分の腕で体を隠しさらに深くお湯に浸かった。本当に顔だけが出ている状態である。


「なんで陛下が⁉︎」

「そりゃあ、一緒に入るために決まっているだろう?

 当たり前のようにそんなことを宣ったレキアスにフィネリアが理解できず声をあげる。

「何をおっしゃってるんですか⁉︎」

「夫婦なんだからお風呂ぐらい一緒に入ったっておかしくないだろう?」

「おかしいですよ!え、おかしいですよね……?」


 フィネリアは自分が恋愛経験も、男女の機微にも疎いことを理解している。そのため自分が思っていることが男女の常識かと言われると自信が無い。そんな自信なさげなフィネリアの様子を見て、逆に満面の笑顔でレキアスが口を開く。


「おかしくないよ」

 曇りのない笑顔でそういうレキアスに、フィネリアは真っ赤になって声をあげた。


「絶対無理ですから‼︎」

「大丈夫だよ」

「何がです⁉︎」

「ここのお湯は濁ってるだろ?」

「全然理由になってませんけど⁉︎もう、出ていってくださいー‼︎」



 しばらく皇帝夫妻の攻防が繰り広げられたのだが勝ったのはどちらだったのか。

 その後ぐったりとした皇后陛下が寝室に運ばれて、皇后陛下の侍女がしこたま皇帝陛下にお小言をぶつけていとか、どうとか?



 数日後には、カイザート城塞での滞在期間は終わり、二人はカイザート城塞を後にした。


 そんな短い滞在期間ではあったものの、カイザート領内での皇后の噂が多少塗り替えられた。


 皇后は、想像よりずっと可愛らしい姿をしていたがとても無表情だ。しかし、そんな皇后を皇帝が溺愛しているようだと。なんでも皇帝がいない間に皇后に話しかけたカイザートの騎士たちが、皇帝によってボコボコにされたとかなんとか。どうやら皇帝もただ柔和なだけではないらしい。


 そんな噂がカイザート領地内を駆け巡った。






▪️おまけ


 二人は次の目的地に移動するために、馬に相乗りしていた。レキアスが後ろに乗り、フィネリアが前に乗る形だ。手綱を握っているのは当然レキアスだ。

 二人の後ろには、近衛騎士の馬も並走しているが気を使ってか、若干距離が離れている。なんせ、フィネリアの表情が非常に険しいのだ。


「絶対お風呂に一緒に入るなんておかしいです」

「まだ言ってるのかい」

「帰ったら妹に手紙で聞きますから」

 フィネリアは自分より大人でしっかり者の妹の言うことは絶対だと思っている節がある。

「いいよ。きっとフィネリアが望む返事じゃないと思うけどね」

「違ったらどうするんですか」

「フィネリアの願いをなんでも1つ叶えてあげよう。でも、合ってたらどうするんだい?」

「私も、陛下の願いを叶えて差し上げます」

「へぇ、……それはとても楽しみだ」


 レキアスが後ろですでに確信めいた笑みを浮かべていることにフィネリアは気づかない。

電子書籍発売記念連載カイザート領編、終わりです!

ありがとうございました!

なるべく二人の仲が良いところをと思って書きましたが、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

書いてる本人はとても楽しみました!


最初の方の精霊殺しの滝辺りの話はまた機会があれば載せてみたいと思いますが、重々しい話になりがちなので(重要そうなところはだいたい書き済み)、二人のいちゃいちゃはものすごく少なく……。異世界恋愛作品的に楽しい内容にできたら、またいつか掲載したいと思います。。。


ノルトが結構好きなので、ついに小話以外に出してしまいました。ノルト卿ももっと書いたら楽しそうだなあとは思いますが、苦労人な気がします笑


お風呂についてどちらが勝ったかはご想像にお任せします!

最後まで読んだ頂きありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結って? 何も解決してないですが? 続きはありますか? 読みたいので、是非お願いしますm(_ _)m
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