閑話3 結婚式、直前
「やば、睡眠不足すぎて気持ち悪くなってきた……」
すでに結婚式のために白い服を着て、いつもと違い髪を横に流しセットされた状態のレキアス。
しかし、その顔色は悪く、机に腕を突きながら言葉を吐く。何か違うものが出てきそうだと思いながらも、食事も碌に食べておらず、出てくるものもない。
とにかく結婚式に臨めるように、結婚後は妻となる相手と少しでも時間を共に過ごせるようにと、執務の処理をかなり無理した自覚はあった。
最初が肝心だ。
そう思ったからこそ、無理をしたのだが、結婚式で倒れてはなんの意味もない。むしろ、帝国の威信に関わる重大な汚点になってしまう。
……、それだけは、避けたい。
側近に頼んでおいた薬だけなんとか口に含み、水で流し込む。頼むから効いてくれと最早、祈るしかない。
扉がノックされた後、入ってきたのはサディスだった。青ざめた顔のレキアスに、慌てて側に寄る。
「おい、おかしい顔色してるぞ」
「知ってる」
「座った方がいいんじゃないか」
「座る方が気持ち悪いんだ」
「横になる、わけにもいかないか」
すでに衣装に着替えた後では遅い。これで横になろうものなら服も皺くちゃになってしまうし、セットもやり直しだ。
耐えろ。これぐらいなんてことないだろ。
そう言い聞かせている間に別の側近が時間を告げに来る。レキアスは、無自覚に笑顔の仮面を被った。
「あぁ、今行く」
大聖堂へ向かう姿は、優しい笑顔の皇帝。
誰から見ても完璧のはずだった。
ただ1人、その横に佇む、妻となる女性を除いては。
おまけで書いてみました。