閑話2 婚姻の承諾
「ニジエが渋々ですが、承諾の回答を出してきました」
サディスはニジエからの書簡を手にそう言った。それを聞いたレキアスは、軽く頷いた。
「よかった」
「何を笑ってるんだ」
レキアスの表情の変化にサディスが鋭く気づくと、「あぁ」と紙束をサディスに渡した。
「もらった精霊姫の情報が面白すぎて」
書類だと思って受け取ったサディスが首を傾げる。
「手紙じゃないか、見ていいのか?」
「いいよ。面白すぎて笑わずにはいられない」
手紙を目で追いながら読むサディスも途中で吹き出した。
「精霊姫はなかなかお転婆だったみたいだな」
「あぁ。やってることが僕らの小さい頃と変わらない」
「一応、姿絵も届いたんだが、この中身と一致しないな」
そう言って、サディスが書簡と供にレキアスに手渡す。
手渡された姿絵には、淡い金色の長い髪に、紫の瞳を持つ、幼い顔立ちの女性が描かれていた。控えめに微笑むその姿からは、この手紙に記されていたお転婆っぷりは到底想像ができない。
美人というよりは可愛らしいという形容詞が似合う女性だった。
「これ最近の絵なのか?」
「一応最新ではあるみたいだ」
レキアスが書簡の方も流し見して確認する。
「準備期間1年か、まぁ妥当だろう。了承の返事を。婚約期間中は、ニジエで過ごして貰えばいい。結婚式はこっちで。式後は、そのままこちらに住んでもらう。あとは、身ひとつで来てもらうかな。ニジエはちょっと情報が少なすぎて信頼性に欠ける」
「承知しました」
サディスが頷く。そして、手紙を返しながらレキアスに声をかける。
「手紙の送り主は最後は完全にキレてるが大丈夫なのか?文字まで荒ぶってるが」
「いつもそんな感じだから気にしなくていい。感情表現が豊かなやつなんだ。僕が精霊姫を娶ろうとしてるのが気に食わないだけだろう」
「まぁ、この手紙からは精霊姫大好き感は伝わってくるな」
レキアスは姿絵に目を落とすと、少しため息をつく。
「別に悪いようにするつもりはないし、できれば仲良くしたいし、大事にしたいと思ってるよ。あまり公務に縛り付けたりはせず、自由に暮らしてもらうのがいいだろう」
所詮は政略結婚。
そうは言っても、ただの道具にしたい訳ではない。相手も人格がある人間だ。それでも、自分の国の都合で結婚させられる。
彼女にとっては気分がいい話ではないだろう。本来であれば、国から出ることもなかったかもしれないような王女だ。
「申し訳ないけど、うちの国には来てもらうしかないな」
過去はなかなか楽しいです。