始まり
悪人とは憎まれ疎まれ、虐げられるような存在です。そんな悪人の感情、感覚を主観的に見たらどのようなものなのかを想像しながら書きます。
連載にはしていますが短めです。初めて小説を書きます。まだ書き切っていないのですが、趣味なのでぼちぼち書きます。
箇条書きになってしまいましたが、どうぞ楽しんで読んでください。
太陽は出てきていませんが、地平線の奥から陽光がさらさらなびいていて、きらきらなびく頃には、陰雲のようだった雲が陽光が雲を突き抜け薄雲だと知り、東雲からカーテンがなびくように、陽光が駆け巡り、その後に町を照らす姿は女波を追う男波のようです。そんな姿を海岸から見ていた無精面の男は副流煙を太陽に照らし、すべてを灰にすると、踵を返し去って行きます。
男は一人で暮らすには広いような、二人で暮らすには狭いくらいのアパートに彼女と二人で過ごしています。ドアをガチャッと開けて、ただいまと言っても返事は返ってきません。返ってきたことがありません。それでも変わらず男は言い続けるのです。それは仲が悪いわけでも喧嘩しているわけでもありません。女に悪気もありません。二人は普通を拒絶した世界にいるのです。しかし男は今日もあどけない声でただいまと言って家に帰ります。当然返事は帰ってきませんが、今日はいつもとは意味が違います。部屋に入り、正面から見て横に敷き詰められたベッドから片足を出して、口を開けて寝ているためです。男は女の片足を布団に押し入れ、ベッドに入り、一緒に眠りました。
二人が出会ったのは大学生の頃です。男はたばこを買うために、深夜コンビニに向かおうと歩いていると、路地裏に入る小汚い服装と黒いマスクをし、焦点が揺るぎなく一点を凝視し、周りが見えていないようで、今から女が向かうその場所は緊張と秘密と不安と興奮が混じり合った、初めて行く風俗のようで、それに男は大変魅了されたのです。たばこを買いに行くことなど遠に忘れ、男は尾行しました。女の雰囲気に感化された男自身にも緊張と秘密と不安と興奮が体の中心から巡り、外に放出された瞬間、少し武者震いをします。まっすぐ進み、路次は狭くなり、まっすぐ進み、更に狭くなる路地裏は、緊張と秘密と興奮を消し飛ばし、いつの間にか不安だけが残りましたが、それでも男は尾行し、次の角を曲がろうとすると、女は立ち止っていて、男は鼓動が早くなり、女に見られないように角の壁に背を付き、探偵のように、盗視と盗聴を繰り返すのです。少しの冷たさを感じながらも壁に頬を付け盗視しようとこっそり眺め、視界が壁と奥の光景を移す比が半々になり、ピントが壁に合いぼやけ、更にのぞき込み、女にピントが合った先に見たものは、換気扇の上でうとうと眠る子猫とそれを直立で見下げる女と言う光景でした。女は子猫を頭からお尻に向かい何度も撫で、眠たそうに子猫はにゃーと鳴き、眠りに落ちようとした瞬間、女が刺しました。




