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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
85/605

休日

謹慎明けから三日、特に問題はなかった。

下着は気に入ってもらえたようで、

「良かったわ」

をいただけた。

初めての休日。まだ、寒さは厳しくないので、ポンチョを着て出掛ける。

朝から精力的に動こうと前日の夜から計画を立てた。ミラ特製の観光地図を見ながら、服屋の位置を確認したり、少なくなった布や糸の確認などだ。リストを作成した。

まずは服屋だ。

片っ端から下着をみていく。店員に質問して、この世界での下着事情を探る。

基本的にはビスチェ、ブラとコルセットが一体になっている物だが、一部ではブラだけの下着が人気がでているらしい。でも私が想像しているようなブラではなかった。

大きいサイズは結構種類があった。形を良く魅せるブラというのは世界が異なっても人気があるそうだ。

試着をしてみる。ワイヤーブラのような安定感がない。

一応紐できつさは調整できるが。

ワイヤーが入ってないのか。ワイヤーか、親方作れるかな。

カップの作りなどを観察する。形をよく魅せるタイプの下着ですらカップはしっかりとした作りではなかった。コルセットの延長にブラがついている感じのビスチェが多い。メインはコルセットなのだろうと思う。その中から比較的レースの可愛い下着を何着か買い、レイカの下着も選ぶ。

そしてその足で、ウォルター工房へ向かう。

「こんにちは」

「久しぶりだね、お嬢ちゃん。ミラ君は一緒じゃないのかい?」

「はい、今日は一人です。あの親方、以前お願いしてあった件なのですが」

「あぁ、あれね。一応、作ってあるよ。中々来ないから焦ったよ」

親方は奥から依頼の品を取ってきて手渡す。

「確認して」

特注のブレスレットだ。

手につけたり外したり、動作確認をする。特に問題はなさそうだ。

「これをあと二つお願いします。この分は、今支払います。後、この形に沿った薄いワイヤーって作れますか?」

買ったばかりの下着を袋から出して、親方にみせる。

「お嬢ちゃん、もう少し慎みをもってですね。」

嗜められた。

「すみません。本当は絵を描いたりして教えられたらよかったんですけど。下手で」

「まぁ、いいです。長さを測りますから、触っても大丈夫ですか?」

「はい、お願いします」

用途の説明をする。なるほどねぇと親方が頷きながら、寸法をメモに書き込んでいく。

「大体一週間を目安にきてくれますか?あといくつ作りましょうか?」

「まずは二つ。それを試してから、残りの注文は考えます。」

ブレスレットの代金を支払い、店を後にする。

今度は、建築の工房だ。王都で一番大きな工房。

「すみません、今宜しいでしょうか?」

工房の受付にいたやたら眠そうな男性に声をかける。

「はいよ、何?」

「あの、建材の端材をいただけないかと思いまして。」

「端材か、木材?石材?」

「石材なのですが。あ、お金は払います」

「ん?いいよ。ついてきな。」

男の案内で工房の石材置き場に向かう。

その端に石材の端材が集められていた。

「あー、この袋に入れて。袋一つで大銅貨二枚。」

「わかりました。ありがとうございます」

石材の中から守り石だけを選び、袋に詰めていく。詰め終えると男性にお金を渡して次の店に移動する。

薬研やすり鉢、布や糸を買い、魔法省へ戻る。

沢山の荷物を持って帰ってきた私に門番の女性が、

「買い込みましたね」って驚いていた。

寮に戻り、まず下着の洗濯をする。次に布類を片付けた。それから、薬研やすり鉢、ブレスレットを机に出す。守り石を袋から出し、一つ一つ丁寧に拭く。

他の石材がついている部分を削る。

綺麗になった守り石を薬研で粉砕。更にすり鉢で粉末状にする。

この特注ブレスレットは中が空洞になっている。そこへ、守り石の粉末を入れ蓋を嵌める。そして、更に金属の被せをしてしめる。

それを腕につける。その他の守り石を外し、窓の外に手を出す。

「特に問題なし。よし」

外した守り石を再び身につけ、ブレスレットを外す。

余った守り石を片付け、薬研とすり鉢を綺麗に拭く。

「粉々でも有効って凄い」

以前ミサンガに使った守り石をビーズ状に加工するのが難しいとグラッドから聞いたのをヒントにこのブレスレットを考えた。

「これなら、私のセンスは関係ないから」

ブレスレットの入れ物を作りながら、守り石について考える。霊素から守る。加護障害を防ぐ。

それならまずは加護障害、加護について調べないと。加護については神殿が管理してるって言ってた。

ジャック様と魔生物局副局長の話に出てきた神殿はかなり危険な場所だ。

気軽に資料を読みに行けるような場所ではない。ニコルも拉致監禁実験体の危険があるって言ってた。

駄目だ。これは一人では動いていい問題じゃない。

つい、うっかり、が取り返しのつかないことになる。

「やっぱりニコル先輩に頼もう」

そう決めた翌日。

他に誰もいない時を見計らっていたら、昼食前になってしまった。

「良かった。行動に移す前に僕のことを思い出してくれて。」

ニコルに笑顔で加護についての資料を渡された。

召喚課の部屋の棚にあった資料だ。

「こんな所に」

「ここは、僕の趣味の棚だから、偏った資料しかないけど。」

加護と属性特化の範囲は術式札を作成する際に必要な知識だそうだ。

「学園では基礎しか習わないの、なんでだと思う?」

「個人差があるから、ですか?」

「それもある。魔力差で出来る事も変わるし、それよりも」

「それよりも……不都合がある?」

まぁ、合格かな?と飄々として続ける。

「揃えたいんだよ、軍として戦うなら規格を揃えたい。自由な発想で戦局を変える一騎当千の騎士もいる。が、そればかりでは成り立たない。均一化は穴を埋めやすいし」

「なるほど」

「後、切り札は隠したいだろうし。学園で基礎しか教えないのは、優位性を保ちたいからだろうね。考えて、気づいて、言葉にしたら奴から潰される。黙って手札を増やせばいいだけだ。その点リオさんは危なっかしい、君意外と口にしがち。貴族として大切な事だ、周囲を守りたいなら尚更。」

ニコルの眉間に皺が寄った。ニコルの心配が伝わってくる。

「情報、局長に渡したんだろ?」

「はい」

「本来なら、自分が手に入れた情報は隠して自分の利になる事に使うんだ。君は局長に恩を感じているかもしれないけど、僕達の行動基準からしたら、言い方はあれだけど。義務や責任に近い。だから、君が恩を感じる必要はない」

「ニコル先輩。ありがとうございます、そうでも構わないです。私がただ受けた恩を返したいだけです」

「損な性格だね」

「それでも、後悔は少ないですよ?」

言えるお礼はすぐに言いたい。返せる恩は返しておきたい。別れなんてすぐに来て、気持ちは伝えられず消えることなく胸に残り続ける。

「君はよく出来た子だよ。あぁそうだ。この資料は寮に持ち帰って構わないよ。個人の趣味本だからね」

「ありがとうございます」

「最近、リオさんの無表情と微表情が何となくわかるようになってきたよ。レイカと競争してるからかな」

「?」

「レイカとリオさんの表情を読んで考えてることを当てるゲームをしてるんだよ。先に出会った僕が負ける訳にはいかないから元諜報員の経験と勘を駆使して今のところ勝ってます。」

そのゲーム、成り立ってます?私しか答え知らないのに。と言いかけて、ニコルの手法なのかなと思った。

「微表情ってなんですか?」

「嬉しい、恥ずかしい、楽しい、驚き、疑問、特に大きく感情が揺れている時にはすこーしだけ表情がでる。それをレイカ曰く微表情。」

なるほど、それをグラッドやミランダは読み取っているのか。

レイカとクリスがトイレから戻り、話は終了した。

「リオさん、何かあった?悲しい?」

レイカに心配された。

「いえ、祖母の事を思い出しただけです」

「そう、無理はしないのよ」

「ありがとうございます、レイカさん。あ、抱きしめてくれてもいいんですよ」

「!!しないわよ!あ、ほらご飯の準備しなきゃ。アランが戻ってくるわよ」

可愛い。


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