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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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謹慎明け

翌日はクリスがべったりだった。

朝出勤したら、半泣きのクリスが抱きついてきた。

「リオと一緒じゃなきゃ、やぁ」

それを抱き留めたら、離れなくなった。アランやレイカが言っても聞かない。

「はぁ、赤ちゃん返り?かしら」

「すまん。リオさん、クリスのこと、頼めるか?」

「はい。勿論ですよ」

「お願いね」

アラン達に頼まれ、クリスを抱っこして行動することになった。

ニコルはクリスをとられてやる気がでないと嘆いていた。

そのまま半日が経過した。

資料室でも、昼食時でも離れない。

昼食を食べさせていると、ジャックがやってきた。レイカの目の色が変わる。

「ジャック様、急にどうされたのですか?」

アランは面白くなさそうだ。ニコルも嫌そうな顔になっている。

「あぁ、昼食時にすまない。リオさん、ちょっとだけいいかな?」

「ジャック様、申し訳ありません。クリスが一緒でも大丈夫でしょうか?」

「クリス君?どうしたんだい?いつもこうして食事してるの?」

「いや、これはですね。私の謹慎中寂しかったようで」

「なるほど。わかった、構わないから。ちょっといいかい?」

廊下で並んで話をする。防音の魔力壁を顔周辺だけに使う。

「リオさんが、調べた情報だけど、私達が貰っていいのか?サイス領にも有益な情報が混ざっていたと思うが」

「報告書はサイス領用も用意していますので、構いません。どのみち今はまだ活用できませんし。裏付けをとったら教えて下さい」

「情報は誰も知らないからこそ価値があるんだよ」

「知っています。ですから二つ報告書を用意したんです」

誰も知らない情報は価値がある。

別に同じ情報を知っている人間がいると知らされた情報は改竄しづらいのではないかと思った。

「君は本当に未成年か?穴はあるが、まぁいいさ」

苦笑された。

「あとサイス領から連絡があった。特に変わったことは起きていないようだ。ただ、ミレニアの研究が捗っててフレッドが不機嫌なくらいだ」

研究が捗るのはいいことなのだが、

「フレッド様、」

本当にミレニア様のこととなると正直な人だなと思う。

「君が作った刺繍のおかげだと手紙にはあったな」

なんてこった。

「会うのが怖いんですけど」

私の言葉にジャックは違いないと笑う。

「そういえばジャック様、何故あの時気づいたのですか?」

「局長だよ。あれは、とある方法で魔力を感知しただけだよ。これ以上は秘密だ。」

とある方法か、ミラに教えてもらった方法と似たような仕組みなのかもしれないなと納得する。

「教えて下さってありがとうございます、局長。」

魔力壁を解除する。

クリスがちょっと膨れっ面でこちらを見てる。

「それでは、私は行くよ。クリス君、待たせたね。ありがとう」

クリスの頭を撫で、ジャックは管理棟から出て行った。

「お昼ご飯に戻りましょうか」

ドアに手を伸ばすと、

「リオ、あれなに?喋ってるの聞こえなくなった。」

クリスが尋ねる。

「あれは、魔法ですよ。」

「魔法、リオも使える?」

「ええ、使えます。」

「お空、飛べる?」

可愛い質問に

「やったことはないですね、ニコル先輩に聞いてみましょうか」

そういえば考えたことないなと思う。

ミランダの兄、ミゲルさんが飛んだといったのはどの程度のことだろう。距離はそこまで出せないのか。

「うん!」

ニコル曰くやりようによっては飛べるらしい。

「危ないから駄目」

「えー!ぼく飛びたい」

きらきらした目でみてくるクリスに、今はできませんと諦めてもらう。

「魔法は安全なものだけじゃないの。クリスが怪我するかもしれないことは許可できません」

室内では危険だ。

「はーい、」

残念そうなクリスの様子にニコルは胸を痛めていた。

今日の昼食後のクリスの運動の時間は、私が担当することになった。アランが、いつもの流れを教える。

二階の魔道具倉庫の一角にただの玩具が積まれている場所がある。

そこで遊ぶだけ。

ボールを投げたり、自転車に乗ったり、クリスが満足するまで遊ぶ。

ただひたすら遊ぶ。ただただ遊ぶ。

子供の体力を舐めてた。全然飽きないし、体力が半端ないし、楽しそうだ。

ミラに鍛えられていて良かった。

「クリス、行きますよ。」

投げられたボールをクリスが避ける。連続して投げる、投げる。

私のコントロールが悪いので、直撃することはないのだが、きゃっきゃっと喜んでいる。

「クリスも投げていいですよ。避けますから」

クリスは運動神経がいいのだろう。あとコントロールが良い。当てようという気持ちに技術が伴っている。

ひたすら投げ合い、回避し合う。

「リオ、すごい!」

大満足のクリスを連れ、一階に戻る。

クリスをお風呂に入れようとお風呂セットを持つ。

「お風呂はアランと行くの」

あんなにべったりだったのに、拒否られた。

仕方ないなとアランがクリスをお風呂に連れて行く。

「拒否られた」

ショックを受けている私を

「恥ずかしがってるだけよ。」

レイカが慰める。

「お疲れ様でした。はい、緑茶」

「あ、ありがとうございます、ニコル先輩」

この部屋では緑茶が主流だ。美味しい、ほっとする。

「クリスは、元気いっぱいでしょ。いつも、大変なの。大体アランが担当してくれるけど、たまに遊ぶと勉強どころじゃないわ」

つい、一緒に昼寝をしてしまうとレイカが言う。

「楽しかったです。私の訓練にもなりました」

訓練?と二人が首を傾げる。

「冒険者活動を最近は出来ていませんから、体力をつけるには良い訓練です。クリスにひたすらボールを投げてもらって回避能力が衰えないように」

私の説明に

「ちょっと待って、何してるの?」

二人がハモった。

あとは自転車で全力で逃げるクリスを追いかけて捕まえたり、逃げるクリスにボールを当てたりと指折り数える。

まぁ、当てられなかったのだけど。

「もっとクリスさんの話を聞かせてくださらない?」

ジュリエットが自分の席から、カップを持ちやってきた。

魔法に興味があるらしいこと。膨れっ面も可愛かったこと。

ボールコントロールが良いこと。自転車で爆走する姿も可愛かったこと。

「やっぱりクリスさんは素敵ですわ」

一通り話して聞かせると席に戻っていった。


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