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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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謹慎2

よそ行きのジャックの顔は初めて見る。

さっきまで感情の読めない目をしていた男性は、感情も露わにジャックへ詰め寄った。

「今日こそは、あの半魔獣の出所を話してもらうぞ。あの日、君に会いに来た冒険者は分かっているんだ。さぁ、白状するんだ」

「副局長ともあろうお方が、約束もなくいきなり訪ねてきたかとおもえば、話になりませんね。お帰り下さい」

「黙れ、あの冒険者はミラ、二級冒険者だ。どうして、二級冒険者如きが君との繋がりを持てる」

「はぁ、ですから。局長殿に説明致しました。聞いておられないのですかな?魔生物局では申し送りに不備があるようだ」

「あんな説明で納得できるか!!」

「何故納得できないのですか?ただ彼女達兄妹に依頼したことがあり、それ以来、交流が続いている。その彼女が魔獣に変化途中の動物を見つけ、捕獲したから私を訪ねてきただけです。何が問題なのですか?彼女には大金をせしめられましたがそれが問題ですか?」

「王都近辺は我々も探索している。そのような事例はない。」

「これが最初の事例になりましたね。それで、副局長殿はどのようにお考えなのですかな?」

「貴様は仕事柄、神殿によく出入りしているな。そこで部下に魔生物を造らせているのではあるまいな!」

大罪ぞ!と男性が叫ぶ。

ジャックはやれやれと呟き、立ち上がる。

「根拠はあるのでしょうね。私と私の部下を愚弄するくらいだ。局長会議を召集しましょうか。まさか、何の根拠もないなんて言いませんよね。魔生物局副局長ともあろう方が」

冷え冷えとした金色の瞳に睨まれ、白衣の集団は後ずさる。その中の一人が、私は知らないと部屋から飛び出した。次々と副局長についてきただけだと部屋を出て行く。一人残された副局長は、挙動が不審になっていた。

「神殿では度々怪しげな実験が行われている」

「えぇ、それを検挙するのが私共魔導局の仕事です」

「実験の資料は、召喚課が管理して」

「何をおっしゃいますか。押収した実験資料は全て本館に保管されています。知りませんでしたか?召喚課は召喚・転移者にまつわる資料室の鍵しか持っていません。誰に何を吹き込まれたのですかな?じっくり話を伺いましょう」

ゆっくりジャックは副局長に近づくと、肩に手をのせる。

「ひぃっ」

副局長は腰を抜かした。ジャックから距離を取ろうと必死に扉目掛けて這いつくばる。その副局長にジャックが魔法を使った。恐らく、視界を奪う魔法だ。顔を影が覆っている。

「ひぃぃぃ」

叫ぶ男の様子を無表情に眺めていた、ジャックがこちらを仰ぎ見る。眉間に皺を寄せた。が、すぐに視線を戻す。

「誰の入れ知恵ですか?」

「ひぃぃぃ、なんだこれは」

魔力の塊を副局長の頭に落とす。半液状、昔よく遊んだスライムのような状態にしてかけている。それが次第に固まり、副局長をどんどん固めていく。樹液の中に閉じ込められた虫のようだ。

「何をしているか、分かっているのか!?こんなことをして、ただで済むと思っているのか!!」

「貴方にその言葉をそっくりそのまま返しますよ。根拠のない言いがかりで、乗り込んできた。私の時間を大分無駄にしています。腹立たしい。それで、誰に唆されたのですか?」

相手に抵抗されない圧倒的な魔力量で魔力をゆっくりゆっくり固めていく。額、目、鼻、唇、耳を順番良く固め、口が固まる前に

「ウパラ侯爵だ!!」

副局長が叫んだ。

「ウパラ侯爵が、魔導局局長は、怪しげな実験をしていると、ひぃぃ、本当だ!し、資料もあったんだ!や、やめてくれ!!」

「あの糞ジジイが。ちっ、余計なことを」

ジャックは舌打ちすると、魔法を解除した。

解放された副局長は、恐ろしい物をみた顔でジャックを見上げる。

「これに懲りたら権力には近づかないことだな。踊らされやがって」

副局長は青白い顔のまま、部屋を出て行く。まだ、下半身に力が入らないようだった。足が震えていた。

部屋にジャックだけになると、ジャックがいきなり私めがけて魔力弾を放った。避けきれずトカゲは床に落ちる。床に落ちたそれを拾い、ジャックがトカゲを睨む。

「情報収集をしたいなら、もっと気配を消してやるように。効果をあげると誰も破れないんですから、変な不精はしないこと。いいですね、リオさん?」

何故、バレているのか。

「案外良いですね。トカゲ型ですか。考えましたね。」

ニヤリと笑うジャックに恐怖を覚えて、魔法を解除した。


謹慎中は寮の部屋で料理をして食べている。

寮の食堂で、食材を売ってもらえないか交渉した結果少しだが売ってもらえた。後は、出入りの商人が来る時間帯を教えてもらい、購入した。

謹慎っていつまでだろう。

ジャックに、バレたあの日から姿を隠す魔法の効果をこれでもかと上げ、本館以外の建物を縦横無尽に探索した。

結果人に気づかれることはないが、魔生物局では魔生物に反応があった。怖くてそれ以来近づいてない。魔術式局では開発中の術式をみて興奮したり、魔道具局では魔道具実験の結果に一喜一憂した。騎士課の訓練は迫力があり、勉強になった。部屋で素振りしたり、身体の動かしかたを真似する。

仕入れた情報を報告書にする。

午前中は情報収集、午後からは報告書。夕方以降は裁縫をして過ごす。下着を買いに行けないので、こだわりにこだわって作ってみた。

結構、良い感じだ。ホールド力は下着専門店には負けるけど、可愛さや気分の上がり具合は断然こっちだ。

大きいサイズだと可愛い下着が少ないんだよね。何か地味だったり、趣味が合わなかったり、これでも大分増えてきてますよと店員さんに言われたことがある。

ここの世界ではどうかはわからないが。

一応、自分用とレイカ用を作ってある。シンプルなのがいいと言われたので、透けないように白で作った。

何着かホールド力をあげられるよう工夫して、作る。

魔力の形状変化を使って、レイカの胸を再現して試着を繰り返しているからサイズ感も大丈夫だと思う。

私が謹慎して一週間が経った。

部屋に何故か、レイカとジュリエットが来た。部屋に招いたら、玄関先でいいと断られた。

「お久しぶりです」

気軽に声をかけたら、レイカに怒られた。ぷんぷんしてる。美人は怒っても綺麗だな。

「謹慎は今日で終了ですわ。明日から出勤して下さい」

ジュリエットが説明する。

レイカがジャックに直談判したそうだ。

「へ、本館に一人で行ったんですか?」

「ジュリエットさんと一緒に」

「凄いです。レイカさん、ありがとうございます」

ふん、とそっぽを向くレイカに

「あ、そうだ。」

下着を入れた袋を持ってきて渡す。

「これ着けてみて下さいね」

「なんですか、これ」

とジュリエットが袋の中身を尋ねるとレイカがまさかと袋を開けた。

「わぁ、凄いですわね。」

感心するジュリエット。レイカは真っ赤になって涙目になった。

「また謹慎ですか」

「泣かせたものね、そうかもしれませんわ」

揶揄う私達に

「泣いてません!」

レイカが反論する。なんだろう、とても友達っぽい。

下着を袋にしまって、二人は戻っていった。

長かった謹慎生活は終了した。


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