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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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謹慎1

謹慎するように言われた。

「謹慎、か。」

寮の部屋で夕ご飯を食べながら、ぽつりと呟く。

確かにやり過ぎた。

私が悪い。自分の理論を押しつけた。

説明もすっ飛ばしていきなり魔法を一般人に向けて使う。

どう考えても駄目だ。

レイカに謝る事も出来なかった。

アランが終始睨んで、私が声を出すことを許さなかった。召喚課に戻ってきてからは、ニコルに、怒られてそのまま寮に帰された。

「どうしたら、よかったのかな」

レイカに自分で自分を傷つけてほしくなかった。

それでも他の方法があったはずだ。

あの場で、とった行動は間違いだったのか?

ゆっくりじっくり見守るべきだった?

少しだって傷ついてほしくなかった。

自分で自分を罰するのは苦しい。

「私の自己満足だったのかな。」

自分で自分を罰すると、最初の一瞬だけ、自分が悪いって、私がこうだったからあんなことになったんだって別の誰かになってちゃんと裁けている気になる。

でも、やればやる程苦しくて、自分で始めたことなのにどんどん惨めになって自己肯定感が失われていく。

「あれは、苦しいから、やっちゃだめだよ。」

私が不運体質だから、佐久田君が怪我したんだって自分を責めた。責めれば責めるほど、逃げている気持ちが強くなってさらに責める。あの行為に終わりなんてない。

ご飯の味がよくわからないまま、夕食を終えて、風呂にはいる。

どうすれば良かったのか、これからどうすれば良いのか、考え続けて、少しのぼせた。

「これくらいしか、思いつかないや」

お風呂からあがり、机に向かう。

便箋を出して、レイカへ宛てた手紙を書く。

封筒に入れ、魔力人形に持たせる。

そっと寮の窓を開け、視覚を繋いだ魔力人形を走らせる。管理棟まで、人目につかないように姿を隠す魔法も付与している。

管理棟まで来た。

ドアは鍵が掛かっている。

ドアに隙間がないか、魔力人形を形状変化させる。薄い霧状にして通れないか試す。水が染み入るようにじわじわ魔力人形が扉の向こうへ入る。内から鍵を開け、手紙を拾いまた鍵をかける。

召喚課はまだ灯りがついていた。中には、ニコルとアランがいた。入り口と同じようにドアの隙間から入る。手紙はドアの下から通す。

同じ手順で、奥の部屋に入る。

部屋は暗かった。ベッド横の照明がついているので完全な暗闇ではないが。

クリスはベッドで就寝中だ。豪快な寝相を繰り広げていた。奥のレイカのスペースへ向かう。

レイカはベッドに横になっていた。眠っているようだ。

ベッドの横のナイトテーブルにそっと手紙を置く。任務完了だ。魔法を解除しようとしたら、

「リオさん?」

レイカの声がした。

レイカの方を向くと、寝ぼけまなこのレイカと目があった。正確にはあった気がしただけだ。魔力人形に顔はない。のっぺらぼうだ。

姿を隠す魔法も使っている。

レイカも魔力人形に気づいた訳ではなさそうだった。

身体を起こし、テーブルの上の照明をつける。手紙に気づいた。

手に取り、開け、中を確認する。

「手紙?」

しばらく無言で読んでいたレイカは、

「本当に、馬鹿ね。はぁ、まったくあの子は」

呆れたように笑い、涙を流した。

レイカの様子をぼんやり盗み見ていた私は慌てて魔法を解除した。


翌日、ニコルが部屋に来た。

「リオさんは謹慎って言葉の意味を辞書を引いて調べるといい」

笑顔で嫌味を言われた。

「はい、すみません」

「まさか、こんな問題児だとは思わなかった。」

「はい、自分でも吃驚しています」

「レイカが、謹慎はさせないでいいって言ってたけど、謹慎して下さい。」

「はい。あれは、レイカさんに謝りたかっただけですから」

はぁ、と盛大なため息をついてニコルは帰っていった。

謹慎なので、部屋から出ないで過ごす。

下着は買いに行きたかったし、ウォルター工房に頼んでいた物の進捗も聞きにいかないといけないし、でも仕方ない。自業自得だ。

闇属性特化魔法でも使って情報収集でもしよう。

トカゲ型に変化させ、まずは本館へ向かう。職員で溢れかえっていた。やっぱりあの日は人払いしたんだ。

レイカのため、かな?

ニコルに言われたなぁ、ジャックと同じ踏み込み過ぎだと。……同類かぁ。複雑な気持ちがする。

会議室を押さえろ、局長の許可は出たのか、と職員が慌てている。なんだか騒がしい。

窓のへりに身を隠し、観察する。

白衣をきた灰色の髪の男性。

年齢は五十代位だろうか?笑っているが、全く感情が読めない目をしている。

恰幅が良く、同じ白衣の集団を引き連れて歩いてくる。あるドアの前にくると、

「魔導局局長殿はいらっしゃるかな?」

部屋の前で待機している騎士に声をかけた。

「ただいま、来客中でございます」

「では、待たせてもらおう」

ドアの前で客が帰るのを待ち、帰ったらすぐさま部屋に入っていく。私も最後尾を歩いている白衣に続く。

壁を這い、天井付近から眺める。

白衣といえば、魔道具局か魔術局の人達だ。

「やぁ、魔生物局副局長殿。今日はどうされました?」

全然違った。魔生物局か。それならニコル先輩は何処にでも入り込めることになる。なんて人だ。


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