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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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召喚課二日目2

下着の趣味は後で聞き取ることにして、資料室に戻る。机を運び入れることも忘れていない。

「お待たせしました。」

「いいよ。レイカと仲良くなった?」

「そうだといいです。」

「じゃ、始めよう。昨日、リオさんが選んだ資料は良い選択だった。その次に読んで欲しい資料はこれ」

机に資料を乗せる。

「これは、」

転移者保護と支援の変遷に関する資料だった。

「昨日話した内容ではあるが、僕の言葉を鵜呑みにしないで資料確認をして欲しいからね。最終的に資料室の資料は全部読んでもらうけどね」

「ありがとうございます。」

「暫くは資料の読み込み。昼前には呼ぶから、ちゃんと切り上げること。これは、リオさんのこれからの課題。今までは止める人がいたかもしれないけど、そうじゃない時も自分でちゃんとしないと駄目だ。いいね」

「はい、ありがとうございます。ニコル先輩」

朝のひとときを資料を読んで過ごす。

ニコルはジュリエットから受け取った報告書を確認したり、レイカ達の様子をみに行ったり、忙しそうだった。

「リオさん、部屋に戻って」

「……は、はい。わかりました」

「どこまで読めた?」

「建国から50年の所までです」

「すぐ反応したってことはそこまで集中してなかったってことかな?読む速さや理解度に違いは?」

「速さは大分ゆっくりになりました。理解度に変化はないと思います。けど、読書メモの深度が浅い気がします。」

「というと?」

「読書メモは読書中の疑問を書き出してます。その疑問の数が減ってます。これは知識の深さに影響していくと思います」

「なるほど、理解しているが、あの状態よりは知識を深められていない。うーん、わかった。取り敢えず、冬の間は全体を把握することを優先して、春から深度をだそう。ミランダさんが付くんでしょ。それからでも遅くない」

「はい」

ミランダにストッパーを丸投げした発言に申し訳ない気持ちになる。

「人には得意不得意がある。自分の得意を活かせる環境、状況に持っていくことが大切だけど、今は、不利な環境、状況でもどこまで力を発揮出来るかの訓練をしていると考えて欲しい。僕の得意な状況は、調査対象から僕だけが嫌われている状態かな」

「何故、ですか?やり難いのでは?」

「いやいや、逆逆。人って意外と負の感情に振り回される生き物だから、僕だけを嫌い、周りは味方と思っている人は隙だらけだよ。悪口ってみんな大好きだし、チョロっと水を向けると喋る喋る。僕の悪口の中に言わなくてもいい情報がチラチラ混ざってて、もっとやれーって気持ちになる。ちょっと共感するだけで勝手に盛り上がる」

怖っ、元諜報部員怖。

真顔の私に、そんなに感心しないでよ、照れちゃうぜとか言える気持ちの強さに一抹の憧れを抱く。

すぐに考え直したけど。何か、兄貴に似てるな。

レイカ達三人と合流し、いつもの勉強の様子を観察する。教科書と実際の授業、レイカ達の反応。

レイカは日本語表現と、この世界の言語『テリンドング』とのニュアンスの違いに苦戦している。

アランはニコルの英語の発音と相性が悪いみたい。

そのフォローをしたり、ちょっとしたニュアンスの違いを補ったりする。

そして、その躓いた箇所をメモする。

クリスは絵本を読んで言葉を覚える。殆どこちらで過ごしたクリスは英語よりテリンドングの方が馴染み深い。ただ、アランとレイカが日本語を話すので、日本語は少しは聞き取れるみたい。

アランはお母さんが日本人で、家では日本語と英語が飛び交っていたようだ。

「そろそろお昼にしよう。今日は、」

「ハンバーグ!!」

クリスは絵本を片付けながら、嬉しそうに鼻歌を歌っている。

アランが食堂へ食事を取りに行く。それについて行った。

空の鍋やパレットが乗る配膳台車を押す。

食堂までの道のりで、アランが宿舎の人達に頼られている事がわかった。

みんなアランに声をかける。

挨拶だったり、お礼だったり。色々だった。

「人気者ですね」

「頼みやすいんだろ。レイカは男を見たら直ぐ距離取るし、クリスは外に出られない。ニコルは管理棟に篭りっきり。ジュリエットさんは下働きの宿舎になんて立ち寄らない。ほら、俺しか居ないだろ」

どうということはないとアランは言ったが、

「それでも、声かけたいって思われてるのはアランがちゃんと人付き合いしてるからですよ」

凄い事だ。少し羨ましい。

「ふん」

「照れ屋か。」

「五月蝿い。……あのさ、リオさん、礼を言う。」

「急にどうしましたか?」

「レイカの事だ。昨日の昼は大分気が立ってた。リオさんの容姿を見てから少し変だった。」

苗字を聞いて様子が変になったと思ったが違うらしい。容姿か。思い至るのは、

「黒髪黒目だから?」

「それに、本物のお嬢様にみえた。異世界人って聞いてたから、俺達は自分達が保護された時のような、この世界に絶望した目の人間が来るんだと思ってた。だから、余計に何故という気持ちが強まったんだと思う。すまなかった。」

でも、それは。

「アラン」

絶望しないように守られていたからだ。

「レイカを許してくれて、ありがとう。それと、レイカが嬉しそうにしていた。それも、礼を言う」

「嬉しそうに、そうですか。良かったです。」

「あぁ、朝も本当に馬鹿とか言ってたが、口元が緩んでいた。」

「レイカさんにも聞きましたが、異世界人としか説明されていなかったのですか?説明不足では?」

「一ヶ月半前かな。説明の為にジャック様がきてた。でもリオさんの名前を聞く前にジャック様が急に呼び出され、慌ててニコルに説明役を引き継いだ。リオさんの魔法省入省の経緯の説明、諸事情により帰れないことの説明をして、ニコルも慌てて出掛けていった。」

不運は大分仕事をしたらしい。ん?でもちょっと変だな。ジャックは闇属性持ちだ。ニコルが違う?でも、その時点で好感度は特別なかった。

それに実験を再開した時も変だった。珍しい魔獣と遭遇した、ここまではいい。その後だ。雨は降り止まなかったし、臆病なはずの魔獣は逃げずにミラが毒を受けた。グラッドには何もなかったから安心していたが、振り返ると少しおかしい。

「リオさん、どうした。」

「あ、いえ。なんでもないです。」

後でジャックかニコルに相談しよう。

食堂で食事を受け取り、管理棟へ引き返す。

昼食後、お腹が落ち着いたクリスとアランは運動のため、部屋を出て行った。魔道具の保管庫に自転車やボールがあるからそれを使って遊びながら体を動かす。

「ニコル先輩、すみません。ジャック様と連絡って取れますか?少し相談があって。」

「?取れるけど、僕でよければ聞くよ?」

実は、と不運体質の話をした。

「一応聞いてたけど、ここまでとは。うん、ちょっと行ってくる」

ニコルはすぐに部屋を後にした。

「あれ?ニコルは?」

御手洗いから戻ってきたレイカは部屋に私しかいないことに首を傾げる。

休憩時間の今、ジュリエットは寮の食堂で昼食を取っている。管理棟の味は舌に合わないらしい。

「ジャック様へ連絡があって少し出ています。」

「ジャック様に、そう。いらっしゃるのかしら。」

「わからないです。」

ジャックの名前を聞いたレイカの雰囲気が変わった。そわそわしている。


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