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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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支度

王都の冬は意外と早く来る。

今日はミラと一緒に外套を買いに服屋を回っていた。

クラリスは大体ふわふわのケープ一択だった。

ミラはコートが好きらしいが、何故かさっきから取っては戻してを繰り返している。

私は、ニコルから制服のローブ以外に私服の外套は必要だと言われたので、探している。

「インバネスコートだ。これにしようかな、名探偵気分だね。あ、ポンチョだ、可愛い」

「リオ様、決まりましたか?」

「これとこれ、どっちが似合いますか?」

「好きな方を選ばないのですか?どちらもお似合いですけど」

「好きな物を着るより、似合っている物を着たい派なので。最終的に人に見てもらって決めます。」

「では、両方買うといいのでは?お金は安心してください。ジャック様から振り込まれたお金がありますので。それにコートは寒さが厳しい冬の日に、ポンチョは穏やかな冬の日に着ると良いですよ」

というとミラは私が何か言う前にコートとポンチョを取り、会計を済ませる。

自身も何点かクロークのような衣服を一緒に購入していた。

「コートはいいのですか?好きなのでは?」

「形は好きなのですが、動きに制限がつきそうなので見るだけです」

「動き易さは大切ですからね」

確かにここ数日間で、術式の効率化の勉強と服は動き易さが大切ということを身をもって体験している。

グラッドに見せてもらった術式の教科書が活きてる。

会計して店を出ると、ミラが当たり前のように持っている荷物に手を伸ばす。

「今日こそは、私が持ちます」

「構いませんが、これ以上増えると重いですよ」

「?まだ買うのですか?」

「リオ様、外套だけが冬服ではありません。流石に今の格好でコートを着ても寒いですよ」

「温度調整の術式もあるのに」

「あと、周りから浮きます」

「すいません。早く買いに行きましょう」

荷物を持ち、次の店へ向かう。色々買ったら本当に重くなった。私の手から荷物を取り上げたミラは何故か軽々と持っている。

「風属性が関係しますか?」

「えぇ、正解です」

適性がない私では活用出来ない代物だった。

買い物を終え、家に戻る。

お昼は屋台で買ったタコスっぽいものだ。

ミラ曰くそれ自体辛くなく、各自好みの辛味ソースを追加でかけて食べるそう。

そういえば、ウチにもあったな。

ミラが買ってきた辛味ソース。私は辛すぎて駄目だった。量を間違えたら大惨事になるレベルの辛さだ。

「いただきます」

味は見た目通りタコスだ。美味しい。

目の前であのソースを並々とかけるミラの姿に言葉を失う。理解が追いつかない。

「なんて顔してるんですか。リオ様」

「いやいや、それ大丈夫ですか?辛すぎませんか?ミラってそんなに辛いの好きでしたか?」

「これは年に一度食べたくなるくらいでそんなに好きというわけではありませんが、食べる時はこれくらい辛くして食べますよ。」

ぺろりと平気そうに食べたミラに驚きを隠せない。

「私の料理、辛味が足りませんよね。もっと辛くしますか?」

「いえ、別に辛いのが好きという訳ではないので、気にしないで下さい。リオ様の料理は十分美味しいです」

動揺を残したまま、昼食を終える。

「リオ様、少し宜しいですか?」

「はい、サイス領に戻る話ですよね」

「そうです。学園には他の学生が冬の試験と社交の為集まっています。学期が始まるのが、三日後です。ですので、私は三日後サイス領に戻ります。」

「はい。少し寂しいですね」

しんみりしてしまった私にミラは淡々と話す。

なんだろ、既視感が。

「リオ様はこれから寮生活に移行します。その準備とこの家をジャック様に返す必要がありますから、慌ただしく過ぎるので、寂しさを感じる暇はありませんよ。それに、」

「それに?」

「冬の終わりにまた迎えにきます。グラッド様との婚約を結ぶ為に一度サイス領にきていただいて、その時に正式に私が侍女として付きます」

「いいのですか?ミランダはミレニア様の侍女になりたいのではないですか?」

「いいえ、それは少し違います。ミレニア様の侍女になりたい訳ではなくて、ミレニア様の役に立ちたいだけといいますか。言葉にするのが難しいですね。」

「あ、あの。以前、ミランダが私に何になりたいではなくどうありたいのかと言ったこと覚えていますか?」

「?えぇ」

「私はお母さんが私の娘って凄いでしょって言ってくれるような人でいたいって決めました。だから、ミランダの気持ち、ちょっとだけ分かります。」

「リオ様」

「ミランダが一緒だと心強いですし、嬉しいです」

なんだか照れますねと笑うとミランダも照れたように微笑んだ。

やっぱり私はぼんやりしているのかもしれない。

翌日、寮の部屋を見に行った時そう思った。

ミランダがついてくれないと、大変だ。

「これは、ちょっと予想外でした」

片付け途中の部屋を見てため息をつく。ミラがニコルに詰め寄っていた。何やら小声で話している。

「ごめん、リオさん。最終確認してなかった私の責任です。一旦今日は戻って明日また」

「いえ、ニコル様。このまま部屋を片付けましょう。片付いてなかったのは、びっくりしましたがこのまま帰るのは時間が勿体ないです。」

私は部屋に入り、間取りを確認しながら一通り設備などを確認する。トイレ、お風呂場、台所は綺麗なままだ。ただベッド周りとクローゼット、机の上に他の所から放り込まれた不用品で乱雑な印象を受ける。

「分かりました。掃除道具を取ってきます」

ニコルがその場を離れる。

「ミラ、どう思いますか?」

「ニコル様が誰に頼んだかに寄りますが、嫌がらせでしょう。時期外れに入省するリオ様へか、ニコル様に対するものかは分かりませんが」

ミラの言葉に私は自分の思考に驚いた。

「私は不運が仕事したと思いました。今までずっと、私の行くお店だけ急遽休みとか私の椅子だけ壊れるとか私の鉢植えだけ虫の被害にあうとか山のようにあったので部屋がこの状態でもやっぱりって思ってしまいました。慣れすぎて、でもこれからは、不運のせいじゃなくてちゃんと原因を探っていかないといけないんですよね。なんだろ、やっと実感が湧いてきました。」

不運のせいにして深く考えるのをやめていた自分に気付く。そのほうが楽で精神的にも良かった。

でも、これからはそれでは駄目だ。

「リオ様、」

「ミラも手伝ってくださいね」

「はい」


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