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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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訓練

翌日、グラッド達を見送りその足で狩猟の依頼のやり直しをする。

アクセサリーを外さなかったので、特に何事もなく完了した。まぁ、ギルドの完了報告の窓口でまた揉めた。

ミラが「職員の怠慢ではなくて?現場長はいらっしゃらないのかしら」と圧をかけていた。

素早い兎を三羽、無傷で捕まえる新人冒険者は中々いないそうだ。しかも、見た目が貴族女性の冒険者なら尚更。

「まぁ、数日前に前例を作ったんですから、通達くらいしてるかと思ったんですが。」

「申し訳ありません。四日前に出現した魔獣騒動で、すっかり申し送りの内容がとんでまして。」

それを言われたら何も言えなくなり、報酬を受け取る。そして、また王都の外へ戻る。

戦闘訓練をするためだ。服を特別変えたりはしなかった。いつもの格好である必要があると言われた。

まず心掛けることは、絶対に無理をしない。

相手の力量を測り間違えないこと。

相手が強い場合は、躊躇わず逃げる。

復唱させられる。なんだろう、鬼教官臭がする。

運動能力も確認するため、ミラの作った魔力人形から逃げつつ魔力を操作して倒すように言われた。

四体の魔力人形はゆらゆら揺れながら、近づいてくる。それらから距離を取り、魔力を撃ち込む。

五発撃ち込んだが、一発しか当たらなかった。

体育の成績は球技が全滅だったから、座学や他で補っても可も不可もない成績だった。

その中で、陸上系は得意だった。クラリスの体で、走ったり跳んだりをしたことがなかったので動けるか不安だったが、思ったより上手く動けた。

魔力を撃ち込むより、少し近づき鞭のようにしならせて狙ってみた。

当たった。こちらの方が当てやすいかもしれない。

もう一体を狙う。当たった。

あと一体だ、あれ?いない。周囲を見回す。後方にむかって鞭を振り、振り返る。

「あ」

当たって、魔力人形が倒れる。まぐれだったけど。

「おお、お見事です。結構動けますね。射撃は苦手なようですが、練習すればするだけ上手くなるので要練習ですね。後は走れるので中近距離が向いてるかもしれませんね。」

「ミラはどんな風に戦うのですか?」

「近接戦闘が好きですが、状況によって変えます。ミゲルは中近距離、ミランダは近距離です。バランスが良いですね」

「おぅ、凄いです。向かって行く気持ちが強いのでしょうか」

「グラッド様は中遠距離が得意ですよ。リオ様は近距離目指します?」

「そこは、考えさせて下さい」

「冗談ですよ?」

冗談に聞こえなかったんですけど、と言うとさらっと流された。

続いて、ミラから逃げる練習をする。冒険者用の入り口まで逃げ切ること。

ありとあらゆる方法を用いて逃げて下さいと言われる。

「では、始めます。まずは二十秒数えます」

冒険者用の入り口までは距離があったが、全速力で走りつつ、姿を隠す魔法を使い逃げ切った。

次は十秒。

今度は最初から魔法を使い、走る。入り口まで後少しという所で、

「捕まえました」

肩を掴まれた。

次は十五秒。

十秒の時と同じく魔法を使い更に視界を奪う魔法も併発し、走る。ほぼ変わらない所で捕まった。

「ふむ、十五秒以上の時間を稼がないといけませんね。」

「ミラ、ちょっと休憩してもいいですか?」

「あぁ、失礼しました。どうぞ、息を整えて下さい」

「視界を奪いましたよね、何で逃げた方角がわかるんですか?」

「?簡単ですよ。逃げ方が単純だからです。リオ様は最短距離で逃げていますよね。それに走って逃げてる。」

「走らないと逃げ切れないじゃないですか」

ミラによるとそうではないらしい。

折角姿を隠しても、走ってしまえば足音や草を踏みしめる音が風魔法が使える人なら拾える。

「自分の得意な事を理解し、苦手は埋める。と生存率は上がります」

それから何度か繰り返しても、中々十五秒の壁は大きい。

「今日は、これで最後にしましょう。行きますよ」

私は姿を隠して、私の等身大魔力人形を三体作成する。一体目は最短距離を歩いて進む。二体目は遠回りで小走りに。三体目は王都の城壁目掛けてゆっくり進ませる。そして、私はその場を動かずに様子を見る。

数を数え終えたミラは、私の作った三体の魔力人形の進む方向に向かって凄い速さで近づく。

まずは最短距離を進む魔力人形に迫る。そのタイミングで私が視界を奪う魔法を使う。一体目の移動ルートを変更して、少し小走りに変える。

私はゆっくり城壁に向かい自身の影も消す。止まっている時は影にすら気づかれないが、動けば影は気づかれる。

ミラを見ながら、移動する。二体目の魔力人形は城壁についた。そこから少しスピードを上げる。

ミラは一体目に見えているように迫り、触る。

「魔力人形か、なるほど」

そしてミラは三体目の魔力人形の方角を向き、城壁方面へ走る。怖すぎる。視界奪ってますけど?

九歳のグラッドのトラウマになるのも頷ける。

二体目の遠回りルートはスピードを落とし、影を消す。私は三体目からは距離をとった位置で止まる、じっとミラの様子を伺う。ミラは迷わず魔力人形を捕まえる。

「これも魔力人形。うん、」

魔力人形を自分の前にもう一体作る。姿を隠す魔法も重ねる。そして、私は魔力人形の後ろでしゃがみ息を殺す。ミラの動きから探査系の魔法を使っていると推測できた。

それを防ぐための、魔力人形にプラスアルファ。

ミラは私の方を向いて近づく。そして、

「これも、ですか。どれだけ魔力人形を作っているのか。」

私の前の魔力人形を捕まえ、呟く。ミラは少しその場でじっとしている。

私は魔力人形が捕まった瞬間目を瞑っていた。

ガサリと音がして、目を開ける。ミラの姿が見えなくなった。物凄い速さで遠回りルートの魔力人形に迫る。

魔力人形をミラが触れる瞬間に状態変化させ、ミラの動きを止める。兎を捕まえた時と同じ手法だ。

「魔力量で押し切る」

立ち上がり、門へ全速力で向かい無事たどり着いた。

「やったー」

肩で息をしながら、全ての魔法を解く。全然息が整わない。

「お疲れ様です。リオ様」

「み、ミラ。は、速くないですか?さっきまで」

「リオ様、失礼します。無理して喋らないでいいですから」

ミラにお姫様抱っこをされる。有無を言わさず門を通り、街中もそのまま歩く。

「魔力を使いすぎです。膝が笑って歩けないんじゃないんですか?」

「はい。すいません。ミラから逃げ切る為に惜しむべきではないと思ったので」

「リオ様、ちょっと確認ですが。私を捕まえた時はどちらにいらっしゃいましたか?」

「城壁側で暫く立ち止まっていましたよね。その目の前にしゃがんでました」

「……」

「本当ですよ。何したかは秘密です」

「奥の手は持っていた方がいいですから、詳しくは聞きません。」

すれ違う人、人がこちらを不思議そうに見てくる。

恥ずかしいなぁ、早く家に帰りたいと思っていると

「リオ様、申し訳ありませんでした。」

と急にミラが謝罪した。

「この訓練でリオ様の認識を改めました。リオ様はもっと魔力を使って強引に進めてくるかと思っていたので、そう考えたことが申し訳なくて」

「えぇー?大分魔力量の多さで押し切った感がありますが」

「リオ様のはちゃんと戦術を考えて実行しようという気持ちを感じました。酷いのはミゲルとグラッド様の方でしたね。ミゲルは、瞬発力頼みで一気に門まで飛びました。グラッド様は最短距離で土と金属性の混ざったトンネルを作り、中にこれまた大量の魔力で作った魔力壁を何枚も張るという力技に出ましたよ」

だから、私も似たような事をするのではないかと思っていたと白状した。

「ミラ、ミゲルさんもグラッドも、ちゃんとありとあらゆる方法を理解した作戦だと思いますよ」

私は考えつかなかった。

「リオ様は真似しないでいいですから。こういう方法もある位に覚えていて下さい」


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