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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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不運実験5

ミラの様子を見に部屋へ行く。ゆっくりドアを開ける。まだ眠っているようだったので、ドアを閉める。

居間に戻り、自分の夕食を済ませる。

一人の食事は味気ないなぁとしみじみ思う。

王都の朝夕は冷える。テーブルに出してても傷まないとは思うけど、取り敢えず保管庫に入れておく。

水さしとコップ、それから冷やしていたゼリーを用意し、再度ミラの部屋を訪れる。

ナイトテーブルに水さしとコップ、ゼリーを置き、畳まれた服を片付けた。

そして、台所の片付けをして、お風呂に入る。

自分の部屋に戻ったら、ベッドに転がり手鏡に声をかけた。

『千加』

『はいはーい』

王都に着いた日に連絡を取ってから久しぶりの連絡だった。

『どうした?少し色々乱れてるね。心配、不安、良い事もあるか、照れ。ん?グラッド様と何かあった?』

『勝手に読むな。』

『毎度お馴染みの状態チェックっすよ。何があった?』

千加はいつもオーラで大体の事を把握する。それを口に出すのは私に対してだけだが、ほぼ無意識に読むから偶に別の人相手にやらかすことも多々あった。

『服に術式を仕込み終えて、』

冒険者ギルドに登録して、依頼をこなし初めてお金を稼いだ事。市場の相場調査が楽しかった事。不運体質の実験。その中で分かった事、初めて魔獣に遭遇した事。

『ミランダが私とグラッド、セシルを逃してその場に残った。グラッドは私達がいると戦闘になった時に足手まといになるからって』

『うん。それで』

『ミランダは無事、だった。その戦闘で毒を受けてしまったみたいで、今は安静にしてる。解毒できてるから問題無いって』

『理央、怖かったな』

『うん。……怖かった、ミランダに何かあったらと思うと怖くて。何も出来ない自分が悔しくて。』

『出来てた。理央はちゃんと出来てたよ。ちゃんとミランダさんの指示に従って逃げたことが正解。悔やむことではない。この場合の最悪は、逃げずにいること。指示に従わないこと。だよ。安心して、ね?』

『でも』

『無力感は拭えない?それは仕方ないかな。戦闘経験ゼロの女子高生に何ができるよ。出来る方が凄いわ。うーん理央が思う何かって何?ミランダさんを助けて戦うこと?』

何か、ってなんだろう。言葉にならない。

『実力的に出来ないことをやれればって後悔するのは違うよ。実力的に出来ることをやらなかったのなら、後悔すればいいし反省だってずっとしてたら良いよ。でも、今回は違うでしょ?』

『うん。』

『しかし、流石異世界ですな。冒険者ギルドに魔獣かぁ、神様がソワソワしてるよ。……あ、やべぇ、忘れてた。』

『千加?』

『理央、ごめん。言うのを忘れてた。』

『何?』

鏡の前で居住まいを正す千加に、何を言われるのか緊張しながら言葉を待つ。

『神様の依代を作って欲しくて。』

?何だって?

『千加、よりしろ?って何?』

『うん、言い方が悪かった。えっと、神様の入れ物、みたいな。』

こちらの世界に来た時にあちらとは世界の基準?の違いから存在維持に余計なエネルギーを使うので依代という入れ物に神様をいれて保護したいとのこと。

『いいけど、』

『良かったー。私の不器用加減では駄目だったらしくて却下貰ってたんだよ。半年以上時間貰ったのに前途多難だって泣きそうだった。あ大体20、30センチのぬいぐるみでお願いしたいです。』

不器用すぎて神様から却下をもらうって、どんなのを作ったのか。寸法を教えてもらい、メモする。人型のぬいぐるみを希望しているようだ。

『ぬいぐるみって市販のでは駄目なんだ?』

『そうなんだよ。我儘でしょ』

『見た目はどうしょうか?入れ物ってことは手足は動かせる方がいいのかな?』

『マジ出来るのありがとう、助かった。見た目は』

千加がイラストを見せる。神様の要求を全部のせしたイラストは、とても上手に描けていた。

『これ、千加の絵じゃないよね』

女の子の人形が描かれている。出来上がりのイメージがしやすく細部まで細かに描かれている。

『わかります?クラリスに描いてもらった。』

『……本当に、上手なんだ。知ってたけど、イラストもいけるとは思ってなかった』

『複雑そうだな。クラリスは今、美術部と園芸部に所属してる。週末は神社の隣の花屋でバイトしてる』

『そっか、母さん達は元気?』

『元気だよ。また、呼ぼうか?』

『ううん、今はまだ大丈夫。冬の終わりに報告があるから、その時はお願いします』

『婚約?おめでとう』

『勝手に読むな。ありがとう』

それからこの先の予定を話して通信を終えた。

ミラの事が気になって、中々寝付けなかった。そっと隣の部屋とベッドを行き来すること数回。夜も更けてきた時に、カタンと隣りの部屋から物音がした。

すぐさま隣りの部屋に向かう。

「ミラ、入ります」

一応声をかけて、ドアを開ける。

ベッドで体を起こしているミラがみえた。

「具合はどうですか?ご飯食べます?」

「リオ様は心配性です。夕食はそちらのゼリーだけで大丈夫です」

側により、顔色を確認する。

「毒を受けて治療をしたと聞きましたけど、状態が悪くなったらって思ったら不安で」

「セシルは何と?」

「解毒したから体に影響はないから安心して下さいって。安静にする必要があるから二、三日は様子を見にくる、消化のいい食事にしてって言ってました。疑うわけではないんですが、毒を受けたって聞くとどうしても心配で」

私の言葉を聞いたミラが納得したように頷いた。

「少し説明が足りませんでしたね。解毒には水属性特化魔法が必要でその治療を受けると完全に無毒化できます。ただ、反動で二、三日は怠さが残り身体を動かすのが辛い状態になります。眠気とかも強まります。だから安静にするだけなんです。毒を受けたダメージは残っていません。だから、安心して下さい。リオ様」

「よかった、なんだ私の取り越し苦労だったんですね」

「ふふふ、でも心配されるのは照れますが案外嬉しいものですね」

ミラと二人笑い合う。ゼリーの出来栄えを褒められた。

部屋を後にする時に、灯りを消すか確認するとやはりそのままでと返ってきた。この灯りの魔道具は加護で動くタイプだ。主ボタンを触れることで切り替えが出来るが、長時間使用の場合は合間合間でチャージ用ボタンに触れる必要がある。

魔道具のボタンは部屋の入り口にあった。私はチャージ用ボタンに触れてから部屋を出る。

魔道具の設計図の本を読んでも、理屈が全く理解できなかった。加護で動くってなんだ?という私の疑問に答えてくれる本ではなかった。

使ってはいるが、よくわかっていない。

魔法省でその辺りの研究資料があれば読んでみたいなと思いつく。

自室に戻り、ベッドに入る。神様の入れ物になるぬいぐるみの作成の手順を考えながら眠りについた。


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