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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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召喚5

「リストとかあれば、書き込みますよ?」

「また、ポケットから出したら笑うんでしょう?」

「そうですね。笑います」

ニコルが内ポケットから質問リストを取り出す。どれだけ収納できるのか。気になって仕方ない。

グラッドとミランダがニコルからそっと視線を外したのが面白かった。

リストには、年齢や家族構成、召喚時の周囲の状況など多岐にわたった質問が並んでいた。

「このリスト以外にも質問しても、構いませんか?」

ツッコミ所が沢山ある言動をしていた自覚はあるので、想定内の言葉だった。

「はい」

「リオさんは、どの程度クラリス様の記憶がありますか?入れ替わりの事案は、過去にも記録があり、記憶は体と精神の所有者の両方有するようですが、いかがですか?」

「そうですね、今のところ一番古い記憶は五歳頃まで確認できます。まだ上手く記憶を探れてないのでどこまで確認できるかわかりません。あと、意識しないとクラリス様の記憶は出てこないです。でも、無意識に認識している事もあります。ミランダさんの声も、目が覚める前に夢現で聞いた時にミランダだって思いましたし、さっきの魔紙だって、触ってたら自然に記憶が甦ったり。」

「リオさん自身の記憶との違いはどうですか?」

「クラリス様の記憶は感情が伴ってない記憶、記録の動画を観てる感じで、違和感があります。話した内容は、わかります。でも、どんな感情でどんな意図があってその発言に至ったのかが分からないので、彼女が本当はどう思ったかは分からないです」

「字も書けますか?」

「書けると思います。思い浮かんでいるので。こちらの文字で、記入しますか?」

「お願いします。…それと、あと一つ良いですか?転移者の事は何処から知った情報でしょうか?」

「あ、それは、」

「そちらの質問は、私が対応します。リオさんはリストの質問をお願いします」

グラッドがニコルにクラリスの趣味由来の情報である旨を伝えている内に、リストを埋めていく。

私と同様にクラリスも見ず知らずの土地で、混乱しているのかも知れないと思うと、同情を禁じ得ない。でも、近くにいたのが千加で良かった。彼女なら、不可思議な力で人を認識しているのですぐ、気付くはず。不思議耐性も凄くあるので、アンタ誰だよと詰め寄る可能性はあるが、任せられるので比較的安心だ。

不安があるとしたら、兄貴だ。

「はい、書きました」

リストを手渡すと、内容を確認したニコルから驚きの声がでた。

「リオさん、本当に17歳ですか?」

年齢を疑われた。

「はい」

クラリスは15歳だから、年齢不相応にみえたのかも知れないという私の安易な考えは、グラッドの言葉で打ち消された。

「ニコル様、どうかされたのですか?受け答えの印象から成人していて当然ではありませんか」

「グラッド様、リオさんの国では成人は20歳からです」

言葉を失ったグラッドは、私を驚愕の表情で見る。困惑しているのが手に取る様に分かる。年相応の顔も出来るんだなぁと微笑ましく思っていた。

今まで無言でやり取りを静観していたミランダが、「グラッド様」と嗜めるように囁く。

一瞬で、表情の読みにくい顔に戻す。

流石は次期伯爵だと感心した。

「えっと、家族構成が、父母と兄。召喚時の周囲の様子は、夕方人気の少ない校舎で、友人が一人近くにいた、ですか。」

更に細かい家族や友人との関係性を確認される。

家族仲は良好、両親は子供の自立や個性を大切にしてくれるタイプ。2人からたっぷり愛情を受けて育ったと思っている。兄は過保護ではないが若干愛情深い。兄としての使命感が強い。はっきり言ってシスコンだ。

友人の千加は、しっかり者で世話焼きだが、特殊な判断方法をしている為、理解していないと付き合うのは難しい。思った事ははっきり言葉にする、裏表がない性格。

「クラリスと最初に関わる可能性のある、友人の方に期待するしかないという所でしょうか」


『!!面白いオーラしてるね』

入学式で同じクラスになった千加は、開口一番そう言い次の瞬間、しまったという顔をした。あまりの珍しさについ声にしてしまったと後で聞いた。

好奇心と瞬発力もあるので、何とかなりそうではある。


「彼女は、不思議な出来事に耐性がありますし、面倒見がいいので安心して良いです。彼女の言葉なら、私の家族も納得すると思います。」

少し不安そうなグラッドを見て、はっきり言葉にする。

私の言葉に安心したようで、柔らかな微笑みを浮かべた。

そういえば彼は、サイス家の分家から本家に養子縁組で入った。生活環境が変化し、不安を覚える気持ちを知っているのかもしれない。

もっと安心して欲しくて、言葉を探す。が、急に目眩がして、頭を押さえる。

「リオさん?大丈夫ですか?…ミランダ、寝台へ運びます!準備を」

グラッドに返事をする前に、抱きかかえられた。間近にグラッドの顔がある。

「リオさん、大丈夫ですから。後の事は私達に任せて、ゆっくりお休みください」

私はぼんやりし出した意識の片隅で、本当に美形だなぁと的外れな感想を抱きながら、目を閉じた。

理央は2021年以前の女子高校生です。

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