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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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買い物

いざ買い物に行くぞと意気込んで出掛け、すぐに人混みに酔った。

今日は一人で、ミラ手製の観光地図を片手に買い物をするのだけど、まさかの人酔い。

不運体質もあって今まで不特定多数の集まるお祭りや初詣などのイベントを避けてきた。

人酔いするなんて思いもよらなかった。

地図に載っている市場から離れた所にある小広場、店舗通りと中央通りが交差している広場のベンチに座り、休憩がてら一人作戦会議を始める。

王都にきた初日は緊張してたから人酔いしてる余裕なんてなかったんだと気づく。こんなんばっかりだ。

ショルダーバッグからタンブラーをだして紅茶を飲む。美味しい。

秋も深まってきた王都の日中は涼しく過ごしやすい、朝夕は少し寒い位だ。サイス領ではまだまだ暑い。移動術式を使って時間をかけずに領地間を移動できるからこそ気温の変化を感じられる。

「さて、何処へ行こうか」

雑貨屋は初日に回ったし、屋台も一度はいった。生鮮品は、まだだ。やっぱり、気合を入れ直して行くか。

観光地図にはカフェ、アクセサリー、洋服の店の位置から薬屋、市場以外にも生鮮品を扱う店もある。

「この買い物の目的は相場の確認とお金を使う経験。であれば、市場での生鮮品の相場価格は必須。あとは、市場以外の生鮮品との質、値段、効率の比較。よし、行くか。」

気合を入れ直し、市場へ向かう。人酔いしつつも、野菜、肉、果物や乾物、調味料の価格をチェックしていく。

一通り確認して、メモ帳に記入する。

次は市場以外の店だ。

結論から言うと、新鮮さと価格は断然市場で買う方がお得だった。予想通りだ。

初めに休憩した広場に戻ってきて、再休憩をしている。メモ帳を見直しながら、これからの買い物について考える。

ただ、店での買い物は精神的に余裕が持ててゆっくり選べる。品質も一定で代々続くお店が殆ど。市場は近くの農家や猟師等から仕入れた流れの商人が多いため、コロコロ人が変わるらしい、品質もピンキリだそう。市場で比較的品質が一定の肉屋の奥さんが教えてくれた。夕方にはいつも売り切れて店じまいする先は客もわかっているそうで集中するのだと言う。

「ミラも言ってたな。質を問わなければ、遅くから行けば空いてるって」

地図に載っている生鮮品関係のお店は見てまわった。後は何処に行こうか。

薬屋も気になるし、カフェもアクセサリーも気になる。うーん、よし全部行こう。

相場調査とは別にまだお金を使ってない。

地図を見て、近くにある店へ向かう。

屋台で焼きそばっぽい物が売られていたから、想像はしていたけど、ここまで本格的なケーキと紅茶のセットの食品サンプルが店頭にあると転移者の存在を感じる。

「10アッズ、ですか」

市場で色々買って、10アッズだ。

生鮮品店だと厳選して買って10アッズ。

ケーキと紅茶セットで10アッズ。

「他のお店に行ってみよう」

薬屋、服屋を見て、桁が違うので早々に店を後にした。地図に載っているアクセサリーの店で最後だ。

少し離れた位置にあったので後回しにしていた。

職人工房の近くにある店舗だ。

「怪し」

壁一面に蔦がはっている。窓はカーテンがかかっていて店内を確認できない。

営業しているのかも怪しい。一応、開店中と札が掛かっている。ドアを開けて、店内を覗く。店内は外と違って明るく怪しさのかけらもなく、ガラスケースにアクセサリーが並んでいた。

「いらっしゃいませ」

若い女性の声に、ちょっと安堵して中に入る。

「ゆっくりごらん下さい」

アクセサリーの値段は薬、服の更に上をいっていた。

うん、買えねー。

やっぱりねぇと思いながらも店内を見て回る。店舗隅に古びたアクセサリーの台座だけを集めた籠が置いてある。

「あの、これは」

「アクセサリーの台座です。自作したい方に格安で販売しています。」

「自作する方」

「はい、この店は職人工房が近いですから、アクセサリーの職人見習いの方達が練習用に買っていくんです。」

「へぇ、なるほど」

籠の中にあった見慣れない台座が気になった。

「あの、この台座は何の台座ですか?」

「それは、タイタックピンです。タイをピンで留めるための男性向けのアクセサリーです」

あー、グラッドがスカーフタイとかネクタイとかを留めてるアレか。へぇ、そんな名前なんだ。

……人様に渡せるような技量があるわけないだろう。落ち着こうか、私。何、ふとグラッドにプレゼントしようかとか考えたのかな?私がプレゼントしたら不運がついてくるに決まってる。落ち着け、落ち着け。久しぶりの買い物でテンション上がってるだけだ。冷静になって、私。

「教えていただき、ありがとうございます」

何事もなかったように店を出て、屋台でクレープを買った。落ち着け、と心の中で何度も繰り返す。

広場のベンチに座り、クレープを食べながら紅茶を飲む。

自意識過剰な自分の行動を戒める。

そもそも自作の何かをもらってグラッドが喜ぶのか?生まれも育ちも良いとこの人だ。クラリスは美的感覚に優れてたから人への贈り物のセンスも文句なしだが、私は違う。プレゼントなんて家族以外から貰ったことなんてないから、全然わからない。

でも、自作はないのは何となくわかる。貰っても困るはず。私は多分困るよりちょろいから嬉しくなる。貰い慣れてない私を基準にしたら駄目だ。取り敢えず自作は駄目。不運がつく不安もある。

「よし、自作品は危険」

「何が危険なんです?」

独り言に返答があったことも驚きだが、それがいるはずのない人の声だったから余計驚いた。

「!!……グラッド、様。どう、どうして王都に」

「ふふ、用事がありまして。ここで貴女に会えるとは思いもしませんでした、リオさん」

顔をあげるとすぐ近くにいた。グラッドはセシルと一緒だった。

セシルは私と目が合うと、すぐに逸らした。

「隣に座ってもいいですか?」

「あ、はいどうぞ」

「それで、何が危険なんですか?」

恥ずかしくて口にできない。

えっとですねと歯切れが悪い私を、グラッドはニコニコと見てる。自作した物に不運がつくので、自作はできないって意味ですと、しどろもどろになりながら説明する。

さっきは不意打ちでドキドキしたけど、今度は久しぶりのグラッドにドキドキする。

そして、近い気がする。いや、嬉しいけど。

「ミラから実験のお誘いの手紙が届いていましたよ。」

?早くない?昨日の今日ですけど。


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