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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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王都3

道具の説明を受けた翌日。王都の外で、薬草採取を始めた。

薬草ククルポは傷薬、体力回復剤に使われる一般的な薬草で年中取れ、繁殖も早い。

ただ、毒草のマンタロと似てるのがネックだ。

マンタロは液が皮膚につくと被れる。手が被れている冒険者は新人である可能性が高いと言われるほど、こちらも一般的な毒草だ。

「葉が毛羽立ってない。裏は、よし。」

ミラから一通りの説明を受けて、早速自分で採取することになった。ミラは少し離れた所から見ている。

取り敢えず、10株採取することになった。

スコップで根から取る。土がついているほうが、質が下がらない。

注意点を心の中で繰り返しながら、丁寧に保存袋に入れていく。10株採取して、ミラへ近寄る。

「中々上手ですね。新人時代のミゲルより上手ですよ。土の加護属性持ちには敵いませんが、かなりの魔素の残存が期待できますね。」

「ギルドに持っていきますか?」

「はい、間違えずに採取できているので、依頼は完了でいいでしょう。……リオ様、少し宜しいですか?」

「はい、なんでしょう?」

「私は旦那様からリオ様の体質の事は聞きましたし、その体質の一旦を垣間見ました。そして、グラッド様との実験にも立ち合いました。」

真剣な眼差しで、告げられる。

「守り石のアクセサリーを外して本来の不運の程度を確認したいのです。」

「報告したことに差異はありません。」

「そのことを疑っているわけではありません。彼方の世界と此方の世界とで不運の質が同じなのかを確認したいのです」

「……今は、できません。」

「何故ですか?」

「私の体質の厄介な所は私が好意を抱く相手、しかも耐性のない相手に酷く作用することです。私はグラッドが好きです。……グラッドに何かある可能性があることは出来ません」

胸が痛い。階段から落ちた彼の姿が脳裏をよぎる。

あの時は気づかなかった。佐久田君のことが好きだったんだと、気づいた時には遅かった。

「わかりました。グラッド様が安全な状況を作れたら、協力していただけますか?」

「その時は、協力します」

「では、戻りましょうか」

冒険者ギルドに依頼達成の報告のため、向かう。

ギルドはやはり混雑していた。依頼完了の窓口で手続きを行う。ギルドカードと依頼の品を職員に提出して、これで完了。かと思ったら、

「申し訳ありません。少しお話を伺いたいのですが、お時間宜しいでしょうか?」

何故か3階の会議室に通された。

「ミラ様、お久しぶりにございます。」

壮年の厳つい男性が待っていた。

冒険者ギルドの現場長だと名乗った男性は、私の依頼達成に不正疑いがかかっていると告げた。

「?どういうことでしょうか?ミラの助言が不正になるということですか?」

「いえ、それは関係ありません。私達の行っている講習会に準じていると考えています。」

「では何が問題でしょう」

「今回納品していただいたククルポですが、魔素残存量が桁違いでして」

?魔素残存量が桁違い?

「凄く沢山の魔素が残ってたってことですか?」

嫌な予感がする。加護障害が関係しているのではと不安になる。

「はい、その通りです。新人冒険者の依頼でこんなに魔素残存しているククルポは不自然です。」

あれ?違う?

「新人冒険者以上のランクの者がククルポを採取したら私と同じ位の残存量になるんですか?」

「はい、ですからミラ様が依頼をこなしリオ様が完了の報告をしたのではないかと」

「へぇ、私がそのようなことをすると。わかりました、これから採取に行きましょうか」

現場長の発言にミラが心外と言わんばかりにあからさまに険のある言い方をした。

あ、相当怒ってる。

「ミラ様、」

「現場を見れば、疑惑は晴れますね。では、行きましょう。暗くなる前に」

現場長と窓口の職員が魔素残存量を計測する魔道具を持ち、一緒に外へ出る。

先程採取した場所へ戻る。

三人は私から距離をとり、採取の様子を見ている。

「ふぅ、採取に集中……、葉が毛羽立っている。違う。これは、大丈夫。」

ミラからの注意点を復唱しながら、採取をすすめる。

先程と同じ10株を採取して、三人の元へ戻った。

その場ですぐ魔素残存量を測定する。ギルドまで戻らなくていいんだと思ったが、口にしなかった。

「現場長、先程と同じ残存量です」

「……リオ様、ミラ様、大変申し訳ございませんでした。」

「では、帰りましょう。」

ミラが謝罪する二人を見ながら悪どく口元を歪めて笑った。ミゲルを演じてる時とそっくりだった。

ミラという設定に沿ってるのか、ミランダの素なのか、判別はつかなかった。

ギルドで報酬を受け取り、家路につく。

「ミラ、あのどうして私の採取したククルポは魔素残存量が他の新人冒険者と違うのですか?」

ミラの注意点に沿って採取したはずが、不正を疑われた。何か明確な違いがあるのだろう。

「魔力を薄く纏うように意識するようにと教えましたよね。アレです。まさか、現場長ともあろう人が思い至らなかったとは。」

予想外です。と言うミラに、その場で採取手順の説明をしたら良かったのではと尋ねると、キョトンとした表情になった。

「自身の手の内を他人に教えてどうするのですか?」

冒険者は個人事業主で、依頼達成のためのノウハウは企業秘密ということかと一人で納得する。

家に戻り、居間のテーブルに本日の報酬を出すように言われた。

200アッズ、確かギルドカードに入金もできるって言ってたけど、ミラが現金でしかも硬貨は各種銅貨を混ぜてと指定していた。

一瞬嫌がらせかと思ったのは内緒にしておこう。

「リオ様はこちらの世界にきてから、貨幣に触れる機会がなかったと思い、現金で用意させました。」

嫌がらせじゃなかった。たしかに、屋台でミラから渡されたお金で払っただけだ。

「知識はあるかと、思います。クラリス様は収穫祭の時期は毎年街にでて、買い物を楽しまれていましたので。」

「はい、ほぼ一人で出歩いてましたよね。隠れた位置から見守ってたかもですけど」

「はい、それでリオ様には王都の物の相場を知ってもらうために買い物をしていただこうかと思います。」

「買い物ですか。確かに必要な気がします。」

「明日は買い物をして、その次は狩猟の手解きをしたいですね」

「狩猟、あの、解体の方法とかですか?」

「いえ、知りたいなら教えますが、苦手な人も多いので解体はギルドがやってます。あと、質が下がる可能性もあるので絶対やらないといけない訳ではないです。私が教えるのは獲物の選定と捕獲の方法、魔力の使い方です。」

どうやら、狩猟にも魔力は必須なようだ。

「また、不正疑惑が湧くんじゃないですか?」

「魔力の使える冒険者はどうせ遅かれ早かれ気づくことなので、大丈夫です。流石に今回現場長が実際確認しているんですから。それにリオ様は魔力の扱いがお上手でいらっしゃるので教えていて楽しいんです。慣れてくると無意識に纏えるようになるので、服に仕込んだ術式が不意打ちにも対応してくれます。」

ミラから採取時に言われた『魔力を纏う』は鍛錬が必要だった。慣れないと魔力消費が大きく、すぐ疲れてしまう。

「これ結構大変ですね。」

「出来るだけ最小限の魔力で運用できると、長時間戦闘も楽になります」

「どこまで鍛える気ですか」

「武術の心得は」

「ないです」

「そうですか、残念です」

全然残念そうではない顔で言われても。

でも、グラッドの側にいたいのなら魔力の扱いに長けてないと駄目だ。戦闘技術だって磨けるなら磨かなくては。

「ミラ、空いた時間で構わないので戦闘についても教えて下さい」

お願いしますと頭を下げる。

ミラに「お願いの時はお礼と同じ礼の動作ですよ」とやり直しさせられる。

「あら、リオ様は本当にグラッド様が好きですね。サイス領はリオ様の後ろ盾で、更に言えばこの春にでもグラッド様の婚約者として領地内にではありますが知らされますし、別に戦闘経験や訓練はしなくても婚姻は確実です。今までの伯爵夫人も戦闘経験は問われていません。気概ですよ」

「それでも、いつ何が起こるか分からないです。魔障だって大体100年空くと言ってもまちまちですし、120年空いた時もあれば、50年で発生したこともあります。前回、前々回は80年くらいの空きがありましたが、いつ来るか分からないから出来ることはしたいです」

面と向かって婚約者内定貰ってると聞くと恥ずかしい。でも、それだから、こそだ。

「わかりました。明後日に基本的な立ち回りを教えます。」

やれやれと言いながらもミラは何処か嬉しそうだった。


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