王都1
驚く程に簡単にクラリスの留学が決まった。
そして、あれよあれよという間にジャックに連れられて王都へやってきた。
クラリスとしてだ。
侍従長ジョージ、侍女頭アンナ、セシル、料理長の協力があり、クラリスは療養と留学へ旅立った。
ジルは半泣きだったし、庭師のおじさん達も涙目だった。街を馬車で走っていると、クラリスの留学の話を聞きつけ街の人達が手を振って寂しがっていた。
人気が凄いことを実感する。
リオとしては一週間滞在して、クラリスと一緒に王都へ。ミランダはクラリスの生活が整うまで付き添うことになった。
馬車の中で、学園の最終試験を受けた。
召喚事件に巻き込まれて、学園への不信感から留学を決意した面もあり、それを理由に卒業の約束を取り付けたい。そのため学園卒業の資格を有していると知らしめる必要があるらしい。
筆記試験だったけど、難しいことはなく、あっさりと終わってしまった。実技は夏の終わりで審査は終わっているそう。
解答用紙をみたジャックが、卒業おめでとうと笑った。合格らしい。
そして、王都に着いたはいいんだけど、
「ジャック様、これからの予定は」
まだ聞いてないのだ。そのまま、魔法省に入るのだろうか?そういえば、グラッドにもきちんと挨拶できなかった。あの日から全然話せていない。
「特には決まっていないが、春の入省前だが、働くかい?それとも、ゆっくり王都を楽しんでもいい。好きにしてくれ。住まいは狭いが一軒家を用意している。」
「家、ですか?」
「ああ、その方が出入りしやすい。ミランダ嬢も動きやすいだろう?」
「お気遣いありがとうございます。」
「何かあれば、ニコルに連絡を入れるといい。基本的にあいつは召喚術式管理魔道具の監視と転移者の相談役で、暇を持て余してるからな」
仕事を振ってやれと意地の悪い笑顔になる。
ジャックに案内された家は王都の一般的な一軒家。
三角屋根の二階建てだった。二階にふた部屋、一階には居間、台所と浴室、トイレ。
やっぱり、柱に守り石がみえる。同じ色で揃えられている。サイス伯爵の屋敷は色とりどりの守り石だった。何か違いがあるのだろうか?
「何かわからないことはある?リオさん?」
「あ、この守り石なんですけど、色が揃っているんですけど、何か意味があるんですか?」
「……あー、値段が高いんだよ。揃ってる方がな。」
「値段」
「王都の中心部は、比較的裕福な人間が住んでるからな。まぁ、サイス領の領主は代々そこら辺拘らないからな」
ジャックは家の設備の説明を軽くして、帰っていった。
ミランダと荷物を部屋に運び、軽く掃除をして居間のテーブルの席に着き一息つく。
「リオ様、これからどう致しましょうか」
「買い物に行きましょう。食材とか生活必需品とか」
「そうですね。準備してきます」
そういうとミランダは部屋に戻っていった。
必要なものを指折り数え考えていると、ミランダが戻ってきた。侍女服ではない女性服を着たミランダを初めて見た。髪型も変えていて、つけ毛だろうか、髪の長さも違い、一瞬誰?と思ってしまった。
「では、行きましょうか。リオ様」
「ミランダのそういう格好初めてみました。」
「ミランダが王都にいるのを知られるのはあまり良くはありません。ミラとお呼び下さい。」
「今度は、ミラですか」
「はい、妹です」
「わかりました。ミラ」
ミラは架空の妹設定、変装用の名前だそうだ。
ミラと一緒に市場へと向かう。夕方だからだろうか、人が多い。とても活気があって、圧倒される。
動悸がして、少しだけ息苦しさを感じる。
胸の守り石を無意識に握った。
大丈夫、大丈夫と繰り返し、息を整える。
「凄いですね。人酔いしそうです」
声を振り絞った私にミラはいつもと変わらず淡々と告げる。
「生鮮品が並ぶとこはいつもこうですよ。リオ様、あちらから回りましょう。後から回るほうが時間的にも効率が良いです」
もっと遅い時間だと空いているそうだ。閉店ギリギリを狙うのがいいそうだ。質にこだわりがないなら。
ミラの後について行く。雑貨の露店が並ぶエリアだった。
「細かい生活用品が足りてませんでしたので、ここで揃えます。あと今日は外食にしましょう。美味しい物が沢山ありますので」
「はい、楽しみです」
露店を一つ一つ覗き、買い物をする。細かな買い物ばかりだったのだが結構、大荷物になっていた。だがミラは余裕そうな顔で持っている。私が持ちますと言っても全然聞いてくれない。
「意外と沢山の荷物になりましたね。あ、そうだ。リオ様、屋台で美味しい物を食べましょう。リオ様が選んでいいですよ」
夕暮れ時から夜へ変わっていた。街は街灯と露店の灯で明るい。
屋台のエリアに着くと、ミラが私にお金を渡してくれた。美味しそうな匂いでいっぱいだ。
串焼き、ガレット、フルーツの盛り合わせ、煮込み料理等等。焼きそばのような物もある。
「どれも美味しそうで、悩みます。うーん、すみません。これと、これください」
「二人分でお願いします」
串焼きと焼きそばっぽいものにした。
お金を払い、受け取る。
屋台が集まる場所の近くには、座って食べられる場所が設けられていた。
二人分は結構量があり、焼きそば(仮)はトレイに乗せてくれた。席までゆっくり意外と器用に運べた。
串焼きを頬張る。口の中に肉汁が溢れる。
「美味しいです」
無心で食べ、あっという間に平らげてしまった。
焼きそば(仮)は焼きそばの味とは違った味つけだったが、美味しかった。
「ごちそうさまでした」
トレイを屋台の人に返して、家路につく。
「明日から、どうしますか?魔法省に行きますか?」
「もう少し、王都を見て回りたいです。あ、あと洋服に術式を仕込まないといけないので、魔法省はミラがサイス領に戻ってから入省します」
「わかりました。大体二ヶ月ですが、共同生活を楽しみましょう」
「家事は当番制にしますか?私は一通りこなせますよ」
「では、料理はお願いします。洗濯は私が受け持ちます」
「料理、苦手なんですか?」
「料理に適性がないんですよ。」
へえ、意外だなぁと思いながら、その他の家事分担を決めていく。
家に着く頃には当番は決定していた。
優先するのは服に術式を仕込むこと。術式が仕込み終えたら、王都観光も可能になる。




