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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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異国からの客人4

翌日。十分に目が覚めてから、天蓋のカーテンを開ける。寝ぼけて墓穴を掘っては大変だと心に決めていた。

洋服を着替えて、洗面所で身支度を整える。

午後からはお茶会だけど、午前中はどうしようかなと考えながら、応接スペースへ移動した。

「おはようございます、リオ様」

朝食の準備が整っているということなので、朝食をとる。

「クラリス様がお好きな庭を散策したい」と告げるとジルの頬が赤くなった。

マジか、クラリスのこと好き過ぎやしませんか?

庭の散策許可は昨日で既に出ているとのこと。

ゆっくり朝食を食べて、庭の散策に出かける。

秋とはいえ日差しが強いので日傘をさす。

日傘無しで出歩ける喜びとは別に日傘の必要性は感じている。

暑い。急いで、術式に魔力を流す。……涼しい。

庭師のおじさん達が作業しているのを横目に、綺麗に造られた庭を歩く。

剪定され整えられた生垣も、花壇の花もクラリスの記憶通り、美しかった。

実際歩いてみて気づいたこともある。

庭自体がなんらかの術式になっている。

上から見ても多分わからない。

そう思ったのは花壇に使われているレンガに魔術文字を見つけたからだが、まぁそれさえもブラフかもしれない、考え過ぎて混乱する。これが目的かもとふと思った。

ひと時の散歩だったが、中々面白かった。

クラリスとのお茶会へ向かう。部屋へ案内される。

ドアを開けたミランダをみて、驚くふりをする。

「ミゲル、あ、失礼しました」

「リオ様、クラリス様がお待ちです。どうぞ。……ジル、すみませんが、」

部屋に通されたのは、私だけ。ジルは私のことを不安そうに見つめる。

ドアが閉まり、応接スペースのテーブルの席につく。

「はぁ」

「お疲れ様です。リオ様」

テーブルに突っ伏し、大きなため息をつく。

「ジルがクラリスを好き過ぎる。」

「使用人の間では有名な話です。力強く語られませんでしたか?」

お茶を差し出される。あ、私の好きな茶葉だ。

「気合で抑え込んでました。」

「ほう、それは成長しましたね。以前なら、クラリス様の淡い金色の髪が、なんたらと」

ミランダの感心した言葉に、記憶が蘇る。

クラリスのような金色の髪が可愛らしい令嬢の姿とリリアナの言葉。

『クラリス様の髪色に似ているでしょ。彼女に布を当ててクラリス様に似合うか考えましたの』

部下を紹介されたお茶会で一度だけ見たことのある令嬢。

「あー、今思い出したー。今更だよー」

「急にどうされたのですか?リオ様?」

「はぁ、前に捕縛された学生の行動履歴を確認した時に違和感というか、何か思い出せない感じ、ここまで出てるのにもどかしいことがありまして」

喉元を指差して話す。

「それが今でてきた、と」

「はい。今回の件に関係あるかも定かじゃないんですが、ミランダはクラリス様と似た髪色をした御令嬢を覚えていますか?ジュリエット・ベルナー様、ウパラ領パイライトの一般貴族です。一度だけお茶会で紹介されました。」

「クラリス様の服を選ぶ時に彼女に服を当てていると言われたあの彼女ですか?」

「はい。あの時、初めましてと挨拶したんですが、初めてじゃないんです。いや、言葉を交わしたのは初めてですけど、一年生の交流会で顔を合わせているんです。でも、その時は彼女は淡い茶色の髪をしていました。」

「挨拶はしていないんですよね、リオ様。何故、彼女だとお分かりになったのですか?」

「綺麗な紫の瞳をしていたんです。ウパラ領では紫の瞳は殊の外喜ばれるんだとか。それで、印象に残っていました。ウパラ領の学生が同学年に五人しかいないと言ってました。しかも三人はパイライトにいるって興奮気味に話していたのを覚えています。女性はリリアナ様とジュリエット様の二人だけ」

「なるほど。髪色ですか、染髪剤は高いですが、ないわけではありませんし」

「はい。そうなんですよ。ウパラやマウリッツではそこそこ流通してるので手に入ります。あと一つ気になるのはリストの中に彼女の名前があったんですけど、参加しているお茶会に違和感があって」

「違和感とは?」

「全部王都貴族とのお茶会だったんですよ。リリアナ様もいないし、若干家格が釣り合ってないというか、お友達ならあり得るお茶会ですけど、でも違和感が残るというか」

「偶にありますね。繋がりのみえないお茶会、念の為旦那様に報告しておきます。」

ミランダのいう通り、本人達にしかわからない繋がりで開かれたお茶会というのはある。

「うぅ、すみません。関係ないかもと伝えて下さい」

「はい。リオ様、あまり気になさらないでください。お菓子もどうぞ」

ジルの側では、うっかりが怖くて我慢していたお喋りを楽しみ、クラリスと話した内容を復習した。

クラリスが着ていた服も確認して、退室する。

客間に戻ると、ジルがそわそわしながら私を見てくる。目があったが、ジルは何も言わず何かに堪えているようだ。

クラリスのことを聞きたいけど、仕事中だ駄目だと葛藤しているのが手に取るようにわかる。

本来ならそれも抑えないといけないんだろうけど。

クラリスの情報を少し与えるようにと指示されているので、クラリスとのお茶会の様子を掻い摘んで教える。

「クラリス様が、私の故郷に凄く興味を示してくださって、嬉しかったわ。クラリス様は外国に興味がおありのようでした」

お茶会の途中で具合が悪くなって解散になったので心配ですと体調を慮る表情で呟く。

「故郷には滋養強壮にいい薬草もあって、調合が必要なのでもってこなかったんです。」

その日は夕食まで何も予定がなく、刺繍をして過ごす。久しぶりの刺繍に、緊張しながらも、集中できた。少し腕が鈍っていた。

今日の夕食もクラリスは欠席。

健康優良児だったクラリスも自身の体調の変化に気持ちが追いついていないようだとフレッドが言うと、

ジャックが、すかさず「リオの故郷には体調を整える薬がある」と伝える。

「ええ、個人の症状にあった調合をしてもらえます。ですが、取り寄せるのは」

「難しい、と。いや、そういう薬があるとわかっただけでいいよ」

療養と留学の両方で話を進めている。そのための会話だ。

この夕食の後から、一気に話を進める予定になっている。


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