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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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異国からの客人1

翌日から早速行動を開始する。

ミランダの誘導で屋敷を抜け出し、避難用の抜け道を通る。

避難用の抜け道までの道順は目隠しをしていたので、よくわからないが、あっという間にクロムから出た。

そこからは、北門まで遠回りをして向かう。

今日のミランダは男装をしている。

冒険者ってこんな感じなのかなとついチラチラと見てしまう。

「リオ様、慣れて下さい。王都からサイスまで一緒にきた設定なのですから」

昨日のうちに用意した馬が繋がれている場所まで、移動して、クロムに入る予定だ。

私は馬に乗れるのかが心配で仕方ないが、乗れなければそれはその時だと言われてからはちょっと気楽に状況を楽しんでいる。

なんといっても、日傘を差さなくても外を歩ける。

それだけで嬉しい。

「ありました。リオ様、準備はいいですか?」

ミランダの手を借りて、馬に乗る。荷車などを引く小柄な馬だったが、視線が高くなるのがこんなに気分が上がるとは思わなかった。

鞍に横乗りすると、ミランダが手綱を引き歩く。

荷物は馬にかけられている。

野営の道具やらなんやらちゃんと使用感がある。

「これ、私物ですか?ミランダ」

「リオ様、ミランダではありません。ミゲルです。」

確か双子の兄の名前だと説明された。左目を黒の眼帯で覆っている。似過ぎているため、よく間違えられるそうだ。

「この旅装はミゲルの私物ですか?」

「はい。リオ様」

声も低くて、本当に男性のようだ。

どこから出してるんだろう。

「私も気をつけないと。声でばれては大変ですね」

「あ、それは大丈夫だ。リオ様の素の声とクラリス様の声は別人に聞こえるから、そんなに気にしないでいい。」

え、そうなの?

「無表情も相まってバレません。カルセドニー子爵令嬢マリア様以外には」

ああ、やっぱり彼女にはバレるかー。要注意人物だ。

「リオ様、令嬢らしく日傘を差していた方がいい。」

「あ、はい。えっと、傘は」

「ほら」

「ありがとうございます」

ミゲルから傘を受け取り、差す。

それからしばらくして、クロムの北門に着いた。

北門では身分証の確認がある。

クラリスとして帰ってきた時は知らなかったが、馬車と御者の証書で確認したようだ。

身分証は肌身離さず持つようにとジャックから注意を受けている。一見してそれとわからないようにカモフラージュするのも流行っているようだ。

身分証は魔道具だ。門で認証する魔道具と合わせる。

魔道具は祈石と呼ばれる特殊の素材に術式を仕込み出来上がる。加護を持たない加護無しと呼ばれる人達のみが質の良い魔道具を作ることが出来る。

安い魔道具は加護持ちでもレベルの低い人達が作成している。

身分証は魔道具の中でも品質が良くないといけない。

街から出ないなら必要のない魔道具だけど、移動して生活する商人や冒険者にとって必須。値段は高い。

私の身分証はブレスレットになっている。

昨日の今日だが、早すぎないかと思ったが、以前の設定の身分証だ。門で認証するが、あちらで確認できるのは名前と身分だけだ。その他の細かい情報は見れないからこれでいいと説明を受けた。

街に入るための列に並ぶ。馬に乗っている人が少ない。チラチラと私達の方を窺う人達がいる。

冒険者らしき人達だ。

「ミゲルの知り合いがいたりするのかしら?」

「見たところいないな。」

「そう。馬から降りた方がいいかしら」

「いや、そのままでいい。」

列が思ったより早く進み、直ぐに順番がきた。

「身分証を」

ミゲルがカードタイプの身分証を提示する。

門番が私の方に挨拶の礼をして、身分証の提示を求める。馬に乗っているからか、日傘を差しているからか、少し恭しい態度をとる。

ブレスレットをしている腕をゆっくりだす。

認証の魔道具をブレスレットにくっつける。

スティック状の魔道具だった。

「どうぞ」

「ありがとう」

第一関門を突破した。

街に入り、領主の館を目指す。次の関門は南門だ。

だったのだが、

「あ、お久しぶりです。ミゲルさん」

南門の門番の青年が親しげに話しかけてきた。

「ああ、元気か?」

「勿論ですよー、あ、ミゲルさんの彼女ですか?」

私に気づいた門番の青年がニヤニヤ笑いながら揶揄うような声を出す。

「依頼者だ」

ミゲルは眉間に皺を寄せ、青年を睨む。

「へぇ、本当に?」

「本当だ」

それでも懲りずに揶揄おうとする青年に、早く身分証の確認をして、屋敷に先触れを出すよう要求する。

「分かりましたよ、そんなに怒らなくてもいいじゃないですかー。」

「お前、真面目に仕事しろ」

「ミゲルさんに心配されるなんて、俺嬉しいっす」

「ミゲルのお友達なの?」

「腐れ縁だ」

「子分です」

?子分?

「兄貴分だったのね、ミゲル。意外だわ」

「リオ様、間に受けるな」

ミゲルの視線が鋭くなる。青年ではなく、もう一人の門番をみている。

三人のやり取りを呆気に取られた様子で見ていたもう一人の門番が、慌てて認証の魔道具を持ってやってきた。

「失礼します」

確認が済むと、先触れを出すので、もう暫く門の待合室で待つようにと告げられる。

先んじて手紙などで、来訪の知らせを出しているとここはすんなり通れるようになっている。

急に決まったことなので、手紙なんてだしてないから仕方ない。

「リオ様、手を」

ミゲルに手を伸ばすと、馬から降ろされる。そして、手を引かれたまま、門の待合室に移動する。

馬は先に中に入れてくれるらしい。青年が浮き浮きしながら馬を預かって中に入っていくのを見送る。

「どういった知り合いか聞いても?」

「以前、魔植物の討伐の際に助けただけだ」

ミゲルは不機嫌そうな顔をする。

アレ?そういえばと疑問が浮かんだ。

「火と土の加護は」

「その他の支援も必要だからな」

ぶっきらぼうな物言い。ミランダとは別人だ。

「……もしかして、ミゲルは凄い冒険者なの?」

「勿論ですよ、お嬢さん!」

待合室に青年がお茶を持ってやってきた。

それからミゲルがどんなに凄い冒険者なのか、領主の館からの返答が返ってくるまで語って聞かせてくれた。

南門を抜けると、

「凄かったわね。」

先程の語りの感想をもらす。

「ところで、一級冒険者というランクはどの程度の位置にあるの?」

ミゲルははぁと大きなため息をつきつつも教えてくれた。

冒険者のランクは大きく五段階にわかれる。

新人、三級、二級、一級、特級。

その中でも上中下とランクがつく。

「二級の中までは、やり方次第では一般人でもいける。一級冒険者は戦闘能力がないとなれない領域だからな。」

魔獣を相手にしない、狩りの腕やその他の知識に優れる、依頼結果の質等の本人の工夫によりランクを上げることが出来ると追加で教えてくれる。

「本当に凄い冒険者だったのね。」

しみじみ呟く。青年が語ったのはミゲルのことだけではなかった。

クロムが誇る双子の現役一級冒険者、ミゲルとミランダ。

以前魔獣の話をした時に昔と言っていたのは嘘だったようだ。現役だったとは。

ミゲルは眉間の皺が深くなり、眼差しだけで人が殺せそうな凶悪な顔になっていた。青年には伝わっていなかったが。

「もうすぐ着く。準備はいいか?」

「はい」

気を引き締めていこう。最後の関門だ。


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