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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
47/605

選択3

それから、大きさの違う守り石のついたブレスレット、ミサンガ、イヤリング、指輪で効果の程を実験した。一応、日傘をさしてだ。

単体で使用できるのは、ペンダントとブレスレットだけで、イヤリングと指輪は両方身につけると効果があった。

ミサンガは単体でも使用できたが、ビーズ状に加工するのが難しいらしく、実験の最中に幾つかビーズが割れ、効果が失われた。

使われた石の大きさを知っているグラッドは、なるほどと実験結果に満足そうだった。

何故かミランダの眉間に皺が寄っていたが、聞きづらい雰囲気だったので流すことにする。

ミサンガ以外のアクセサリーを追加で貰い、過剰じゃないかと思ったが、嬉しそうに笑うグラッドに何も言えなかった。

上がった体温が下がりそうにない。

実験を終え、部屋に戻る。

グラッドにここに残ることを伝えると、

「これからも宜しくお願いします」

眩しい笑顔になる。やっぱり直視できなかった。

「加護障害をなんとかしようと決めた矢先に、」

解決してしまうなんて拍子抜けだ。私の呟きに

「リオさんなら直ぐに辿り着きそうなので、間に合って良かったです」

グラッドが苦笑いを浮かべる。

「ありがとうございます。グラッド様。」

「呼び捨てにして構いませんよ」

「流石にもう、見た目もクラリスではないので様付けしますよ。」

「そうですか、残念です。」

「リオ様、少し宜しいでしょうか」

「はい、なんでしょうか」

ミランダに呼び止められ、振り向くとさっきと同じく厳しい顔をしていた。何かしてしまったのだろうか?

「グラッド様は、長椅子に座ってゆるりとお過ごしください」

ミランダに連れられ、側務めのスペースへ移動した。

そして、ミランダが魔法を使う。

「防音の魔法をかけています。……リオ様、差し出口とは思いましたが、お心は言葉にされた方が宜しいかと。それと、リオ様の意向は旦那様から聞いております」

「ミランダ」

「リオ様の性格と状況的に今が、最適だと思われます。」

「性格と状況、ですか?」

「はい。状況的にまだ、クラリス様は療養しています。私達の中ではもうクラリス様が戻らないこと、リオ様として生きられるということは確定ですが、周りはそうではありません。今後はクラリス様の葬儀という『最後』まで、思っているよりも早く事が進むと思われます。ゆっくり、互いの気持ちを確かめ合う機会が限られるのです。」

真剣な表情のミランダに息を飲む。

「加護障害が問題でなくなった今、リオ様の後ろ盾はサイス領で決まりでしょう。そこで、領の為の活動がしたいならば、旦那様はグラッド様との婚約を考えておられます。リオ様はグラッド様の意志を確認して欲しいと言っていましたが、あのグラッド様です。クラリス様との婚約も視野に入れていた位です。婚約は確定です。そうなれば、リオ様の性格上」

「グラッドは私でいいのかなって思います。」

「はい、さらに領の為だから、召喚者だから、と深みに嵌ることは想像がつきます。グラッド様がリオ様がいいのだとおっしゃったとしても納得はできないでしょう。だから、今なのです」

「今、」

「何も決まっていない、グラッド様はリオ様の意向を知りません。今のうちにお二人の心の内を確かめ合うことが必要だと私は思います。」

「グラッドは知らないのですか?」

「はい、私が旦那様に話を聞きながら執務室へお送りした帰りに、玄関で外から戻られたグラッド様にお会いしました。」

「そうですか。わ、わかりました。が、頑張ります」

駄目だったら、別の道を探せばいいだけでございますとミランダに背を押される。魔法が解かれる。

私は、深呼吸をして、グラッドの元へ向かった。


「リオさん、どうかしたのですか?」

グラッドの前に立つ。

不思議そうに私を見上げるグラッドをじっと見つめ、意を決して口を開いた。

「グラッドに、謝らなくてはいけないことがあります。」

緊張のあまり、つい呼び捨てのままになった。

「はい、なんでしょうか?」

「塩味クッキーや馬に噛まれたり、不思議な体験をしたと言っていましたよね。それ、なんですが、私の不運体質が感染ったんだと思います。」

「何故、そう思うのですか?」

グラッドは私の手を取り、握る。震えていたのがバレていた様だ。その手の力強さに励まされるように続ける。

「私の加護障害は、闇属性加護を持たない人と親しくすると感染るんです。私が、より好感を持てば持つほど酷くなります。だから、ごめんなさい。それと、ペンダント本当にありがとうございます。加護障害が止まれば、グラッドが酷い目に遭わなくて済む。」

「リオさん、」

「私、グラッドが好きです。」

心臓の音が聞こえているんじゃないかと思うくらいドキドキしている。緊張のあまり、喉が渇く。

「リオさんは凄いですね。それに引き換え私はずるい。」

「グラッド?」

自嘲したグラッドは、私の手に口づける。

「私も、リオさんが好きです。私は、貴女の気持ちに気づいていました。でも、ずっと言えなかった。ごめんなさい」

衝撃の発言に、照れが吹き飛んだ。

「気づいて、た?」

「はい。貴女と初めて二人でお喋りした日、寮の部屋に戻った後、いつものように鉱石の反応を観察していました。私の部屋の守り石が少し反応がありました。それから、しばらくは似たような反応をしていた守り石がサイス領から学園に戻る頃には強い反応に変わっていました。加護障害の中には他者に影響を及ぼすものもあります。もしかしたら、貴女の気持ちではないかと気づいた時は嬉しかった。貴女が私のことを気にしているんだと、確証はないのに」

「グラッドは私のこと、妹とか年下みたいに思ってると思ってました」

「どうして?」

視線を上げたグラッドとまた目が合う。また舞い戻った照れと逃げたくなる気持ちを抑えて、話せば

「だって、クラリス様には同学年の友人と同じ感じで話すのに、なんか、私と話す時はお兄ちゃん然としているというか」

思いの外拗ねてる声がでた。クスリとグラッドが笑う。

「それは、……リオさんが可愛いなって、思ったのと、……言葉にすると恥ずかしいですね、後は、お兄さんがいらっしゃるので子どもっぽく見えないように、先輩然とした雰囲気を意識はしました。」

グラッドの頬が紅潮しているのに気づき、

「結構楽しんでましたよね」

ちょっとだけ心に余裕が戻ってきた。

「そうですね、楽しいです」

グラッドが長椅子から立ち上がり、私を抱きしめる。

一気に余裕は走り去っていった。

「最初はクラリスの外見なのに、こんなにも違うのかと驚きが強かった。でも、貴女の、知らない世界にきて不安なのに気丈に振る舞う姿や勉強熱心な所、趣味の刺繍を熱く語る所だったり、ちょっと無茶する所も心配ですけど、愛情深くて優しい貴女が好きです。リオさん?聞いてます?」

耳元で囁かれて、恥ずかしさが限界突破している。何故か小刻みに震え出した。

「そろそろ限界かと、グラッド様」

側務めのスペースから成り行きを見守っていたミランダの声が遠くに聞こえる。

「私はもう少し、このままでいたいですけど。いいですよね?リオさん」

いいか悪いかでいえば、いいのだが、色々限界なので離してほしいと返事も出来ずそのまま抱きしめられ続ける。

グラッドが髪の毛を指で梳く。

「癖毛ではなくなったのですね。指通りが滑らかで、気持ちいいです。リオさんも元々黒髪だったとおっしゃってましたが、近い髪色ですか?」

こくこくと頷く私の頭を撫で、頭、耳、頬、首に立て続けに口づける。

「ふにゃぁ」

変な声がでて、反射的にグラッドを押しのけた。

「可愛い声をもっと聞きたいですけど、この辺にしないとミランダに殴られますね。」

「は、恥ずかしいぃ。」

「不思議と雰囲気は伝わります。でも、表情が動かない所も好きですよ。」

「グラッドはずるいです。私の好きなとこ、ポンポン口にして。私も言いたいのに」

今、何を口走った?グラッドも私の言葉に驚いた顔をした。

グラッドの前だけど、一瞬で防音ドームを発動させ中で、のたうち回る。

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!

何言ってるの?!好きな所言いたいって、何!?

きゃああああー!うわぁあああー!


口に出せなかった感情を爆発させて、落ち着きを取り戻した。ドームを解除すると、グラッドはテーブル席に移動してミランダの淹れるお茶を飲んでいた。

グラッドがドームから出た私に気づき、手を振る。

「リオ様、私も流石に防音室に篭るとは思いませんでした。こちらでお茶でもいかがですか?」

ミランダが淡々と、でもどこか呆れているような声で呼びかける。

「うぅ、いただきます」

「では、私はもう戻ります。」

「私が、防音室に篭ったからですか」

「違いますよ。いてもいいのならずっと居たいです。ですが、流石に不審がられるので今日の所はこの辺で」

「わかりました」

「はい。今度、私の好きな所教えて下さいね」

「頑張ります」

頬を掠めるキスをして、グラッドは戻っていった。

勝てる気がしない。


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