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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
335/605

婚約者編 夏74

ミランダ達が次に挨拶に向かうのはアラバスター家だと言う。あの老女のいるテントだ。

「ミランダ。」

心配そうな私にミランダは微笑むと

「リオ様。わたくしなら大丈夫でございます。ここで頑張らないとナタリア様とリオ様、セシルにミゲルの手綱を握らなくてはいけなくなるのです。なんとしてでも無事に乗り越えてみせます」

結構酷いことを言った。

セシルとミランダは次の挨拶に向かった。

「ミランダが大丈夫というなら大丈夫なのでしょう。ほら座って。……魔力人形で追いかけないように」

グラッドは釘を刺す。危なかった。やりかけていた。

大人しく席に着いてミランダを見守る。

何やら老女の顔色が悪い。何をしたのだろうか。

「威圧とかやるな。流石ミランダだな」

ミゲルの呟きに全員の視線がミゲルに集中する。

「え、威圧?なんでわかるの?」

千加も困惑している。

「?あぁ、襟足に鳥肌が立ったからな。…大体あいつが威圧する時は離れていてもなんとなくわかる。」

「グラッドはわかりました?」

「いえ。自分に向けられたものじゃないからでしょうか」

「双子の不思議ですね」

セシルの祖母に向かって威圧とか普通やらないことをやる事態に不安を覚える。

「もぅミランダったら優しいんだから」

ナタリアが口を窄めて残念そうにいう。

その言葉にナタリアがやろうとしていることに気づいたフレッドとミレニアは苦笑いをする。

グラッドから

「アラバスターの恥につけ込む予定だったようです」

と小声で教えてもらう。

彼女が何かしてアラバスターの恥となったらそれを機に追い詰めて追い詰める気満々だったと。

それをミランダが未然に封じた。

手綱を握る為に必死だな。

心の中で応援を開始する。全力で応援だ!!

ミランダ達が主要賓客への挨拶を終えると、テントを訪れる人が増えた。

この後は二人の結婚を祝いながら来客同士交流を深める為の時間だ。

私達の身分が高いこと、ミレニアが身重であることもあり私達は移動せずに訪ねてくる方達と交流をもつ。

ひとしきり挨拶を終えると、親方とギルド長、一人の青年が私達のテントを訪れる。

「本日はおめでとうございます」

ナタリアとミゲルに挨拶をした三人は私達にも挨拶をする。

「エリック。お二人を紹介してくれないか?」

フレッドがそう促すと

「はい。こちらはウォルター工房の工房主のウォルター。そして、こちらがベルマス薬店の店主で冒険者のベルマス。二人共ミランダ様とは親しい間柄です。」

ギルド長は二人を紹介する。

「貴方がウォルター殿ですか。ようこそサイス領へ」

「お初にお目にかかります」

「リオさんもお世話になっているとか、」

「はい、お二人には贔屓にしていただいています」

「そして貴方が冒険者に評判の薬屋ですか。よく話は聞いております」

「こ、光栄です」

親方は私を見ると申し訳なさそうな表情をした。

「親方、どうしたのですか?」

親方に近づき話を聞く。

「リオ様のご依頼に応えられなくて申し訳なくて」

「いいのです。わたくしが親方の人気を読み違えていただけですもの。忙しいのでしょう?」

「はい。」

「人を増やしたと聞いたのだけど、不足があればいつでもおっしゃってね」

「お気遣いありがとうございます。モモ、あ、新しい従業員が慣れるまでは大変だろうと思いますがなんとか」

「そう。モモさんってどんな方なの?」

「優しい人ですよ。カウツが、張り切って面倒みているのでそんなに心配しないでください。」

「わかりました。様子をみながらまたお店に顔を出しますね」

「お待ちしております」

親方と話を終えるとギルド長がフレッドにレオナルドの研究の話をしているのが聴こえてきた。

「ようやくサイス領の冒険者ギルドとして独自の研究を発表出来そうです」

「それは良かった。エリックがギルド長を続けられるのもリオさんのおかげだしな」

「フレッド様!それは言わないでください」

楽しそうに揶揄っている。

「あの。グラッド様、リオ様。」

ベルマスは控えめに私達に声をかける。

「どうしましたか?」

「あの、僕では貴族になるミランダのことを助けてあげられないので。ミランダのこと、宜しくお願いします」

丁寧に礼をする彼に向かって笑みを浮かべる。

「冒険者の友人として助けられることはありますよ。ですが、お約束します。わたくしは主人としてミランダを守ります。お任せください」

「ミランダの友人からの頼みですからね。承りました」

ミランダの口から友人と言う言葉を聞いたのは二人いる。その内の一人が彼だ。

あのミランダが招待状を送るくらいの相手だ。かなり珍しい。しかも頼みがミランダのこととか!快諾するに決まっている。

三人がテントを出るとナタリアも挨拶回りに出掛ける。

「婚姻式って大変ですね。」

お茶を飲んでほっとひと息つく。

「貴方達の婚姻式のほうがもっと大変よ」

「宣誓は神殿でする。クロムを屋根なしの馬車で回る。夜会は三日連続である。あ、陛下も来るか」

指折り数えたフレッドの最後の言葉に絶句する。

「え、陛下も?」

「それはそうだよ。次期伯爵の結婚だからね」

「で、ですよね」

まだ先とはいえ、捌けるようにならないとと決意を固める。

「そういえばミランダの衣装とても素敵でしたね。あのベールは婚姻衣装に欠かせないのですか?」

「あのベールは、サイス領では珍しいわ」

「マウリッツの伝統的な婚姻衣装だからな」

ミゲルがそう言う。

「俺らは三歳まではマウリッツで育った。その時に見た伯爵の結婚式が強烈で忘れられなかったんだろう。ベールの出来が衣装の出来を左右するとまで言われるくらい大切な物だ。」

「なるほど」

「あれは旦那が外すものだからな、リオ様、ベールの中は覗くなよ?」

「な!!の、覗きません!」

危なかった、言われなかったら絶対覗いていた。

「でも教えていただきありがとうございます。」

「わたしもあんなドレス着てみたい」

キキの無邪気な声に

「ちっ。相手は誰だ?俺が実力をみてやろう」

ミゲルが舌打ちした。

「???」

「ミゲル。大人げないよ。キキにはまだ早いかなぁ」

「そうかな。ギルバート君から大きくなったら結婚しようって言われたよ?」

「ほぉ、あのクソガキいい度胸だな」

見ぬギルバート少年に同情する。

「ミゲル。キキそれで?何て答えたの?」

「んーその時好きだったら考えるって言った。そしたらギルバート、泣きながら帰っていった」

「ふ、よくやった。」

怖っ。隣りのテーブルの会話が怖い。

「なるほど。こういう時はこれが父親として普通の反応なのか」

フレッドの呟きにグラッドがすかさず「違います」と訂正していた。

父さんは、うん、泣いちゃうな。




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