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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
334/605

婚約者編 夏73

光の日は結婚式をする人が多い日だ。

アラバス家へ向かう馬車の中でソワソワするミレニアとグラッドを宥める。

フレッドはミレニアの様子を楽しそうに見ている。

「グラッド。落ち着いてください。」

珍しくグラッドに落ち着きがない。

専属筆頭と師匠が結婚するから?ミゲルが参列するから?

「珍しいこともあるものだね。リオさんが落ち着いててグラッドが浮き足だってるなんて」

「養父上。これは、不安で」

「不安?」

「ミゲルが参列するので、何かあるのではないかと」

ミランダの憂鬱と同じ理由だった。

「何かをチカが許しませんから安心してください。」

私が笑うとグラッドも肩の力を抜く。

胸の辺りを撫でて

「この辺りを不安が巡ってて何とも言い難い落ち着かない気持ちです」

今の状態を口にする。

「不安ですか。ミランダが冒険者の知り合いは薬屋の方とギルド長、ウォルター親方しか呼んでいないと言っていたので、乗り込んでくる馬鹿がいるかも?と考えたほうが同じ不安要素でもこっちのほうが楽ではありませんか?」

「確かにそうですね。ミゲルが相手だと予想がつきにくくてもこれなら予想がし易くて落ち着きます」

はぁと大きなため息をグラッドがつく。

「ふ、ミゲルは凄い男だね。グラッドとミランダを振り回すなんて中々できることではないよ。……リオさんと二人くらいではないかい?」

「フレッド様!揶揄わないでください」

馬車の中では終始賑やかに過ごした。

「旦那様、着きました」

アラバス家に到着し、馬車から降りる。もう既に大勢の客が集まっている。

お披露目式を兼ねた婚姻式は庭で行うようだが、屋敷の庭に面している広間やらお茶会室を開放して対応している。

確かにこの人数は憂鬱になるね。

目立つ所に楽器を演奏している人達もいて凄く大掛かりだ。

私達は庭の一角に設置されたテーブルに案内される。大きく豪奢なテントの中にあった。

なんだろう、このポールテントみたいなのに豪華な感じ。

そこにはナタリアとミゲルの姿があった。

ミゲルの側にはドレス姿の千加とキキがいる。

「本日はお招きいただきありがとうございます」

「伯爵様方お待ちしておりました。どうぞおかけになってくださいませ」

日本の披露宴でいう親族席なのだろうか。私達と噴水を挟んで向かい合う位置にも似たようなテントがある。そこのテーブルにはナタリアを睨む老女の姿がある。

恐らくあの人がセシルの祖母だろう。

「ナタリア。彼女がいるのは良いのか?馬鹿正直に招待状を出したのか?」

フレッドも同じことを考えたようだ。

「アラバスター家への招待状は出しましたわ。あちらで抑えてもらいます。何かあれば、アラバスターの恥ですもの。」

にこにこと言うナタリアを見て心の中でミランダを応援する。この日をなんとか乗り越えれば大丈夫だよ!

「フレッド様ミレニア様。ご挨拶が遅くなりました。俺の娘です」

ミゲルがフレッドとミレニアの前にキキを連れて行く。

「キキです。お、初にお目にかかります。伯爵様。奥様」

「ミゲルに似ているね。キキ君、今日は一緒にミランダの結婚を祝おうか」

「はい!」

「元気でよろしい。」

「可愛らしい娘さんね。ミゲルはどんなお父さんかしら」

「ミレニア様、それは」

「ミゲルはお家でごろごろ暇そうにしています」

キキの口からとんでもない言葉が飛び出した。千加とグラッドが肩を震わせて笑いを堪えている。

「でもお勉強を教えてくれます。肩車もしてくれるし、一緒にお散歩も行きます。冒険者ギルドには駄目って連れてってくれないけど毎日楽しいです」

「まあ。それは良いことを聞きました。安心しました」

「わたしはママみたいにバリバリ働く大人の女性になります!」

頬を染めてそう宣言するキキを

「こら。あっちでジュースでも飲んでろ」

ミゲルが引き摺り千加に渡す。

「ぶぅ」

「御前失礼致します。……ジュースは何を飲みましょうか。」

千加が一礼してキキを連れて行く。

「娘が失礼しました。あれの言うことは耳半分で聞いていて構いません。なんなら忘れてください」

眉間に皺を寄せてミゲルが言う。

「ミゲルに娘がいると聞いても信じられなかったが、実際会うと似ていて驚いた。楽しく過ごしているなら良かった」

「ありがとうございます。フレッド様」

私達が席に着くと、ナタリアが侍女達にお茶を運ばせる。

「もうしばらくごゆるりとお過ごしください」

ナタリアがテントから出て別の客人のほうへ向かう。

「ナタリアは楽しそうだな」

「生き生きしていますわね」

フレッドとミレニアの言葉に同意する。

「グラッド。落ち着きましたか?」

小声で問う。

「えぇ。キキの言葉に笑ってしまったからか、リオが面白い提案をするからかはわかりませんが、もう大丈夫です」

「もぅ」

しばらく歓談していると流れている音楽が変わった。

歓声が上がるとナタリアが戻ってきた。

ミゲル達と同じテーブルの席に着く。

噴水の前にはいつの間にか祭壇が用意されて、その前には神殿長が立っている。光の女神と闇の男神の像があった。

結婚は彼等から始まっている。そのため結婚式の際は二神に祈り宣誓する。

その言葉は自由だ。

「始まりましたね」

婚姻式が始まった。

ミランダの瞳と同色のドレスは驚くほど手が込んでいて、そしてミランダの凛とした雰囲気を表現していてとても美しかった。

表情は薄いレースのベールをしているので此方からは確認出来ない。

噴水の前まで来た二人は私達へ一礼し、反対側へも一礼する。

そして神殿長のほうへ向き直る。

「光と闇の夫婦神に夫婦となることを報告してください。」

神殿長の言葉にセシルが

「私セシル・アラバスはミランダを唯一の女性とし生涯をかけて守り支えることを宣言します」

次にミランダが

「わたくしミランダ・アラバスはセシルを唯一の男性とし、共に歳を重ねていくことを誓います」

思いを言葉にする。

「ではこちらに署名を」

神殿長が差し出した婚姻宣誓書に、二人が名前を書き込む。

「この日晴れて二人は夫婦となりました。二人の道行に祝福を」

神殿長の宣誓に盛大な拍手がおこる。

それからセシルとミランダの二人は親族や参列者の元を順に回り挨拶をしていく。

初めはナタリアとミゲルに、私達が同じテントなのは二人の主人だからだ。二人を立って迎える。

「母上」

「ミゲル」

「似合っている。良かったな」

ぶっきらぼうなミゲルの言葉にセシルが笑う。

「セシル。…任せたからな」

「はい。任されました」

「おめでとう。ほらミランダ。フレッド様達にも見せてあげなくてはね」

ナタリアに促され、私達に礼をする二人に感極まっている私は絶賛魔法展開中だ。

「二人ともおめでとう。この日を迎えられてとても嬉しく思っているよ」

「おめでとうセシル、ミランダ。わたくしも嬉しいわ」

「はい。ありがとうございます。旦那様、奥様」

ミランダの声が少し震えている。

「おめでとうございます。歓喜で言葉が出ないリオに代わって祝福を」

「リオ様らしいですね、ミランダ?」

「……」

「こちらも感極まってしまったようですので私が代わりにいただきましょう」

無言で互いをみつめる私達にグラッドとセシルが肩をすくめる。

「リオ様、」

「ぉぇぇぉぅ」

「クリスさんのようになっていますよ?」

「ミランダ、の、姿を、みたら、一気に、気持ちが、溢れて、きて、涙が、止まらなくて」

「ふふふ。魔法が大活躍ですね。」

ミランダが私の手を取る。

「リオ様。本日はわたくし達の婚姻式にきてくださりありがとうございます」

「ミランダ、とても、美しいです。」

ベールから透けて見える瞳は私と同じく潤んでいた。




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