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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
3/605

召喚2

震える手でカーテンを掴む。

恐る恐るカーテンを開けると、思いのほか眩しかった。室内の灯りの魔道具が、全てついているようだった。

クラリスの髪色が確認出来た。金色だった。

ベッドの近くには、誰もおらず、内心ほっとする。そっと、ベッドから降りる。近くには、ミランダが控えていると思ったからだ。

確か、この部屋は一つの部屋の中を壁で区切りスペースを分けている種類の作りになっていて奥にベッド、中央に応接のテーブル、が設置されている。

そこに、いるのかもしれない。

壁に沿って歩き、そっと、壁の向こう側を覗いてみる。

ミランダと、知らない男性。さっきは声がしなかったから、いるとは思わなかったけど、グラッドがいた。

記憶を見た時の印象より、実際見たグラッドはより美形だった。白いシャツにスカーフタイ、濃いめの茶色のスーツが同色の髪色と合っていて、落ち着いた雰囲気を強調している。余程、まじまじと見ていたのだろうか、こちらに気づいた彼と目が合った。瞳はエメラルドグリーンだ。

グラッドが、ミランダに声をかけた。ミランダは、無表情で振り向くと、私の方に近づいてきた。

短い黒髪に水色の瞳。無表情と黒いシャツとスカート、黒タイツに白いエプロン、侍女の制服とのギャップが凄い。

「失礼致します。お嬢様、お洋服を整えてもよろしいでしょうか?」

「…えぇ」

言葉少なに答える。背中を嫌な汗が伝う。

私とミランダは、彼等から見えない位置に移動して、服を整えた。その間、二人の間に会話はない。

ミランダが、クラリスの事をお嬢様と呼んだことは、今まで一度もなかった。それなのに、今、その言葉を口にするということは。

恐らく、何かが起きてクラリスがクラリスでないことを知っているのではないかという考えが浮かんだ。

「お嬢様、こちらを」

ミランダが差し出したのは、部屋履きだった。

「ありがとう」

私は動揺を隠す様に、努めて優雅に見えるようそれに、足を入れた。そして、ミランダを伴い、二人の元へ向かう。

グラッドと一緒にいる男性は、少し年上の人だった。彼は私を見ると、椅子から立ち上がる。サラサラとした赤銅色の髪に、にこにこと人好きのしそうな表情、小柄で、白衣を着ている。

「初めまして、私はニコル・トライラト。魔法省魔導局召喚課に所属しています。…緊張しないでください。異世界からきたお嬢さん」

ニコルと名乗った男性は、いきなり衝撃的な発言をした。

異世界からきたお嬢さん。

「あ、それとも男性でしたか?それは、失礼しました。」

初対面で揺さぶりをかける理由はなんだろうか。

言葉からは悪意は感じない。これは、好奇心かな。ならば。

「ニコル様、いくらなんでも早急すぎます。もう少し、言葉を選んで下さい」

グラッドがニコルを制する。ミランダは、ニコルを無視して、

「お嬢様、こちらにお座り下さい」

椅子を引いてくれた。お礼をいい、ニコルとグラッドの向かいの席に座ると、ミランダは、側務め用のスペースに下がる。少しするとお茶やお菓子をカートに乗せて運んできた。お茶を淹れた後は、グラッドの側に控える。

彼女が淹れたお茶を飲み一息ついたところで、ニコルの発言についての疑問を口にする。クラリスの様にとはいかないが、ゆっくり貴族然として見えるように。

「ニコル様は、何故わたくしが異世界からきたとおっしゃられるのですか?」

「あぁ、それは、召喚術式が発動した形跡があるからです。」

ニコルは白衣のポケットから、一枚の紙を取り出して、テーブルに広げる。

「私共、召喚課は国内全域に渡って召喚術式の使用の監視を第一としています。国のどこで発動しても、正確に発信源を突き止めることができます。そして、今回この学園内で、召喚術式が発動した。これが、その術式の内容です。」

円の中に幾重にも術式が織り込まれた魔法陣が、そこには描かれていた。

「対象者は、クラリス・サイス。召喚要求設定は、正反対の人物。あとは、悪戯もいいとこと言っていいレベルの内容です。…正直、発動したのが奇跡としか言いようがない。」

「どうして、奇跡なのですか?術式に魔力を通せば、発動するではありませんか」

私が指摘すると、ニコルは少し驚いた顔をした。でも、すぐに戻ってしまったけど。

「召喚術式は、召喚したい相手の情報が曖昧では成功確率が低く、また、その条件に合う人物が多い場合も、膨大な魔力が必要になりますから、魔力が足りずに成功しません。」

「では、何故、発動したとニコル様は考えているのですか?」

「現場も確認しましたから、発動は疑いようもありません。対象者である、クラリス嬢も居なくなってはいない。なら、どの程度の発動になったのか。過去の事例を鑑みるに、精神の入れ替わりが起きたのではないかと思い至りました。…如何でしょう?」

精神の入れ替わり、確かにこの状況はそうなのだろう。もっと情報が欲しいとこだ。

「わたくし、…私は、どうなるのでしょうか?」

ニコルに向けていた視線を、逸らし伏せる。

「出来る限りのことを致しましょう。魔法省魔導局の威信にかけて、貴方を支援することを、お約束致します。お名前を伺っても?」


『カードを切る時は、言質を取ってから!はい、復唱』


取り敢えず、好奇心をくすぐることは成功したようだ。約束を反故にされた時は、散々ごねようと心に決めた。


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