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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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召喚20

それからミレニアとしばらくお喋りをした。その後、帰っていくミレニアを見送るまで私は荒ぶる感情に蓋をしてその場をやり過ごした。

「リオ様、」

「ミランダ、私、少し一人になりたいです。後で、質問には答えます。だから、一人にしてください」

私の変化に気づいたミランダに何も言わせず、部屋から出てもらう。出ていったミランダを確認して、用心のため魔法を使う。自分を囲むようにドームのような防音室を造る。中が見えないように影で覆う。その中で、体育座りで丸まる。

「あああああああああああ!!」

全力で叫ぶ。床を転がる。

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!!

自分の気持ちに今になって気づいた。

「なんで、気づくかな。馬鹿ではないだろうか。私は!」

帰りたいし、帰る気持ちに変わりはない。

それなのに好きとか不毛過ぎる。気づきたくなかった。

「グラッドが好きとか、私は馬鹿だろう。」

暫く気持ちの整理のため叫んだり、呻いたり、自問自答したりした。

「はぁ、気づくタイミングが兄妹一緒とか泣けてくる。嫌になるわ。」

兄貴の彼女の千紗さん…千加のお姉さんはモテる。

高校の同級生だったようだが、その時は友人関係だった。兄貴の卒業後、私と千加が友達になった事で再び顔を合わせる機会が増えた。千加と二人、兄貴の前で『また姉さんが告白された』『モテモテだね。何度目だよ』って話していたら、兄貴がいきなり膝から崩れ落ちた。どうしたとおろおろしていたら、いきなり駆け出していった。告白しに行ったらしい。

私達の話を聞いて自分の気持ちに気づいたと言っていた。それまでは、たまに発生する胸のもやもやの正体が分からずにいたと。

「そんなまさかと思ったよ?思った。そしたら私も一緒とか、どうせなら帰ってから気づきたかった、はあああ」

独り言で自らにツッコミ、気持ちにけりをつけようとする。が、中々上手くいかない。

「冷静になれれば、いいのかな。例えば、吊り橋効果だとか?もう何日も経ってるからな…優しくされて好きなるとかチョロいな…高尚な恋愛の動機が分からん。駄目だろ、なんで反論するかな。……召喚者だから、あー、これは駄目。凹むのが目に見えてる。いや、駄目ってなんだよ。諦める気ある?ないだろ、それこそ駄目だよ。もー、何やってるんだか」

召喚者のリスク管理の点から考えれば、こちらの世界との繋がりを強化した方が絶望の危険は少なくなる。恋愛、恩義、友情諸々の人間関係で縛ればいい。

そう考えると気分が一気に落ち込む。

「恋する人達は皆どうやって自分の感情に折り合いつけてるんだろ。凄すぎる。自覚するだけで、荒ぶるのに、忘れたり思い出にするとか、難しすぎないだろうか。」

精神的なダメージがあった分、頭の中は少しクリアになった。取り敢えず、私は少ない恋愛関係の情報を思い出しながら、気持ちの整理を続ける。

「好きをまだ思い出にできるほど器用ではない。が、帰る気持ちは変わらない。気持ちの優先順位は変わらない。から、この気持ちを否定しなくてもいい。けど、告白はしないしその先を考えない。」

ひと夏の恋的なアレだなとよぎったが無視する。余計なことは考えない、と言い聞かせる。

感情面の手綱を握るのが一番難しい。冷静さを欠いているときは尚更だ。

「グラッドが好きなのか、私。ちょっと前に決めた事と真逆になってる。まぁ、直ぐに無理だって気づいたけど…心許しすぎだよ。」

異世界生活に慣れたと思ったが、相当精神的負担が大きかった。無意識の内に緊張しているためか、心の余裕の許容量オーバーでグラッドやミランダに警戒心を振り分けられない。

寮ではあの後、ミランダやグラッドに気を許しすぎないように心の壁を築こうとした。結果、無理だった。

私の事を気にかけてくれる相手に心の壁なんて築けなかった。今までは、私に良くない感情を持つ相手だったから出来たことだったんだと気づいた。


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