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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
208/605

休暇編30

昨日は完全に気配を消していたミランダが起こしにきた。

「おはようございます、リオ様。グラッド様は、まだ寝てますね」

「おはよう、ミランダ」

ベッド横の水差しとタオルに気づいた

「具合が悪かったのですか?」

ミランダが心配そうにこちらをみる。

「特には問題なさそうでした。熱もなさそうですし、寝息も乱れてなかったので。ちょっと冷やして様子を見ただけです」

「そうでしたか。朝食を運んでもかまいませんか?」

「はい。お願いします」

ミランダが部屋を出る。

「グラッド?起きますか?」

抱き合ったままグラッドの頭を撫でる。

「ぅん」

起きないなこれは。帰りたくないのかな。五月蝿い人達いるって言ってたし。

「まぁ、婚約の挨拶で出掛けた話をしたらいいんですよ。それでも何か言うなら、心底驚いた顔で、結婚の挨拶されてないんですかぁ?そんな無礼なことできませんーって言ってやればいいんですよ。奥様の実家に行かれなかったのですか?相手方の実家に恨まれてますよ?って」

「ぅん。血筋の話は?」

あ、起きた。

「ミレニア様のお子様が産まれるのですから、今後の婚姻に関しては貴方の血筋は混ぜませんので安心してくださいっていっちゃいます?ミレニア様と要相談ですけど。」

「怒られるよ」

「でもそういうことですもの。血筋がどうって過去のことなんて誰も体験した人がいないのに。どっかで切れてるかも知れませんよ?わかってないんです。フロスト、ゾイレ、ロット、スピナも初代様の子どもがたてた家で、意外と初代様の特徴を引き継いでいるかもしれませんよ?肖像画もないですし」

「リオは初代様に似てる方がわかるんじゃないですか?」

「性質は領主の条件を満たした方が似ていると思います」

髪を指で梳かす。

「リオはどこまで知っているんですか」

「日記の初代様だけ。愛情深くて、でも冷徹な面もある。」

本当ですか?とグラッドがちらりと少し疑うような目でみる。

「ふふ、なんですか。その目。私がなんでも知ってるって思ってますよね?……じゃあ一緒に怒られます?」

「怒られる?」

「初代様にですよ」

「リオは怒られるの?」

「ええ。初代様は日記だから見るなって忠告を残してた。それを無視したので完全に怒られます。グラッドはわざわざ怒られにいかなくてもいいと思います」

「リオと一緒に怒られたいです」

「ふふふ。いいんですか?後悔しても知りませんよ」

グラッドの耳元で囁く。

お兄ちゃん、ごめん。

初代様の秘密を打ち明ける。グラッドは驚きで瞬きを繰り返していた。

「知らなかったほうがよかった?」

「いえ。リオが泣いていた理由がわかってよかった。養父上にも話していないのに、私に教えてくれて嬉しい。」

「内緒ですよ」

「一緒に怒られましょう。」

「うん。」

グラッドを抱き締める。

ミランダが朝食を持ってくるまで、抱き合っていた。

呆れられながら、朝食を食べて支度を整える。

昨日の件があるので帯刀を許された。

荷物の詰め込みを任せ、私達は屋敷周辺の散歩に出掛けた。

「山がこんなに近くにあるなんて、新鮮です」

ウラノ山脈を見上げ、伸びをする。

「海は近くにあったので馴染みがありますけど、山は行ったことがなくて」

「私は海が馴染みがありませんでした。スレートに行った時初めて見て驚きました」

お喋りを楽しんでいると

「グラッド、あれ」

ヘイルの方角から複数の騎影が此方に向かってくるのが見えた。

「まさか、」

「そのまさかでしょうね」

「遅すぎませんか?襲撃するなら昨日ですよね?!」

驚きで困惑する。

「証拠の隠蔽に時間をかけたかな?それにしても遅い。機を逸している今できることはくだらない言い訳か?弟妹だけに罪をかぶせにきたか?」

「それとも何か勝機がある?でもなぁ、あんな雑な計画しか立てられないのに?切り札がある?」

話していると私達の前で止まった。馬上にはアデルの姿があった。後ろで止まった馬上には冒険者らしき男達が十名。昨日屋敷にいた人達とは別の男達だ。昨日の男達とは実力が違う。

「アデル殿。証拠の隠蔽は完了したかい?」

「何のことでしょう。知りません。」

「では何故ここへ?」

「弟妹を返してもらいます」

アデルが剣を抜き、高く掲げ振り下ろす。すると、男達が一斉に此方へ襲いかかる。

すぐさまグラッドが投擲で応戦する。

「なっ!?」

瞬く間に男達は地に伏せた。ただ一人だけ投擲を剣で落としている男がいる。

「リオ。あれは私が相手をします。」

レベルが違うことは一目見て理解した。

グラッドは動揺するアデルを無視して、男目掛けて更に投擲の量を増やす。そして、男に向けて歩を進める。

「はい」

そっとアデルに向けて捕縛の為の闇属性魔法を使用し、声をかけ私へ視線を向けさせる。

「アデル様。何故此方に?本当に弟妹を助けるためですか?どんな理由があってこんなことをしているのですか?」

動揺から持ち直したアデルは

「貴女がグラッド様を騙しているから。私が助けて差し上げなくては」

馬の手綱を動かすも、馬はぴくりともしなかった。少し苦しそうに鳴き声をだすだけ。

「どうした!?くそ」

訝しげにアデルは馬からおりると私に向かって剣を振るう。

が、

「なんだ!?これは!化け物め」

動けなくなった。

前方を剣で切り裂く。捕縛陣への魔力供給が途絶えた。

何かの魔術だろうか。

抜刀して、相手をする。

昨日と特段彼女の技量に違いはなく、嘘偽りのない実力だったようだ。背は私より高く、手足も長い。体格も、鍛えているのがわかる。力もある程度はあるし、恵まれてはいるのだろう。

動きは昨日よりは悪くないと思う。ただ攻撃が単調だ。

剣を上に弾き、開いた腹に蹴りを入れる。

「ぐっ」

「魔法魔術なんでも使って攻めないと勝てませんよ」

私の言葉に逆上してアデルは魔力弾を放つ。

だが、その攻撃は魔力壁に阻まれ届くことはない。

「何故私がグラッドを騙していると思うのですか?」

刃を交えつつ、そう問うもアデルは憎悪の表情で私を睨みつけるだけで答えはなかった。

「勝つ為の算段をつけましたか?」

「黙れ!」

「はぁ、この程度の実力で何を成したいのです。」

「お前に答える義理はない!!」

「仕方ありません、か」

魔力弾を放ち牽制、魔力鞭で動きを止める。

「魔術を使わないなんて何考えているのですか?」

魔力量は子爵の血族なのだから、多いだろうに。もっと魔力量で押し切ろうとか思わないのか?

チラリとグラッドのほうを確認する。

グラッドの方も何か話しているようだ。

「くっ!」

アデルの頭上に魔力の塊を出現させる。

「な、なんだ。これは」

そこから液体状にした魔力の雫を落とす。

アデルの身体を魔力が濡らす。実際には濡れた感覚もないだろうけど。

そこから魔力固めをしていく。身体を固め、顔を固める。

口と鼻、耳は残した。一応ニビ元子爵のことがあるから油断はしない。

闇属性魔法のレベルを上げ、魔力固めを完璧にする。

「何が目的ですか?あんな強い方とお知り合いなら最初から屋敷に配備していればいいのに」

アデルは唇を震わせている。

「滑稽ですね。魔力を使った戦闘の技術もお粗末。剣の腕も並み。これで何を成すつもりでしたか?グラッドの婚約者?」

「アンタさえ居なければ!!」

以前にも言われたことのあるセリフ。でも。

「それ無意味ですよ。私が居ても居なくてもグラッドと先に恋仲になっていれば良かっただけ。それが出来ていないことは私には関係ありません。」

負けない。

「貴女如きがグラッドの婚約者になる?笑わせないでくださいよ。私がグラッドの婚約者です。」

断言する。

グラッドの方も片付いたようだ。男を捕縛している。

「リオ。彼等はウパラの冒険者のようです。」

「きな臭いです。グラッド。こっちも終わりました。グラッドの婚約者が目的っぽいです。」

こちらへ戻ってきたグラッドに音を立てて投げキッスをする。

「どうしました。とても可愛らしい」

「グラッドからの熱い口づけが欲しいなぁって思って」

アデルを指差す。グラッドが合点のいった顔をした。

「仕方ありませんね」

グラッドはわざとらしく音を立てて口づけをして、

「んん、はぁん、ちゅっん」

私も煽るように声を出す。

「今夜も寝かせませんから」

アデルに聞かせるように会話をする。

「や、やめろ!やめろ、グラッド様!騙されてはいけません!この女は、闇の怪物が化けた姿なのです!!」

錯乱したように騒ぐアデルの言葉に聞き覚えがありすぎた。

「嫌な予感がします」

「私もです」

うんざりとした表情で呟く。


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