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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
207/605

休暇編29

屋敷に戻ると、ティエラに呆れられた。

「鉱山の料理店で楽しんできたのはわかっていますわ」

ティエラが少し拗ねた様子で続ける。

「女将の料理は絶品ですもの。でも、量を少なくするので参加していただきたいです」

可愛らしい姿に笑みが零れる。

「ティエラ。最初からそのつもりだよ」

「ちゃんと余力は残しています」

「お、」

「お?」

「グラッド兄様とリオ、お姉様の為にわたくしが用意したんですもの。ちゃんと食べてもらわないと、困ります!」

お姉様。お姉様。お姉様。

頭の中で何度も反芻する。

いきなり目を閉じ天を仰いだ私にティエラが困惑する。

「お兄様、わたくし、何か変なことを言ってしまったのでしょうか」

「ああ、今とても喜んでいるから安心して。ティエラの言葉を噛み締めてる途中だから」

「え?」

「弟妹がいないから、ティエラのお姉様呼びに衝撃を受けているみたい」

グラッドに正確に把握されている私は、目を開け、ティエラに向き直る。その手を取り、

「もう一度、お願いしてもいいでしょうか」

おかわりを要求した。

真っ赤になったティエラに手を振り払われる。そして走り去られた。

「あ、やらかした」

「リオ。落ち着いて、ね?」

「はい」

反省しながら、食堂へ向かう。

食事は全てティエラが手配したようで、いろいろ考えられていた。グラッドの好きな食べ物から私の好みまで。どこで知ったのかわからないがその情報収集能力に脱帽だった。

夕食が終わり、私はフローラに夜の茶会に誘われた。

グラッドはオリバーやアシュレイと話をするようだ。

「リオさんは今日一日どうだったかしら」

「グラッドの思い出の場所が知れてよかったです。皆さんに愛されていることを知れて自分のことのように嬉しいです」

「そう。ありがとう」

「フローラ様、あの私。ティエラ様に嫌われてしまったみたいです。せっかく夕食会に誘ってくださったのに」

夕食会の最中、一度も私のほうをみてくれなかった。

「あら、あれは違うわ。照れているのよ。すごく楽しみにしていたのよ?お姉様ができるって」

「ほ、本当ですか?よ、よかったぁ。」

安堵する私にフローラは躊躇いつつも

「リオさんは、ミレニア様の妊娠をどう思っているのかしら」

そんな質問をした。

「とてもおめでたいことだと思っています。姉になるのを楽しみにしています」

「不安にはならなかった?」

「不安ですか?そうですね、婚約した当初、気になったのでミレニア様に尋ねたことがあります。その時に答えをいただけたので不安にはなりませんでした。」

フローラは驚く。

「そうだったの。グラッドはどうだった?」

「不安げでしたが、ミレニア様からの答えを話しました。そうしたら安心したようでした」

「ならよかったわ」

「フローラ様。私はグラッドの隣にずっと立ち支え続けます。努力を無駄になんてさせません。グラッドが笑っていられるように努力し続けます。」

私の宣誓にフローラは微笑む。

「よろしくお願いします」

二人でグラッドの話をしていると、ティエラがお菓子を持ってきた。

「ティエラ様」

「リオお姉様におすすめのお菓子をお持ちしましたの。どうぞ」

テーブルに皿を置く。素っ気ない気がする。

「ティエラも座りなさい。一緒にお話しなさったらいいわ」

「グラッド兄様の話?」

「ティエラ様の話を聞きたいです」

「わたくしの、別に話すことなんかないわ」

顔を背けたティエラをみて

「ティエラ様、ごめんなさい」

フローラは照れているだけだと言ったけど、やっぱり気持ち悪かったんだろうなと後悔した。

「お姉様って呼ばれて嬉しくなってしまって、挙動不審な言動をとって不快な思いをさせて申し訳ありませんでした」

謝罪する。

不審者に対する不快感を知っているのに、他者に同じ事をするなんて悔しい。

「お姉様、わ、わたくし、怒ってないわ。謝らないでよ」

「へ?だって、お話ししたくないって」

半泣きで顔を上げると慌てふためくティエラと目があった。

「わたくしの話なんて、しても面白くないから」

「そんなぁ」

「あーあ、ティエラがリオさん泣かせたぁ。グラッド、怒っちゃうかもなー」

フローラのなんとも棒読みなセリフに笑いかけた。

「お姉様がそういうなら」

ティエラが席に着き、今度は三人で話を再開する。

たっぷり話をして、部屋に戻るとグラッドが先に戻っていた。お風呂上がりなのか、頬が赤い。

「おかえり。盛り上がっていたようだけど」

「はい。ティエラ様の好きな食べ物から苦手な科目まで色々聞き出して、最終的に婚約者候補の話にまで発展しました」

「楽しそうでよかった」

笑った顔が少しだけ気になった。

「グラッド達は何を話したのですか?」

「リオの話。」

「照れます、具体的には、どんな?暴走癖がありますとか?」

「内緒」

グラッドはベッドに入って寝る体勢をとった。

「いいですよー、寝起きに聞き出します」

「黙秘できなさそうな時に」

「おやすみなさい。」

額に口づける。

それから私もお風呂に入って、就寝の準備を進める。

ナイトテーブルに水差しとタオルを用意して、ベッド横の照明用魔道具をつける。

他の照明をおとし、ベッドに入る。

グラッドの額にそっと触れた。

ちょっと熱っぽいかな?汗はかいてない。

寝息は乱れてないから、大丈夫だと思うけど寝巻きの前ボタンを外す。

水で少しだけ濡らしたタオルを額、首、鎖骨、手首へと当てる。

「リオぉ?」

「起こしてしまいましたか。すみません。」

「ううん、気持ちいい」

「ならよかった。おやすみグラッド」

「ぅん」

またすぐに寝息をたてる。

「大丈夫そうかな」

タオルをナイトテーブルに置いた。

昔の部屋ということは、フローラに怖い寝物語をされた部屋でもある。怖くないようにグラッドの頭を優しく撫でた。

ボタンをとめ直し、私もベッドに横になる。

照明はそのままでグラッドの寝顔を堪能する。

グラッドが寝返りをうって、私のほうを向くと、胸に顔が当たった。

あ、近すぎた。とベッドの端に寄ろうとしたら

「りおぉ」

グラッドが抱きついてきた。

この声は寝てる声だな。と判断して、グラッドの頭を撫で、そのまま私も眠りについた。

朝目が覚めると、眠った時と同じ体勢だった。

「グラッド。私の話ってどんな話をしたんですか?」

試しに聞いてみる。

眠っているようで返答はなかった。

まあいいかと、グラッドの頭を撫でていると

「ん、りぉ。すき」

告白が返ってきた。

「私も好きですよ」

昨日どんな話をしたのですか?と尋ねる。

「りぉ、かっこいぃから、がんばらなぃと」

「無理はダメですよ?」

「りぉに、いわれたくない」

「グラッドは頑張ってます。偉いです。よしよし」

「こどもあつかい」

「してませんよ。大切な人ですから、無理して辛くなって欲しくないんです」

「りお、ちゅうして」

寝起きのとろんとした目で上目遣いされたら、完全敗北だった。額にキスする。

「むぅ」

不満そうだ。頬にキスをする。

「りおのいじわる」

唇にキスをした。


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