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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
202/605

休暇編24

石垣から彫刻の話で盛り上がっている内にフォッグ子爵の屋敷に到着した。

フォッグ子爵邸は伯爵邸に感じた懐かしさのようなものは感じなかった。石造りの豪邸で、ヨーロッパ貴族の館と言われれば頷くような美しい彫刻も所々に施されている。

アーチが美しいなぁとみいってしまう。

「皆様、ようこそいらっしゃいました。」

私達を出迎えたのは次期フォッグ子爵のアデルだった。

騎士のような格好をしていて、今日もとても凛々しい。

「アデル殿。お久しぶりです。」

「グラッド様、リオ様。わたくしが案内致します。どうぞこちらへ」

アデルの案内で応接間へ移動する。

私達を案内するとアデルは仕事があるからと行ってしまった。

室内には好々爺然としたフォッグ子爵とアデルと似た雰囲気をもつ男性と女性がいた。

「フォッグ子爵。お久しぶりです。」

「グラッド様。ようこそおいでくださった。それにこの子達に会うのは久しぶりだろう。リオ様は初めてでしたな。私の息子と娘です。ほら、挨拶を」

子爵が促すと男性が一歩前にでる。

「ルーカス・フォッグです。グラッド様リオ様ご婚約おめでとうございます」

不躾な視線のルーカスに続き今度は

「レティシア・フォッグです。リオ様お会いできて嬉しく思います。ご婚約おめでとうございます」

レティシアが挨拶する。品定めされているように感じる。

「ご丁寧にありがとうございます。歓迎大変嬉しく思います」

ルーカスとレティシアからは歓迎の気持ちは微塵も感じないが、子爵の手前笑顔で挨拶を返す。

「ルーカス、レティシア、二人は戻りなさい。」

子爵がさっさと二人を下がらせる。

「グラッド様、リオ様。どうぞこちらへお掛けください」

部屋を出て行く二人は未だ私をじろじろ観察している。

扉が閉まると、子爵が二人の態度を謝罪する。

「グラッド様リオ様。愚息共が失礼いたしました。」

「子爵。ルーカスもレティシアも何故このようなことを?」

グラッドが問い詰めると子爵が躊躇いながら話し出す。

「アデルを次期子爵に指名した後からでございます。」

元々アデルはニビ子爵の息子を婿としてフォッグを継ぐはずだったが、あちらから断られ独身のまま子爵位を継ぐことになった。

「以前よりアデルをグラッド様の元に嫁がせようと画策していたルーカス達は今回の私の決定とグラッド様の婚約に不満で仕方ないのでしょう。全く申し訳ない」

「アデル殿の考えは」

「アデルは二人を諌めているが、内心何を考えているのかわからない娘で。それだからこそ子爵にむいていると判断したのですが」

眉間に皺を寄せる子爵に

「子爵はアデル様がグラッドの婚約者になったほうが良かったと思われていますか?」

尋ねる。

子爵が私の質問に驚くも首を横に振る。

「いいえ。私は微塵もそのようなことは考えたことはありません。子爵位を継がせる為に教育してきました」

「ではルーカス様達がグラッドとアデル様を結び付けたい理由はなんでしょうか。ルーカス様が跡を継ぎたいのでは?」

「子爵位を継ぐ教育をあの子は受けていません。二人共身体が弱く子爵位を継げません。」

「グラッドに執着する理由があるってことですか。グラッドは交流があるのですよね?その時に何かありました?」

「交流といってもアデル殿と手合わせをした位でしょうか。ルーカスもレティシアも、楽しみにしていたと言われた覚えがあります。……リオ。他家の問題に口を挟んではいけないよ」

「申し訳ございませんでした」

「いえいえ。リオ様、案じていただきありがとうございます」

それからしばらく話をして、お暇する。

応接間を出ようとした時、薄く纏った魔力が解除された。

「グラッド」

「わかっています。」

グラッドは子爵を振り返る。

「子爵。どういうつもりかお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

「さぁなんのことでしょう」

子爵は惚ける。

「何があっても後悔しないと言うのであれば、売られた喧嘩は買いましょう。そうでないのなら、首謀者を止めに走るといいですよ?」

ひんやりを通り越し凍えるような笑顔のグラッドの横で腕を回し辺りを見回す。使えそうなものはないかな?

応接間のドアが開き、ミランダが私に刀を手渡してくれた。

ベルトを手早く着けて、刀を抜く。

「グラッド、準備は整いました。いつでも行けます」

その様子に子爵は驚きを隠せないでいる。

「では失礼」

私達は廊下に出る。

グラッドはミランダに後方警戒を指示し、出口を目指し駆け足で進む。廊下で抜刀した男達が、行手を阻む。

「リオ様、行けますね」

「勿論です」

一人二人と武器を弾き足を掛け鳩尾に強打を与え、無力化していく。

「流石ミランダの弟子ですね。動きが滑らかで躊躇いがない。」

私が与えたダメージが少なかった相手にグラッドが追加で拳や蹴りを入れる。

応接間は玄関から比較的近くにあったのですぐに辿り着く。

そこには、ルーカスとレティシアがセシルにナイフを突きつけ、立っていた。

「ルーカス、レティシア。この騒動は君達が首謀者か?」

「グラッド様。婚約を考え直して下さい。貴方様の相手はアデル姉様しかおりません」

「ルーカス、レティシア。もう一度問う。この騒動は君達が首謀者か?」

グラッドの凍りつくような声にルーカスとレティシアは怯む。確かに背中はゾクゾクしているが、怯えるほどではないと思う。

これくらいで怯むようなら騒動なんて起こさなければいい。

私は背後のミランダの気配のほうが怖いのだ。

「グラッド様。どうかお考え直し」

「ミランダ。やれ」

「は」

グラッドの質問に答えなかったルーカスを無視して、グラッドはミランダに命じる。

目にも止まらぬ速さで二人を昏倒させ、セシルを救出した。

私はグラッドの背後を警戒する。

騒動を聞きつけアデルが姿を現した。刀を握る手に力を込める。

「グラッド様、リオ様!これは一体!」

こちらへ近づこうとするアデルに私は刀を向ける。

「止まって下さい」

「リオ様!何故このようなことを」

悪意はない。戸惑っているようにみえるが、警戒は解かない。

「アデル様は何故こちらに?」

「魔力が使えないので、術式を確認しに」

大体術式管理部屋は建物の奥の方にある。玄関先にいる理由が不明だ。行き方がここを通るしかないのなら仕方ないだろうが、それはない。子爵邸の術式管理室は玄関とは正反対の位置にある。玄関先を通る意味がない。

「フォッグの術式管理部屋はこちらにはありませんよ、アデル殿」

グラッドは振り向かずそう告げる。

アデルの顔が強張る。腰に下げた剣に手をかけた。

「フォッグ子爵には首謀者を止めに走れと伝えました。剣を抜けばどうなるか、わかっていますよね?」

ルーカスとレティシアを縛り上げたミランダが、馬車に二人を詰め込む。

「二人をどうする気ですか!?」

「おかしなことを言いますね?最初に喧嘩を売ってきたのは彼らで、それを見ぬふりしたのは子爵。計画を立てるように仕向けたのは次期子爵。謀反人の末路なんてみんな同じですよ。……リオ。行きますよ」

「はい」

グラッドが歩を進め、私はアデルから目を離さずに後退する。アデルは悔しそうに唇を噛むと、剣を抜いて私目掛けて振り下ろす。

その剣をいなし、脇腹に蹴りを入れた。

「ぐぅぁ」

転がるアデルに構わず、後退し、馬車に乗る。

「見事でした。リオ」

グラッドに褒められた。


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