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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編20

不動産の資料を読みながら、千加の話を聞く。

「四人のふわっとした相性から選ぶならこっちの仕事運良好だし、色んな要素絡むとこの人間関係良好の物件がいいと思う。日当たりはいいし、どっち選んでもいいよ」

「うん」

歯切れの悪い私に千加が仕方ないなぁと笑った。

「ミレニア様からあんまり私に頼りすぎないように言われてるかもだけど、こういうのは活用すればいいんだよ。私の得意分野なんだから。」

「チカ」

「リオ様が決断すべきことに口出すことはしない。ミランダ先輩もそうでしょ?助言だけ。大丈夫だよ、ちゃんと考えてる。なんでもかんでも私を頼れなんて言わない。」

「ありがとう、チカ」

物件を選び、給与、仕事内容、勤務体制についての書類を作成していく。そして教育についての話になる。

「四人が慣れるまで私が補助します。リオ様、言語教育の教科書って無いんですか?」

「あります。ミランダ」

「はい。お待ちください」

ミランダが私の鞄から文箱を持ってくる。その中には、召喚課で働きながら自分で作った言語教育の教科書と教育要綱が入っている。

「おお、流石リオ様っすね。」

コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

ミランダが対応する。イザベラの声がした。

「イザベラ?入ってきたらいいのに」

「いえ、これを渡すだけなので」

「あぁ完成したのですね。お疲れ様です。」

ミランダが二つの文箱を手に戻ってくる。

「イザベラでしたよね?どうしたのですか?」

「リオ様へこれを」

文箱を開けるとそこには本が入っている。

「え?」

和綴本だった。ページを捲り中を確認すると

「これは父さんの言語辞典?でもあれ写本?」

「はい。イザベラに写本を命じていました。原本は使用できないので」

もう一つの文箱に原本が入っているようだ。

「ありがとうございます。助かりました」

「いえ。報告を控えていた私を叱って構いませんよ」

「ううん。私の負担量を心配してくれたのだと思っています。ありがとうミランダ」

ミレニアの妊娠、ミゲルの子供の母親について、勉強にミレニアを狙った不審者情報、事業計画書に肌合わせ、人材確保。短い間に色々な事があった。

「リオ様は今余裕がないんすよ。なので、こういう時こそ仕事は割り振らなきゃ」

「チカ。うん、ありがとう」

「深呼吸、出来てないっしょ。」

そういえば、普段より少ないかも。思い返せば頭の中の整理が出来てない状態だった。

「そうだね。」

目を閉じて深呼吸を繰り返す。休暇期間に起こった出来事を振り返る。

その横でチカは写本を読み、ミランダは茶菓子を用意し始めた。

しばらく頭の中の整理を続け、目を開けるとお茶菓子を頬張る千加と目があった。

「チカ。仕事をお願いしたいです」

「『オッケー』任せなさい」

千加には転移者支援の仕事を依頼する。

ミランダには専属へ回してほしい仕事を話す。

「イザベラにはレイカさんへのお土産の手配をお願いしたいです。あと街の観光地図の作成依頼をしてください。ノヴァにはそのまま侍従長の下で侍従の仕事を勉強するように。ソフィアが作った下着の特許についても引き継ぐように伝えて下さい」

「はい。かしこまりました。」

「ニーナはミレニア様の様子を注視して、妊娠出産について学習するように伝えて下さい。」

「じゃあ私が持ち込んだ資料もニーナに渡して置きます。」

フレッド達に渡したという資料だろう。頷く。

「じゃあそろそろ通信の準備をしますか!」

「おお願いします」

「ふふふ忘れてたっしょ」

「むう」

図星だ、すっかり忘れてた。

千加はお茶を飲み干すと、立ち上がり部屋に備えられている鏡に近づく。ズボンのポケットから一枚の紙を取り出して、裏側に貼りつけた。

「よし。完了。」

私は鏡に近づく。鏡に映った私の姿が、ゆらりと揺れ別の場所を映す。そこには想像通り縛られた兄貴と両親の姿があった。

「うわ」

「久しぶり。母さん父さん元気だった?」

声をあげた千加とは逆に私は兄貴の姿に反応せず流す。

「元気だよ。理央は忙しいみたいだね。千加ちゃんから聞いた。頑張ってるね、偉いぞ。流石は私の娘だね」

母さんの言葉に一気に涙が込み上げてきた。慌てて目の下に魔法を使う。

「うん、えへへ。父さん、本ありがとう。嬉しかった。クラリス様にもお礼伝えてほしい。」

「わかった。伝えるよ」

以前よりは体調が戻ったような父さんの様子に安堵する。

「千加ちゃんからそっちの情報は伝え聞いてる。」

にやにやと楽しそうな母さんとは裏腹に父さんと兄貴の表情は暗い。

「グラッド君のご実家への挨拶かぁ、最大のイベントだね。私の時はお養母さん、吃驚しちゃって聡史さんを部屋の外に連れ出して本当にあの子なのって確認してたから」

あははと笑う母さんをみて、付き合っていた時のアルバムの写真を思い出した。ばぁちゃん、よく許可したなぁと思う。

「実家への挨拶で気をつけることは、」

「そうねぇ、誠意と将来計画?かな。私は聡史さんと幸せになるためにこんなこと考えてますってプレゼンを」

「要さん。流石にそれは一般的ではないと思います」

「えーそう?じゃあ聡史さんはグラッド君から婚約報告と結婚の挨拶を受けたでしょ、この前。あの時に聞きたかったこととかなかったの?」

??グラッドからの結婚の挨拶?婚約パーティーの日以外にも何かあったの?

すぐさま千加を振り返るとぺろりと舌をだす。

あいつ。

「要さんが、結構突っ込んで話を聞いたので特には」

「ならそれで。理央、ご両親からの質問には誠意を持って答えること。結婚した後どうありたいのか。グラッド君をどう支えていくのか、具体的に考えているといいかな。」

「あ、ありがとう。グラッドにどんなこと聞いたの?」

「ん?内緒だよ。私達から聞くんじゃなくてグラッド君と話しなさい。将来計画はちゃんと擦り合わせておきなさい。いいわね?」

「うん。わ、わかった」

「理央も結婚かぁ。早いなぁ、孫の顔をみるのもすぐだなこれ。」

孫という単語を聞いた瞬間、父さんと兄貴が泣き出した。

「うわぁ」

千加が二度目の声をあげる。これには流石のミランダも「大丈夫でしょうか」と困惑していた。

「まだ先だよ。結婚ももう少し先だし、子どもはその後だし。ちゃんとできるかもわかんないのに」

「そうね。そればかりはね。」

「母さん、あの。結婚の挨拶の時のプレゼンって何を話したの?」

「結婚して子供が産まれても名前で呼び合います、とか。お養母さんとの同居も考えて家の設計をしますとか。流石に家に関してはお養母さんに却下もらったけど。あとは料理を教えて下さいとか、聡史さんが間違ったことをしたら私が全力で止めます叱りますとか今までお養母さんが担ってたことを任せてほしいと言ったら逆に怒られた。」

なんという内容だと思ったら、ばぁちゃんもそう思ったらしい。

「要さんは要さんとして聡史を支えなさい。母親の特権を奪うなってさ。子供を心配するのは親の特権だって、貴女は妻になるのであって聡史の母親になるわけではないって叱られたなぁ」

懐かしそうに笑う母さんに

「だいぶやらかしたね。というかそれを私に勧める?」

正直な気持ちを伝える。

「うんうん。かなりやらかしたよ。でも好きな気持ち大切に思う気持ちは伝わりますって言われたから嬉しかったし。」

「母さん。ありがとう」

「どういたしまして」


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