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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編19

千加が二人を紹介する。

「ユーリさんは十年前に転移して今は調合施設に併設された薬店で働いています。で、スバルは七年前に転移して、今は商店の下人として働いている。スバルは武闘派だよぉ、あと二人とも日本人です。」

「お二人は転移者支援に興味があると窺っています。そして先程の面談の様子を見て考えは変わりませんでしょうか?」

「はい。あの二人なら協力できそうだと思いました。」

スバルが口を開く。

「私も問題ありません。」

ユーリも頷く。

「住み込みでの仕事を想定しています。男女で階を分けますが、問題はありませんか?勿論男性の立ち入りを禁止する術式などの準備はいたします。」

「はい。お心遣いに感謝致します」

ユーリの言葉の後にスバルが挙手をして話す。

「リオ様が転移者支援を志すのは何故ですか?」

私への疑問だった。

「わたくしのことはチカからどの程度聞いていますか?」

「チカ様の主人で、グラッド様の婚約者だと。それだけです」

「わたくしは魔法省魔導局召喚課で働いています。そこで得た知識をサイス領の為に使いたいと、この事業を思いつきました。」

「召喚課、それで」

二人は合点がいったという表情をみせる。

「スバルさんのことは知っていますよ。オスカーが担当していた方で、カップの色は緑、今わたくしの使っているカップも緑でお揃いですね。空手、柔道、剣道、弓道、薙刀の経験があり騎士並みの腕前。乗馬が得意で新人騎士より上手だったと。あとは、」

「ちょっと待ってくれ、なんでそれを」

スバルは動揺したのか素のような口調になる。

「?転移者情報は過去から現在まで全て読みましたから」

「読んだって、覚えているのですか」

直ぐに持ち直し口調を元に戻す。うん、資料にあった通りの人だ。

「はい。サイス領を選んだ方は全員覚えています」

当然だ。これから関わっていく相手なのだから。

転移者の教育課程での出来事などが記された資料は担当者の個性が出まくっていた。オスカーは事細かに記載されていたが、

「リオ様。私の担当だったヒジリは大雑把で、端的な内容だったかと思います。あまりスバルのように残っているとは思えないのですが」

「資料はそうでしたが、ヒジリ先輩はユーリさんのことを覚えていました。わたくしがヒジリ先輩の担当した転移者の追加資料を作成して棚に収めています。色んな話が聞けました。まぁデリカシーは全くないのですけど」

そうでしょうね、ヒジリですものとユーリが初めて笑った。

「でも覚えてたのね。なんだろ、嬉しいな。」

「わたくしからも尋ねたいのですが、どうしてこの話にのっていただけたのでしょうか」

「私は召喚課で過ごした日々が糧になっているからかな。あとコランダムから王都までとても不安だったから、保護された土地ですぐに言葉が通じる人と話せるって安心すると思うから」

「俺は新しい職場を探してたらチカ様から声かけられて。大層な志はありませんが」

「構いません。転移者に寄り添いたい、手助けしたいという気持ちがあれば問題ありません。転移者として気をつけること、気をつけた方がいいことを教えてほしいのです。わたくし達では気付けないので、頼りにしています」

その後も幾つか質問を繰り返し、面談は終了した。

三人を送ってきますと千加が出て行く。

「人を選ぶって難しいです。」

閉まった扉を見ながら呟く。

「はい。」

質問書を手に会議室を後にする。部屋に戻り四人との面談を反芻する。

話を聞くだけだったが、アイゼンとウィルに問題はなさそうだった。評価書類と照らし合わせても彼等は自身を客観視できている。

アイゼンはやはり商業関係の知識が豊富だった。本人は数字が好きで仕方ないようだし、それが伝わってきた。

ウィルは研究よりそれを伝えることを大事にしている。体調を崩して駄目だったけど、農村での技術指導に情熱を持っていた。

「リオ様。お茶でございます」

「ありがとうございます」

お茶を飲みながら、はぁと息を吐く。

転移者の二人、特にユーリは選ぶことを前提に見ていたけど、本当に選んでいいのか繰り返し自問する。

ユーリの言葉は私もそうだと思う。

ミランダやグラッドがいたから、余裕はなくてもやってこれたんだと知ってる。

スバルは人の為に動けると思った。

商店の下人は下働きのことで、本人は主体性がないだけだと言っていたが、仕事内容を聞くと重宝されていたことがわかる。

「うん。決めた」

ミランダを呼ぶ。

「あの四人を雇います。手続きはどのようにしたらいいですか?」

「手続きは管理室への連絡を入れるとあちらで処理します。契約開始日と仕事内容、給与、勤務地と勤務体制などの書類を送付しなくてはいけません」

人員確保の先にクリアしなくてはいけないことが山程ある。

「まだまだ不足ばかりで困りました」

頑張るぞと気合をいれて、給与、仕事内容など必要書類の準備に取り掛かる。

「お給料はどうしよう。給料のことなんて考えたことなかった。ミランダ達専属の給料ってどこからでてるのですか?」

「侍女の給料は屋敷の運営費から出ています。専属への上乗せ分はリオ様の予算から。リオ様の予算は今のところ、国が捕縛者から罰金として集めた金額と補償金がございます。」

「把握してませんでした。申し訳ありません」

広い視野で物事をみないといけないのに、全然出来ていない。仕事の構成を知らなさすぎる。

「リオ様。落ち着いて下さい。初めてのことは誰しも知らないことばかりです。その為の教育期間です」

「うん。ありがとうございます、ミランダ」

給与に関しては文官の基本給に専属と同じく上乗せ分を合計した金額を記入する。

事業計画書の前半部分、人材確保と育成についてをまとめミレニア宛の報告書を作成する。後半は準備が整ってからにしようと決めた。

千加が持ってきた不動産の資料を取り出す。三階建ての物件が複数用意されている。千加の字で注釈も書かれている。

「日当たり良好、方角○、人間関係良好。日当たりまぁまぁ、方角◎、仕事運良好。日当たり普通、方角△、金運良好。他にもあるけど。うーん、これはどうしたらいいんだろう」

「面白いですね。こういう風に家をみたことはないので新鮮です」

ミランダが興味深げに読んでいる。

「人間関係が良好な方がいいなぁ」

衝突も対立も疎外も最終的に上手く和解できるならそれに越したことはない。そういう物件ならそれを選びたい。

その他に施設への移動距離なども確認しながら物件を選ぶ。

書類の準備をしていると千加が戻ってきた。

「戻りましたぁ、ん?不動産どうです?いい物件でしょ?」

「チカの注釈にミランダが興味津々です」

「ミランダ先輩は意外と占い的なの好きですよね」

占い的なの……占いじゃないんだ。でもそうか、大奥様の属性診断も占い的なのに入るのか。

「占いは信用していません」

「信用してなくても好きっすよね?」

「……面白くはあります」

ミランダが嫌そうな顔で認めた。

「ある程度の戦闘傾向がわかるので」

ミランダの理由に納得していたら、千加が相槌を打つ。

「うんうん、確かに。じゃあ金属性加護はやり辛くないですか?」

「戦闘勘を鍛えるにはうってつけの相手です」

どういうことだろう。何故か二人の間では通じている。

千加曰く心の中に金属の箱があってそこに感情がほぼ収まっているそう。レベルによってその箱の大きさが違うみたいだ。それで予備動作がなく行動する人が多い。

「へぇ。」

「闇属性はあんまりそこには関心ないんだよね。統計数とかの方が気になるでしょ?」

「まぁそうです」

どうしてそうなったのほうが気になる。

「中々奥の深い学問なんだよ?加護属性診断。研究してる人は少ないけど」

因みに占い好きなのは水属性だそう。

女神側からの加護を受けているとその特徴が出やすいらしい。ますますよくわからなくなった。


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