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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編15

ミレニアとの勉強会で一通の封筒を渡された。

「依頼状です。今日はこれから管理室へ行って人員確保のための手順を勉強しましょう。どうぞ中身を確認して」

「はい。」

依頼状にはどういった人員を希望しているのか、何名なのかと必要情報が書かれている。

「確認しました」

「では参りましょう」

「ミレニア様もですか?具合は大丈夫なのですか?」

「大丈夫よ。さあ行きましょう」

ミレニアと文官管理室へ向かう。

「お待ちしていました。ミレニア様、リオ様。」

管理室で待っていたのは年配の男性文官だった。

灰白色の短髪を後ろに撫でつけ、眼光鋭く神経質にみえる容姿をしている。どことなく蛇みたいで愛着が湧く。

「ジルバ、今日は宜しくお願いします」

「はじめまして。宜しくお願いします」

「リオ様、私はジルバ・ロットです。ではこちらへ。ミレニア様はそちらで掛けてお待ち下さい」

ロット、初代様の子どもの家系だ。確かスレート子爵の下についた家だったか。

ジルバはミレニアに準備した椅子をすすめる。

「ふふふ、ありがとう」

執務机は綺麗に片付けられていて筆記具くらいしかない。

「ではリオ様。依頼状をいただけますか?」

「はい。」

「通常依頼状は侍従を通して渡すものですが、本日は流れを確認するためお持ちいただきました。」

依頼状を開き中身を確認する。ジルバは淡々と机の引き出しから書類を出す。

「私共は依頼状を確認して内容に沿った情報を提示します。こちらを確認してください。これは現在部署異動を申請している方達です。」

六名の文官の資料だった。

神殿で働く文官が三人、商業ギルド、騎士団、農務部で働く文官が一人ずつ。

各人の経歴と評価が書かれている。

異動申請理由は希望部署がある人が三人、二人は体調不良、一人は希望部署はないが他部署を経験したいから。

男性四名、女性二名。

「ではこちらの三名と面談を希望します」

ジルバに面談したい三名の書類を渡す。

「ふむ。かしこまりました。この三名との面談を手配致します。お時間は明日で宜しいでしょうか?」

「はい。お願いします。あと、一人同席者がいるのですが、構いませんか?」

「構いません。因みにどなたでしょうか」

「専属情報官を」

「ああ。チカ様ですね。ではそのように。時間が確定しましたらご連絡致します。場所は会議室を押さえておきます。ところでリオ様。」

「はい、何でしょうか?」

「何故この者達を選ばれたのか、お聞きしても?」

ジルバはチラリと私を見る。その目は試験官のような私を見極めようとする目だった。

「はい。異動申請の理由を注視しました。希望部署がある三人では駄目なので、こちらの三人を選びました。」

「次期伯爵夫人の事業に初期から携わる利点を重視するかもしれませんよ?」

「そうかもしれませんが。失敗する気もありませんけど、もし彼等が何か躓くことがあれば選ばなかった道が輝きを増すので、その分ちょっとこちらの方達より不満度が高くなる。それで遠慮したいです。」

「かしこまりました。では連絡をお待ち下さい。」

お眼鏡に適ったのかはわからなかった。

「ありがとうございました。此方の書類の写しを部屋に持ち帰ることは可能ですか?」

「はい。元々此方が写しですので、そのままお持ち下さい。紛失した場合は罰金をいただきますのでご注意を」

私が渡した書類をバインダーのようなもので挟み、返す。

「ありがとうございました」

「人員採用後返却してください」

書類を受け取る。

「ジルバ、ありがとうございます。リオさんいきましょう」

「ミレニア様、ご自愛ください」

「あら、医務部の巡回室室長が止めにくるまで不摂生する人に言われてもね」

医務部は医官の部署だ。

その中の巡回室は街で働く文官や騎士達の健康を守るため日々各部署を巡回している。そして休養が必要な人や上司に改善するよう指令を出すことができる。

「ミレニア様。最近はそこまで不摂生はしておりません」

ジルバは涼しい顔でそう宣う。

「そう?室長が怒ってたわよ?」

「あれは大体いつも怒っているので気にしないで良いかと」

「もう、貴方達は。気をつけるわ、ではね」

管理室を出る。

「どうしたの?リオさん。珍しく表情が表に出ているわ」

「ジルバさんは不摂生をするようには見えなかったので、動揺しています」

意外すぎて驚いた。

規則正しくきっちりと生活していそうな雰囲気が漂っていた。体型も細身で私の中の不摂生の印象に当てはまらなかった。

「そうね、わたくしも最初は驚いたわ。でも今は室長の気を引きたいだけじゃないかと本気で疑っているの」

へ?

「巡回室室長のヴァネッサとは、ことある事に休め休まないの応酬で、結局ジルバは休むのだけど、何というか彼女とのやり取りを楽しんでいる気がするの。」

見た目との落差に驚きを隠せない。

ミレニアの部屋に戻り、書類の再確認をする。

「次からは先に依頼状を提出してください。管理室から書類の準備が整ったら連絡があります。それでこの三人はどんな方達かしら」

「農務部休職中のウィルさんと商業ギルド交渉係のアイゼンさん、騎士団事務のケイトさん。皆さん、評価経歴をみても優秀な方達です。」

私が三人の名前を読み上げるとミレニアが頬に手を当てた。

「ケイト・ディルンね。彼女は新人研修時の評価が最優秀で総務部、税務部、経理部、騎士団で取り合いになったの。結果騎士団事務として働いているのだけど、仕事に対して向上心もあって新しい仕事にもどんどん挑戦していくのだけど体力の限界を超えてしまったの。医務部から休養指示と業務改善指示がでたにも関わらず他の職員の仕事に無断で手をつけてしまった。今回の申請は上司から他の部署を回って自身の働き方を見直せと言われ出したと聞いているわ」

「仕事中毒ですか。気をつけないといけませんね、身につまされます」

「ふふ大丈夫よ。その為の侍女や侍従なのだから。彼女の場合家を出て騎士団宿舎で生活していたようね。目がいき届かなかったと彼女の母親が話していたわ」

「新人研修って今グラッドが騎士団や文官の研修をしているのと同じものですか?」

「大体は同じよ。ただグラッドは両方の研修を受けるから研修密度は他の方達と違っているけど。」

グラッドの詳しい研修内容を知らない私はミレニアの言葉に冷や汗をかく。

「騎士も文官もって忙しいですよね。休暇をあわせるのって大変なんじゃ」

「リオさんは気にしなくていいのよ?グラッドはそれも込みで良い経験に感じてるから。本人は絶対言わないと思うけど柔軟性が課題だって思ってるの。想定外への対応、わたくしからみたら出来ているのだけどまだまだ改善の余地があると思ってる。リオさんはグラッドが無理をしないように見ててあげて」

「はい。」

あれかな。私や千加、ユル様が想定外すぎて戸惑わせるから?……絶対私のせいだな、これ。



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