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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編14

一通り揶揄い落ち着いたユル様が私の膝にのり話をし始めた。この世界に来てからの話だ。

それを無視して千加はミランダとグラッドに今後の予定を話す。

「グラッド様のご実家に行く前日の夕方頃に通信を予定しています。グラッド様もご一緒されますか?」

「私は遠慮します。流石に気まずいでしょうから」

「まぁ、そうっすね。すみません一応きいてみました」

千加の話を聞いているとユル様に怒られた。

「リオ様はユル様の話を聞いていて下さい。私が聞いていますので」

ミランダが囁く。

「それでの、妾はクロムの街の猫どもの頂点にたったのじゃ。それからはの、街を散歩しておると貢ぎ物を持って奴等が現れるのじゃ。」

「異世界の猫は強かったですか?」

「まぁまぁじゃの!じゃが、楽しめたのじゃ。其方が王都に行ってからは千加への力の配分を最低限にして遊びに出掛けたのじゃ。外の世界は広くてのぉ。楽しいものがたくさんあったのじゃ。」

「何が楽しかったのですか?」

「ふふふ!妾はついに男の愉しみも女の愉しみも両方経験したのじゃ。まっこと、愉しい時間じゃった。」

「男と女、両方の?」

「男女の夜の営みじゃ!以前の愛し子は男しかおらんかったからな。ミゲルめが眷属なら相手してくれる者もいるのではないかと言うから試しに会いにいったら快く妾に女の愉しみを教えてくれてなぁ」

無邪気に話すユル様に内容が一瞬入ってこなかった。が、

「それはようございました」

ユル様が満足したのならよかったのだろう。

「理央も愉しかったぇ?」

「楽しかったですよ」

なんて事言わすんだろう、もう恥ずかしい。

「照れた顔もよいのぉ。よし妾がよいことを教えてやろうぞ」

「何でしょうか」

嫌な予感がする。

「男を悦ばす技術じゃ!まず、腰の使い方じゃが」

ユル様の口を手で押さえる。

「むが」

つい反射で手を出してしまった。慌てて手を退ける。

「失礼いたしました。ユル様。私は自分で技術を磨く人間ですのでご教授は遠慮致します」

「むぅ、仕方あるまい」

ユル様が諦めてくれた。

ほっと一息つくと全員の視線に、はっと我に返る。恥ずかしさで体温が上がる。グラッドも赤面していた。

「ひゅー大胆宣言。ユル様、まず私に教えて下さいよ。聞いてませんけど」

「其方は妾の言うことをきいた試しがないではないか。その点理央は真面目だから妾の話を聞いて試してみるよい女じゃ」

「はいはい。じゃあ、この話はこの辺で」

「そういうところじゃ、全く」

「えーっと話は以上です。グラッド様、ミランダ先輩、何か質問はありますか?」

ユル様の話を聞いている間に千加からの話は終了した。

会議室を出て部屋に戻る。

さっきのユル様との話を聞かれてからは少し気まずい。部屋まで送ってくれたグラッドの頬もまだ若干赤い。

「それではお休みなさい」

額に軽くキスをおとし、グラッドは自分の部屋に戻っていった。

「リオ様。先程の話をお伝えしてもよろしいでしょうか。」

テーブルに用紙を準備して、聞き取り体制をとる。

「お願いします。」

ミランダから早速千加の話の内容を聞く。

グラッドの実家へ行く前日の夕方頃に家族と会うこと。

クラリスの件は基本的にフレッド達が対応する。が、万が一の場合は千加が介入すること。

「万が一、ですか?」

「光属性の加護障害について言及された際に、狂信として証言するようです。神に導かれたと」

「そっか、一般的に知られていない加護障害を持ち出してくるのは神殿側である可能性が高いから、そこを狂信の言葉で納得してもらうってこと、か。せざるを得ないか。」

「そういうことです」

「他は?」

今回解消された加護障害の範囲は曜日と月の認識に影響があるが、明日、明後日、何日、いつなどの時間表現は元々影響がなかったこと、細かい範囲の報告とその解消について。

「属性神の特性分類的に違いがでるのだろうとの予想です。闇の神は曜日や暦を司るとも言われていますから、あと時間は領域神の分類だそうです。」

因みに季節は大陸神の分類だ。

「少し怖いですね、他にもあるんじゃないかって戸惑っています。でもなんで性的な交わりで解消されるんだろう」

「チカ曰く加護障害は神に近くて人から遠い存在だけれど、人と交わることで神から人に近づくからと。人に堕とすと言っていました。」

「でも私向こうでは曜日感覚ありましたよ?」

「程度が違うそうです。単独と複合加護障害で違いがでているのだろうとのことでした。チカは向こうでは特に性別の境界が曖昧だったそうです」

単独と複合加護障害。千加は狂信、水と金の加護属性を持つから私より顕著にでた?単独加護のほうが珍しいみたいだけど。どういうことだろう。

「ん?じゃあ、このまま続けたら不運体質もなくなるってことですか?」

「加護障害の中にもレベルがあるらしく。解消する限度があるようです。ユル様からの情報で、単独の加護障害は闇が一番レベルが高く、次いで火、水、風、金、土、光の順。光属性持ちならば、加護自体を無くせる可能性があるそうです。ただ、大体成人までにこの世界から追い出されるそうで確認された事例はありません。」

「やっぱり一番強いんだ。そんな気はしてましたけど」

「リオ様の加護障害で解消できるのは、暦や曜日の認識くらいで、あとは出産後に何かが変わるかもしれないという不確かな可能性でした」

「そっか。でもまぁ、曜日認識は重要ですから助かりました。あのままだったら事業自体が頓挫しかねないですから」

「それから人員の採用に関してはチカも立ち会いたいそうです。リオ様の意見は尊重しますが、念のためと。それで話は以上です」

「ありがとうございます、ミランダ。今日はもう休んでください」

「はい。それでは失礼いたします」

ミランダが部屋を出ると椅子にもたれかかり、はぁっと大きなため息をついた。情報で頭がいっぱいだ。

整理するために何度も反芻する。

情報過多の飽和状態から落ち着きを取り戻した頃。

椅子から立ち上がり、

「ユル様、情報をいただきありがとうございます。」

虚空に向かって丁寧に御礼をする。

「曜日の認識が正常に機能するようになり、より一層目標に向かって邁進できますことを嬉しく思います。」

「ふむ。理央はわかっておるのぉ。良い子じゃ。」

ユル様が、姿を見せた。宙に浮いている。

「霊感のれの字もないのが惜しいのぉ」

「過分な評価恐れ入ります」

「理央を泣かせることはせぬぞ?闇の神に怒られるのでな」

「ユル様。お気持ちだけで嬉しく思います」

「そうか、欲がないのも其方の美徳か。致し方ないのぉ」

ユル様は私の頭をぽんぽんと軽く叩くと、

「口が無理なら其方の豊満な胸で扱いてみてはどうかのぉ?」

いきなり爆弾を落としてきた。

「か、考えておきます」

「うむ。健闘を祈るぞ」

ユル様は恐らくサムズアップをして、消えた。

人形の指だと何をしてもそうみえるからよくわからないが、間違いない気がする。


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