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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編13

濃密な一日半を過ごした。

以前ミランダが言っていた自制心云々のくだりもやっと理解した。我慢できるものじゃない。

本当にあの時のグラッドは頑張ったと思う。私なら即、手を出してたと気づいた。

肌合わせの部屋に面白い、台所の横に廊下から食事の受け渡しができて保温もできる設備があった。

肌合わせの間は部屋の外に出ないで過ごすため必要なのはわかるけど思わず

「監禁部屋かな?」

と言ったらグラッドも

「そんな使われ方は記録になかったはずですけど、確かに」

納得していた。

互いの苦手な体位や好きな体位を確認して、ひたすら楽しんだ。私の苦手はグラッドの提案で恥ずかしさは上がったが、克服したし、グラッドの苦手はギリギリの妥協点を探って解決した。

肌合わせを終え部屋に戻ると千加が扉の前で待っていた。

「おはよう。早いね」

部屋に招く。

「本当はもう少し後で顔をみせる予定だったんですけど、先に話しておこうかと思いまして」

「肌合わせの後に話すっていってたことかな?」

「あ、あれはグラッド様とミランダ先輩が揃ってから話したいので時間調整して話す場を整えてから話します。今日は姉貴に連絡をとるので要さん達にも声かけようかどうかを聞きにきました。」

「お願いしたいです」

「だと思った。グラッド様のご実家に行くんでしょ?相談したいかなって」

「ありがとう」

服を着替えている間に千加は私の予定をミランダから聞き取りさっさと情報収集へ出かけてしまった。

「あっさりとしてるなぁ、もっと揶揄われるかと思った」

「気を遣われたのでは?」

「そうかな。んー色々読みとって気恥ずかしくなったかな。」

「リオ様。少しよろしいでしょうか」

「?はい。何でしょうか」

ミランダが前から気になっていたのですがと前置きして、

「チカに心を読むことを禁じている割にご自身の心や感情はチカに読ませているのは何故でしょうか」

尤もな質問がきた。

「……ユル様の求めに応じてチカは人の心の中を覗いてきました。それが普通だったんです。今までしていたこと、自然に、当たり前にできたことを禁止する。それは決していい事だけではないんです。情緒不安定になってしまって、それから私の心や感情は好きなだけ読んでいいと禁止を緩めました。それからは今のチカになって少しずつ読む範囲が狭くなってきました」

「そうでしたか。失礼いたしました」

「いいんです。聞いてくれてありがとうございます」

「リオ様、本日は休息日ですが、いかが過ごされますか?」

肌合わせの後は必ず休息日を設ける。その時は興奮してて気づかない疲れなどが出てくるからだそう。

「ベッドでゴロゴロしながら読書しています」

「かしこまりました。控え室におりますので御用の際はお呼びください」

「はい。」

私はベッドに薬草図鑑を持ち込み、ナイトテーブルには紅茶と軽食を備える。

ひたすらゴロゴロして過ごした。途中お昼寝もして、いいのだろうかと思うほど何もしなかった。

夕食前に千加がもう一度現れた。

「あぁ、いい感じに落ち着いてるね」

私を見て呟く。これは独り言だな。

「リオ様、夕食後にお話しをしたいので、会議室までお越しください。グラッド様にも連絡済みです」

会議室。屋敷を案内してもらった時にその存在を知ったけど入ったことはなかった。

「わかりました。」

「それではじゃあまた後で」

千加と入れ違いでグラッドがやってきた。なんだか照れる。

エスコートされ食堂へ向かいながら正直な気持ちを口にすると私もですと共感された。

「夕食後の千加の話は何でしょうか。」

と零すとグラッドが少し驚いていた。予想がついているのだろうか?何故か尋ねてもはぐらかされる。

夕食時にクラリスについての連絡があった。

留学先からの連絡でやりたいことができたので帰国はしない。このまま移住するという内容だった。

寝耳に水の展開だ。

驚いてグラッドを見るも同じように初耳だったのかグラッドも私を見た。

顔を見合わせる私達をみてフレッドは

「驚いたかい?連絡がきたかと思えば実にクラリスらしい内容で私達も驚いているよ、全く」

笑う。

「こまめに連絡をしなさいと返事を書きたいが、そんな手紙を送ったら最後返信がなさそうで」

「可能性を否定できないですね、養父上」

グラッドもクラリスらしいですねと同意する。

「駄目だと言ったら、遠く離れているからさっさと出奔されても困るし、わかったとしか返信が出来ない。もう成人しているのだから構うなと言われればそれもそうだし、」

フレッドの自然な愚痴に瞬きを繰り返す。

「フレッド様、あまりそう言うものではありませんよ」

「そうかな。リオさんは不快だった?」

急にパスが出された。目が合ったフレッドは笑う。その表情には見覚えがあった。

「え。私ですか?いえ、そうは思いませんでした。クラリス様とはお茶会でしか交流がございませんでしたが、お話しが聞けて嬉しく思います」

色々企んでいる顔なのはわかったのでのっかる。

クラリスが帰ってこない方向に舵を切るようだ。

台本の中身を知らないので緊張感が増幅している。

それから本日の報告を聞いて夕食は終了した。

グラッドとミランダと一緒に会議室へ移動する。そこでは待機していた千加とユル様がいた。

「お久しぶりでございます、ユル様」

「おお、久しいのぉ。理央よ、妾の話を聞いておくれ」

「ユル様は後でお願いします。」

ユル様が私に近づくのを千加が力づくで止めた。人形の頭がぐしゃっと潰れる。

「妾の可愛い顔が潰れるではないか、千加よ!やめい」

「大人しくしてたら離します。」

「相わかった」

「すみません、騒々しくて。どうぞこちらへお掛けください」

私達は席に着き、千加の話を聞く。

「まず、集まっていただいたのは、加護障害の一つが解消されたかどうかの確認です。理央、『月火水木金土日』これは何かわかる?」

「曜日」

即答する。

「次に、この表の上部を覚えて。一、二、三」

千加からみせられたのはこの国の暦だった。たっぷり十秒数え暦を隠す。

「左から順に言って」

「光、火、水、風、土、金、闇」

私が答えると何故かグラッドとミランダが驚く。

「どういうことですか?」

「理央の加護障害の一つに暦の認識が出来ないというものがある。けどそれはこの世界の人と性的に交わることで解消されるもので、各加護障害にこれに似たものが存在する。理央が家に来た時同じ話したんだけど覚えてる?」

「ううん、覚えてない」

「今ならグラッド様の誕生日がいつかわかるでしょ?」

「あ、」

意識にもあがらなかった。グラッドだけじゃなく自分の誕生日も気づいてない。いつの間に十八歳になってるし、予定表にも曜日は書いてあるのに認識していなかった。

「私もこっち来てから気づいたんだよね。つか、ミゲルと付き合うまで気づかなかったし」

「千加はどんな加護障害があったの?」

「あらゆる境界線の欠如かな、あくまでも自己認識にしか過ぎないし本人以外は気づきにくい変化だと思う。私も直ぐには気づけなかったし」

「そう、吃驚しすぎて言葉がない」

「うん。だろうね。理央に誕生日おめでとうって言ったけど覚えてないと思う。加護障害の範囲の記憶はその場で対応しても残らないから。でももう大丈夫だよ、肌合わせ終わったし」

千加はサムズアップすると、笑顔で言う。

「これで来週の光の日に約束って言っても忘れられないぞ。」

その言葉に背筋を嫌な汗が流れる。

「ま、まさか、私、忘れてた?!」

「いや冗談です」

「千加!」

けらけら笑う千加に加えユル様が

「理央は可愛いのぉ。」

揶揄いはじめて収拾がつかなくなった。



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