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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編7

夜明け前、急に目が覚めた。

「ミランダ」

なんとなく名前を口にする。

カーテンを開けて、ベッドから降りる。側務めの控え室を覗くと、そこには

「リオ様?起こしてしまいましたか」

ミランダが居た。

「ううん。なんとなくです」

「まだ時間が早いのでお眠り下さい」

暗がりで細かい表情はわからないけど、ミランダの手を引く。なんとなくいつものミランダじゃないような気がする。

「ちょっと来て、ミランダ」

「?どうされました?」

部屋の奥に招き、ベッドに入るように指示する。

「リオ様、」

ミランダが断ろうとする前に、強引に魔力量で押し切る。

魔力で包みベッドに寝かせた。私もベッドで横になり、ミランダを抱きしめる。

「お疲れ様でした。ゆっくりしていってくださいね」

「リオ様」

微妙な表情のミランダに

「ん?寝不足だから仕方ないってことにしましょう。ね?」

口実をあげる。

「はい、リオ様」

諦めて頷くミランダが少し笑った。

疲れていたようでミランダはすぐに眠った。

どうして私の部屋にきたのかは聞かなかった。出掛けた先で何かあって、帰ってきて私の顔をみたくなったのなら嬉しい。

ミランダにくっついたまま私もあと一眠りした。

朝、私を起こしにきたイザベラがベッドで寝る私達をみて驚いた。

というかそれまでミランダが起きずに寝ていたことに私が吃驚した。

「申し訳ありません、リオ様」

イザベラに気づかないほど深く眠っていたことを反省するミランダに気にしないでと笑う。

「無理矢理ベッドに連れ込んだのは私なので」

「言い方がよくありません」

「ふふふ失礼しました。ミランダ、お帰りなさい」

「ただいま戻りました」

朝食を一緒にしながら、話を聞く。

やはりミランダの思った人物が、子供の母親だった。

ミランダ達の師匠亡き後、一部の形見以外の財産は全て彼女が引き継いだ。それ以降ミランダ達が彼女の元を訪れることもなく、一人で密かに子どもを産み育てていた。

ある日別に思いを寄せる相手ができたが、子どもを厭われた。その後また別の相手には子どもは預かっているだけだと伝え交際に発展したが、ミゲルの子どもだと分かると相手が逃げていった。その頃から子どもに辛く当たるようになっていった。

「子どもを産んだのが間違いだったと言っていました。そして、私達の薄情さを罵られた。認識の違いがありましたが、それは彼女には聞き入れられませんでした」

「認識の違いですか、」

「私達にとって彼女は師匠が定住を決めた土地で知り合った人物で、近所の人です。ですが、彼女は自身を師匠の恩人であると思っていました。師匠から彼女の話を聞いたことがありませんでしたので。」

ミランダは難しい顔をして続ける。

「ですが、当時師匠の筆跡で私達宛に手紙が残っていてその中に家や財産などは彼女へ移譲することが書かれていたのでミゲルもそれに同意しました。元々各地を旅して生きているようなミゲルと、私もこの頃には侍女として働き始めていたので、師匠の家や財産に意味を見出していませんでした。」

「彼女とは師匠さんが亡くなった時に初めて顔を合わせたということ?」

「はい。その年の冬は例年より寒く、普段病気をしない師匠でしたが風邪を拗らせてそのまま亡くなりました。その知らせを受けて訪れると葬儀の場を切り盛りする彼女の姿がありました。師匠の最期の様子聞き、手紙を受け取りました。落ち込む私達を優しく慰めてくれたので、未だに動揺が収まりません。」

感謝はしているが、これを機に親交を深めるというような話も出なかったので記憶の片隅に追いやられていたそう。

「金の無心をされたので、手切金を払いました。次は容赦しないと念を押しています」

「金の無心って、」

「もうよくわかりません。同様の対応をミゲルにもしているでしょうから、ただお金が欲しいだけだったのか。」

お金をきっかけに人が変わるというのはよく聞く話だ。

「人は驚くほど簡単に変わります。でも、悲しいですね」

急に別人になったとしか思えないようなこともある。

その人を形成していた価値観が変わったんだと思うようにしてきた。

あの思い出はなんだったんだろうって思うこともある。ただただ悲しい。

「そうですね。悲しい」

「あの時の彼女も嘘ではなかったと私は思います。ただ変わってしまっただけで。ミランダは今、思い出との差を埋めるだけの付き合いがないので心が追いついていない状態です。でも変わった彼女とは今後縁を切るとミランダが決めたのなら私はそれでいいと思うし、その気持ちを尊重します」

「リオ様は、年齢を詐称しているんじゃないですか?本当に驚きます」

「失礼な」

「リオ様。チカがきております」

イザベラから声をかけられた。

「はい。通して下さい」

千加?どうしたんだろう

「おはようございます、リオ様。色々報告にきましたよ」

いつもの男の子みたいな格好だ。取り敢えず席をすすめる。

「おはよう。色々報告って、定期的に報告書が届いてたけどあれではないんですか?」

「まぁそうですね。あれは当たり障りない報告書です。見られていい分です。朝食後に報告するんで、気にせず食べてください」

見られてもいいって春に届いた手紙はユル様のこととか結構書かれていたはずだけど。

「気になるよ」

速さに気をつけながら食べ終える。

イザベラが食器を片付けるため部屋を出たのを確認して千加は話し始める。

「まず、ユル様関係から先に報告します。」

ユル様の力が思いの外強く、再分配した話は報告書にあった。問題はその中身だった。

「今までユル様の力の影響で行使できたことは私の意志で出来るようになっています。心、過去、性格、感情、直近の出来事を読めます。えっと今ユル様との力のバランスは一割弱です。ミゲルが反応しないぎりぎりの割合にしてます。殆どユル様は出歩いてて家に帰ってこないです。一緒に行動しなくていいのは利点です。」

「そっか。良かった」

以前の負担が減ったのなら良かった。

「それとユル様が他の神様や眷属と交流して知ったことがあります。理央。私は以前此方と彼方を行き来させるって言った。けど、それが出来ないことが分かった。」

「……うん。」

緊張で手に汗をかく。

「神の庭を通ってここにきたし、帰れるかなと安易に思っていた。実際この世界で神の庭に行ける場所は見当ついてる。でも入り口が開かない、開けない。ユル様が仲良くなった属性神の眷属からきいた情報で、干渉出来ない領域だった。変に期待させてごめんなさい」

千加が謝罪する。腰を折り深く頭を下げる。

それじゃあ

「転移者も同様にってこと、だよね」

「転移者は運かな。私と理央、神の愛し子は無理。加護障害だっけ?それがある人は出て行けないようになってる。光以外は」

千加の言葉につい下を向いていた視線をあげる。

「え、転移者はもしかしたら帰れるの?」

「神の庭の入り口が開いてる時に居合わせたら帰れる。でも加護膜があるから向こうで衰弱して死んじゃうけど。しかも入り口が開いてる時ってユル様でもわからないんだよね。地球側の入り口は結構大雑把で神様未満でも自力で開いて入れる仕様になってるから、行き来できるって思っちゃった。」

「場所を教えてもらうことはできる?」

「理由を聞いてもいい?」

「帰りたいって言ってる転移者がいる。帰るための研究をしている転移者がいるの。その人達に教えたい。」

千加は首を横にふる。

「期待だけ与えて実現しなかったら恨まれるのは理央だよ」

「それでも知っている情報を開示しないのは、違うと思う」

「不確かな情報を開示されても困るだけじゃない?それにその人達も大体の場所の目星はついてるんじゃないかな?その情報は知ってる?」

「知らない。」

「そこは私が調べるから、理央。このことは私の許可なしに教えないこと。いいね?」

「わかった……」

「音、耳、派手、な人が原因か。攻撃的な人だし、相性は良くないな」

ミランダの眉間に皺が寄る。


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